●どうしよう、1か月で出られなかったら
すがすがしい気持ちでOTから帰ってきたら、Mさんが超どんよりしていた。
あちらから話しかけてきた。
「藤田さん、帰ってきたの。一緒にいて」
どうやら、不安が押し寄せてきて、部屋にいてもたってもいられない、ということらしい。
私 「ひどいようなら頓服をお願いしてもいいかもしれませんよ」
Mさん 「もう飲んだのよ。私。でも効かないの。胸がザワザワしてしかたないの。気が変になりそうなの。私、1か月で退院しないといけないの。いまこんなになってちゃいけないの」
私 「焦る気持ち、わかります」
Mさん 「ねぇ、どうしよう、1か月で出られなかったら。もううちは限界なのよ。お母さんに出てきてもらって、2人(小学生と幼稚園)の面倒みてもらっているけれど、手に負えないみたいで。私が帰らないと。早く外泊できるようにならないと」
うつ病あるある、だが、「早く●●しないと」この焦りが負のスパイラルへと導く。彼女の、早く家に戻らないと家族にこれ以上迷惑をかけられないと、言っている姿が自分に重なって仕方なかった。
●私にも子どもがいます
Mさんは、膝から崩れ落ちて泣き出した。
私も、膝をついて、彼女の傍らに座った。
私 「Mさん、このタイミングでお話ししておきます。実は、わたしにもふたり子どもがいます。なのでその気持ちものすごくわかります」
Mさん 「やっぱり、お子さんいるのね。そうだと思った。藤田さん、私が子どもの話をするときにお顔が優しくなったり、苦しい顔をするから。でも自分から言うまでは聞くまいと思っていて」
私 「だまっていてすみませんでした。Mさんはまだいいですよ。小学生と幼稚園のお子さんです。多少わがままを言ったとしても、自分で気分のことができますから笑 わたしなんて、2歳と0歳置いてきているんです」
こらえようとしたが、涙があふれてきた。
Mさん 「まだ赤ちゃん・・・それは辛いわよね・・・。よく言ってくれたよ、ありがとう」
私 「そうなんです、そんな小さい赤ちゃん残して、って言われるんじゃないかと思って、私、誰にも言い出せなかったんです」
Mさん 「Eさんにも言っちゃダメ?彼女も1歳のお子さんいるのよ」
私 「言いですよ。私からちゃんとお伝えします。でもまだしばらく他の方には内緒にしておいてくれますか?」
Mさん 「お子さんたちの面倒は?」
私 「義母と実母で見てくれています。だから、私も、家族にこれ以上迷惑をかけられないという焦りものすごくあるんです。でも、夫が理解あるひとで、何か月かかってもいいからしっかり治してこいって言ってくれているんで」
Mさん 「いい旦那さんね。うちは今でこそ理解あるけれど、最初は理解してもらえなくて。苦しかった。それで、飲めもしないアルコール飲んで、それで睡眠薬も飲んで。はっきりいってラリッているときに、それを上の子に見られちゃって。あの子は一生忘れないと思う」
台所で、酒を飲みながらおかしな言動を繰り返す母親を小学生の男のがじっとみている様子を想像してしまった。ものすごく胸が痛くなった。
私 「じゃ、焦らず治しましょう。それで元気な姿を見せましょう」
Mさん 「でも私1か月で出るって決めたの」
ここからは、Mさんの1か月で私出るの?出られるかな?の無限ループに付き合うことに。壊れたCDみたいに、繰り返している。
私の記録にはこうある。
「Mさんの体調がドン悪く、私も全部ひきとってしまうんのではないか、引きずられるのではないかと思った」
その通り、引きずられていくのだ。
次回は、「姉ちゃん、俺は見てるぞ」の回。