入院中でも、下の子の予防接種だけは、絶対に自分で行くんだと決めて、外出が外泊のスケジュールをあわせて行っていた。

 

 うつ病になって離れ離れになり、育児をしていない自分。

 

 「この子に私のせいで母子手帳に、空白をつくってはいけない」

 

 この子の大事な、成長の節目だけは、私の手で、そう思っていた。

 

 だから、健診も、そう思っていた。

 

 それが、できなかった。

 

 子育て経験者の方ではご存じのかたもいるかもしれないが、3~4か月健診は、自治体の保健センターなどで集団で行う。

 

 日程は限られていて指定の日に行く。大混雑で、結構待ち時間も長い。

 

 上の子の時には、授乳室で授乳したり、来たるべき離乳食の講座などあり、結構へとへとになって帰ってきた記憶があった。

 

 自治体から送られてきた日程は、私の外泊・一時帰宅と合わなかった。

 

 

 何よりも、大勢の親子連れの中で私が耐えられるのか自信がなかった。パニックを起こしたりしないか。

 

 

 長時間の待ち時間に耐えられるか。

  

 穏やかな母(父)たちの前で強烈な劣等感を抱き、気持ちが落ち込む可能性も高い。

 

 私は役所に電話して、事情をはなし「、3~4か月健診を地元の小児科で受けたい」 ということで手続きした。

 

 なぜ、3~4か月健診が自治体の保健センターなどで行われるかというと、上述の講座があることもあるが、

 

 「赤ちゃんの存在」を確認するためでもあるのだ。

 

 虐待がないか、母親の状態は大丈夫なのか。

 

 私は、その趣旨は理解した上で、地元で受けることにした。

 

 それが、だ。

  

 私がこれまで触れてきたように、外出さえ禁止になるくらい無気力で一度腰折れしてしまった。

  

 健診表の有効期限をぎりぎりすぎてしまったのだ。

 

 私は、娘がこの母子手帳をみたときにどう思うのだろうか。

 

 白紙の定期健診の欄。

 

 当時の私には、別にお金を払えば、定期健診をやってくれること、なんて頭になかった。

 

 そんな期限が切れた後の日の一時帰宅、下の子が少しせき込みがあるので、いつものかかりつけ医とは違う、地域のベテランの男性医師の医院に連れて行った。

 

 私を励ましてくれているかかりつけの女性医師は人柄はいいが、まだ開業まもないので、「診立て」が正直ベテラン先生よりもあまいことがあったので、このおじいちゃん先生のところへいった。(3-3発症のトリガーか?ノロできょうだい隔離事件の医師)

 

 「あ、これは、1週間かかるね。吸入できれば毎日きてくれる?」

 

 毎日、できるなら来たい。それがいいなら。でも、できない。

 

 私 「先生、あの、、前にも言ったかもしれないのですが、わたし、産後うつで精神病院にまだ入院しているんです。(ここでもう涙)いまは、一時帰宅が許されて、できる限り私の問診がない日をぬってきています。毎日来れないんです」

 

 私は、自分が入院なんぞしていなかったらと悔しくて泣けてきた。

 

 おじいちゃん先生 「じゃ、これる時でいいよ。泣くことじゃないよ」

 

 私 「すみません・・・それから先生、私、こんなんなので3、4か月健診にもいけなかったんです。健診表も期限切れちゃって。この子は大丈夫でしょうか」

 

 おじいちゃん先生 「じゃ、身長体重はかろう。やってあげる。もちろん、無料。薬の処方に必要だから、体重を量るんだよ。じゃ、おむつだけにして」

 

 私 「本当ですか?ありがとうございます」

 

 私は、母子手帳をもってきていた。診察家入れにいつも入っているから。

 

 ベテランの女性看護師さんが

 

 「お母さん、えらいねー。自分のことも大変だろうけど、ちゃんと赤ちゃんのこと考えていて」

 

 涙がこぼれてきた。 

 

 先生が、いろいろと見た後に、こう口を開いた。

 

 「うん、大丈夫だね。ちょっと気になるのがね、お母さん。ここ。頭が向かって右側が扁平になっているでしょう。これ、たぶん、こっち向いて寝る癖がついているからなんだよね。いまなら間に合うからタオルをにおいて、なるべく左向きになるように寝せてしばらくやってください」

 

 え?私は、早口の先生の言葉が全然頭に入ってこなかった。

 

 「頭の形がいびつ?今なら間に合う?ですか」

 

 「そう。こっち、頭の形、平たいでしょ。曲がってるでしょ」

 

 私は、血の気がひくような気がした。

 

 娘の頭のいびつさに気が付かなった自分。いや、ちょっと扁平かなと思ったけど、これは自然に是正されるものだと思っていた。

 

 それが、先生が「今なら間に合うから」と言った。

 

 私 「先生、私が気が付かなかったばかりにこんなことになってしまったんでしょうか」

 

 おじいちゃん先生 「うーん、これ、普通予防接種の時とかに気が付くと思うんだけどなぁ。普段どこ行ってんだっけ」

 

 淡々という。

 

 娘の頭の形がいびつだ→それをなんで早く気が付いてやれなかったんだ→私が入院なんかしているからだ→最低だ

 

 もうこのループが出来上がってしまった。

 

 帰宅して、義母にも話した。

 

 「私が入院なんてことになってしまってこんなことになって申し訳ない」

 

 私は、義母を責めているつもりは全くないのだけれど、義母はこれが自分に向けられたものだと解釈した。

 

 「あなたが気が付いていれば」と聞こえたようだ。

 

 わたしにはその気持ちは1ミリもない。

 

 ルイちゃんに申し訳ない気持ちでいっぱいだったのだ。ただ、気が付かなかったことに。

 

 自分に精いっぱいで。悔しくて。

 

 義母にむけた感情ではまったくないのに、ことば、は怖い。独り歩きするときがある。

 

 この一件で、義母のストレスはマックスに持って行かれたのだと思う。

 

 私には言わなかったが夫づてに後から伝言ゲームで伝わった。

 

 全部がつらかった。

 

 ただ、夫はそこでも冷静だった。

 

 「今から間に合うならいいじゃない。やろうよ、タオルを肩にあてて寝方の矯正。それから女の子でしょ?坊主にするわけでもないし、少しくらい構わないよ。もちろん、キミのせいでもない。ていうか、先生のところ、3週間前くらいにいったじゃん、風邪ひいて。その時に気が付いていないわけでしょ。予防接種で気が付かなかったの?って、先生も気が付かなかったの?だよ。気にしない、気にしない」

 

 夫にいつも救われる。

 

 次回、一歩進んだ、進んだんだよ。