●つわりと一歳児育児と仕事の三重苦

 

 職場では、直属の上司には、早めに伝えないといけないと思って悩んでいた。なぜなら、任せてもらえる仕事が雪だるま式に増えていき(仕事の報酬は仕事)、いきなり、「数か月後にいなくなります」では迷惑をかけてしまうと思ったからだ。最終的に、安定期に入るよりももっと以前に報告した。

 上司には、「復帰して間もなく、しかもこの人手不足の中大変、心苦しい申し訳ない」

と頭を下げたが、返ってきた言葉にぐっと来た。

 

 「おめでとう。謝る必要はない。キミがいて十分助かっている。逆にこっちが感謝したいくらい。僕は男だから子どもを産めないからね、僕の分も産んで(笑)。体調が悪いときは俺がその分やるから。」

 

 そしてその表情は、社交辞令ではない本心に見えた。この人と仕事ができて私は幸せだ、と心から思った。

 

 つわりはひどかった。1人目と違うのが、とにかく眠い。あとは水回りのニオイが厳しく、気持ち悪くて駆け込んだトイレのニオイがまただめで吐く、ということもあった。

 

 そして、1人目と決定的に違うのが、手のかかる1歳児がいることだ。つわりの中、ごはんを作り、おむつを替える苦行。よく熱も出して保育園からのお迎えコールがあった。せき込みが激しかったので、病院に朝晩、気管拡張剤を吸入にいったり、夜は、ギャン泣きするのに付き合ったり。

 

 つわりは2か月くらい続いた。当時の記録には「つわりいつまで続くんだ。身体がだるい」「きょうは夫が出張で完全なワンオペ。つわりひどい。終わりがみえない」などと愚痴のオンパレードが並んでいる。

 

 ただ、つわりも妊娠も必ず終わりがあるのだが、渦中ではそういう俯瞰ができなくなる。

 

 子どもとの向き合いにも苦労があった。1歳児特有の「親が言っていることはわかるのに、自分の感情が表現できない」のせいで、用意した夕飯を器ごとはねのけられて、床に散らばったご飯に絶望することもしばしば。

 

 添い寝した後に起き上がれなくて、帰宅した夫に起こされ気まずい疲労困憊の空気が広がる中、部屋や台所の片付けをしたり。

疲労感は倍増ではあったが、それでも子どもは心から可愛く時は過ぎて行った。

 

●出産前から始まった「赤ちゃん返り」に不安を抱く

 腹に胎児を抱えながらの仕事に手のかかる1歳児の子育て。目が回るような毎日で、当時の記録にはつわりが明けた後も「めまいがする」というくだりが結構出てくる。

 

 「きょうもめまいがひどかった。夕飯時に、ムウちゃん(子どもの名前)大号泣。こちらもホトホト疲れて泣きそうになるがなんとか機嫌と取り留めてくれた。これに新生児か・・・」

 

 「イヤイヤが強まっている。ベビーカーに乗らないし、私以外イヤイヤの『パパイヤイヤ期』にも拍車」

 

 上の子は、お母さんのお腹の中には赤ちゃんがいるんだよ、と語りかけていたが、お腹が目立つころから、早い赤ちゃん返りとみられる症状が出てきた。

 

 私は、小児心理の専門ではないので推察でしかないのだが、いわゆる「パパイヤ期」に入っていた。おむつを交換するのも、ごはんを食べさせるのも、お風呂に入るのも一緒に寝るのも「お母さんじゃなきゃいやだ」スパーリングが続く。仕事帰り、夕飯が終わった後、横になりたいのだが、「ムウちゃんの隣でお座りするの!」

 

 ありがたいことに夫が早めに帰宅した日にお風呂に入れもらおうと思ったら「お母さんと入るの!お父さん嫌だ!」。

 

 ありがとう、キミの母への愛はうれしいよ、可愛いよ、でもちょっと手を抜いてくれ!と思っていた。

 

 上の子に起きた大きな異変はいつごろからだっただろうか、全く風呂に入ることを拒否したのである。

 

 シャワーの水がもろに耳に入った夜以降だろうか、それ以降、湯船につかることを号泣して拒否。元々神経質というかゴミが落ちていると小姑のようのご指摘いただくのが、湯船に浮かんでいる私の髪の毛を、異常に怖がり、湯船に浮かべるおもちゃも泣きながら怖がる始末だった。

 

 この異様なこだわりは何か、彼の心理状態に問題があるのか、もしくはこだわりや不安が強いことから「発達障害」なのだろうか・・・不安がよぎっては、大丈夫大丈夫、と打ち消していた。

 

 このちょっとした子どもの異変や、「人見知りないのね」のひとことがトリガーになり、強迫性障害から産後うつになったイラストレーターの藤田あみいさん(同じ藤田だ!笑)の「懺悔日記」の読むとその心理、うん、わかるわかるということがある。ちょっと内容が重いので、深刻な産後うつに陥っている最中のお母さんには酷かもしれませんが、ご紹介しておきます。

 

「懺悔日記」 藤田あみい(マガジンハウス社) Hanako ママwebで連載していたものだそうです。