女性が主人公の短篇集をご案内します。タイトルのとおり「奥さま」と呼ばれる人の日常を描いています。「奥さま」という立場であっても、わたしはわたし。そんな女性の叫びが詰まっています。
逆襲、にっぽんの明るい奥さま (小学館文庫)/小学館

2016年6月発行 単行本2008年12月発行
カバー画 南Q太

≪目次≫

お茶くみ奥さま
レジ打ち奥さま
長生き奥さま
安心奥さま
加味逍遙散奥さま
天城越え奥さま
にせもの奥さま
逆襲奥さま


単行本あとがき
改名奥さま あるいは文庫のためのあとがき
解説 杉山春

女性の一人称で語られる物語。モノローグです。特別に大きなことが起こる(たとえば犯罪に巻き込まれるとか、子どもが誘拐されるとか)わけではなく、日常の出来事のなかで、主人公が感じたことがそのまま文字として書きつづられています。それはまるで、わたしたち自身のことばを目にしているようで、ドキッとします。まったく同じ考えというわけでも、まったく同じ体験をしたわけでもないにも関わらず。

わたしたちが日々を暮らしていくなかで、感じたこと…特に結婚して「奥さま」となった女性が少なからず感じる違和感や憤りは、なかなか声として出すことはできない。友人たちとのおしゃべりのなかで出すことはあっても、感じたことのごく一部でしかない。
この小説の中では、そのすべてが文章として書いてある。そこに反応してしまうのです。

思ったことをすべて、口に出して言うというのは不可能ですよね。時間的にも、相手への配慮からしても、自分の品位を守る(!)という点でも。小説の中の奥さまたちも同様です。

けれども最後の「逆襲奥さま」はすべてを相手(義母)にぶちまけていて、これがかなり爽快です。オカルトチックな設定が効いています。

しかし、この作品群は、胃腸の状態がよろしくないときに摂取すると胸やけします。つまり、弱っているときではなく、憤りの行き場がないときとか、もやもやが止まらなくていやーっとか、エネルギーがあるときに読むのがおすすめです。

「改名奥さま あるいは文庫のためのあとがき」では、著者の夏石鈴子さんが離婚し、これからは鈴木マキコとして書いていくという経緯と決意が語られています。かなり赤裸々です。リアル「逆襲奥さま」!

すでに文芸冊子『きらら』(2016年4月号)に掲載されたという「おめでたい女」も近いうち書籍化されて読むことができるでしょうか。鈴木マキコさんのこれからに期待します。

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