入院中の病院の近くのコミュニティセンターらしきところで

 

 「1コイン=500円でヨガ」というチラシを見た。

 

 週1回午前10時半から1時間で手ぶらでOKとのこと。予約なし、飛び入りOKとあって、言ってみようと思った。

 

 一時帰宅や外泊がないときは、とにかく散歩の一点張りだったが、体を伸ばしたりこういう教室にいってみようと。これもひとつの進歩だと思う。

 

 行ってみると、主催者の先生(チラシにお顔があった美しい方)は、産休中ということで、代打の先生だったのだが、これが、いわゆるヨガの先生っぽい体型とはお世辞ともいえないぽっちゃりした方でなんだか、笑えた。そのヨガしている姿が癒し系なのだ。なんというか、パンダがヨガしている感じ。おっと。失礼。

 

 そして、この1コイン・ヨガの参加者が主年齢が50代から60代の女性ばかり。私は30代にして断トツ若い新入りになった。

 

 私は、ヨガにはチョコチョコと縁があり、第1子妊娠前にホットヨガ、妊娠中はマタニティヨガ、第1子出産後は子連れでヨガをしていた。

 

 いろんな先生やクラスに出会ったが、このクラス最高と思った。なんという脱力。

 

 ヨガのポーズが決まると、「1、2、3、4、5~」とみんなで体操みたいに発声するのだ。そんなヨガはじめてだ。

 

 この朝、10時半というのも絶妙で、閉鎖病棟が開錠される午前10時に出るとちょうどいい感じで会場に着く。

 

 (ちなみに、この頃は従来に外出許可範囲が決まっていて、私は、届け出さえだせば、午前7時~午後8時までいつでも外出可能になっていた)

 

 うつ病の一つの症状に「何のやる気もおきない」がある。

 

 謎のヨガに行こうと思ったのも進歩だし、そのヨガの終わりに近くの一軒家の老舗風のとんかつ屋さんがあって入った。

 

 これも進歩なのだ。

 

 「あれが食べたい!」でそして実際に行く、ということ。この「欲」というのはうつ病の寛解にむけたひとつのバロメーターでもあると思う。

 

 その日は、また退院3人組が午後に私を訪ねてきてくれた。

 

 前は用意できなかったお茶菓子を3人のために駅前で買ってきていた。

 

 楽しいひとときだった。

 

 その日の記録で面白いのが、双極性障害のDさんが言った言葉。

 

 「僕と2週連続で会っている藤田さんは、強運だよ」

 

 なんかちょっとおかしいのだけれど、Dさんは自分のしたくないことは基本しない、というスタンスだったので、訪ねてきてくれるから、彼なりの褒め言葉だったんだろう。

 

 こうやって4人で話すことが楽しい、という。

 

 この日は、いい日だった。

 

 他の入院患者さんから「いい顔しているね」って言ってもらった。

 

 これも、ありがとうノートに記録してあった。

 

 そして、夜。夫がFaceTimeをかけてきてくれた。

 

 上の子が出た。

 

 「お母さん、また明日ね。待ってるね」

 

 笑顔で答えたが、電話を切った後に涙がこぼれた。

 

 4Gの電話でのテレビ電話なので画質はよくない。でも向こう側の笑顔がくっきり見えた。

 

 ありがとう、夫。

 

 ありがとう、みんな。

 

 「不安なんていらないよ、大丈夫だから」

 

 その日の日記に最後に大きく書いた。

 

 次回、反動。