フランスに住んでいたとき、母は数ヶ月に1回、30㎠ほどの段ボールにお菓子や調味料をパンパンに入れて仕送りをしてくれていた。
親に甘えていたのは十分承知だけど、フルタイムの仕事に就けなかった私には本当にありがたかった。2人分の生活費と私のお小遣い合わせて月500ユーロで生活はキツイよ…

ただ、届くまでがいつもドキドキなのである。
日本からEMSで小包を送ると、フランス国内ではChronopostという会社が自宅まで届けてくれる。ただ、この会社がとことん私を困らせてくれた。

不在票を入れてくれないのは日常茶飯事で、午前中に配達に向かうとメールがあっても午後2時すぎに来ることもあった。

配達日を変更してもらおうと思っても、電話が全然つながらない…。
仕事を始めてからはずっと家に居られず、ついには平日の夕方配達先に取りに行くことが多くなった。
その方が、確実に早く受け取れるから。

何が腹立つって、スタッフは全く悪びれる様子がないし、あー取りに来たのねというスタンスで皆んなで談笑しているのだ。ちくしょーばかにしあがって。
でも、さらに腹がたったのは、隣でスタッフを怒鳴りつけているフランス人のように文句を言えない自分のフランス語力の無さとビビリな性格だった。

小包を受け取ってからも大変だ。台車なしで片道30分くらいの距離を、7キロはある段ボールを手で持って運んでいく。

ある日、腕力が限界に達して自宅の最寄り駅で立ち尽くしてしまった。
汗だくでぜーぜー言ってる外国人を不憫に思ってくれたのか、70代くらいのおじいさんが声をかけてくれた。

「大丈夫?手伝おう。」と言って一緒に運び始めてくれたけどあまり進まない。荷物が重たくて、なんで声かけちゃったかなぁとおじいさんは後悔しているに違いないと思った。

十数歩行ったところで、2人で休憩していると、反対側からいかにもジムで鍛えているようなマッチョなお兄さんが向かってきた。

「大丈夫?あとは僕に任せて!」と言うと、突然段ボールを片手でひょいと持ち上げて「家はどこ?」と聞いてきた。

強面だし、背が高いし、マッチョだし、ジャージ姿だし、自宅教えて大丈夫かな…?と少し警戒したが、辛くて早く帰りたい気持ちでいっぱいだったので、「あそこの角を右に曲がったところ」と言うと、彼は早足で歩き始めた。取り残されたおじいさんにお礼を一言告げて、私も慌ててついて行った。

「これ、パンパースでしょ?娘がいるんだけど、妻がクオリティーがいいからよくAmazonで買うんだよね」という彼。

「え?パンパース?」ふとみたら大きな段ボールにでっかくpampersの文字。
大量のオムツを髪を乱して汗だくで運ぼうとしていると思われていたのか…?恥ずかしい。

さらに、アパートに着くと、彼は上まで運んであげると言って、エレベーターのないアパートの4階の玄関先まで行ってくれた。

荷物を置いて「じゃあ、これで。」と言うので、親切に慣れていない私は何故かお財布から10ユーロを取り出して「これ…ありがとうございました。」と差し出した。

すると、彼は大笑いして
「そんなのいらないよ。これで君が今日一日幸せにいてくれれば僕にとってこんなに嬉しいことはないよ。」

と言って、あっという間に階段を降りて去って行ってしまった。

部屋の鍵を閉めた途端、涙がポロポロ出てきてしばらく止まらなかった。
外国人だからって、ばかにしやがってこのフランス人ババア!ジジイ!とか思って毎日ギスギスしていた心にこの出来事。
日本のように至れり尽くせりの便利なサービスが恋しいなんて気持ちはどこえやら。

きっと彼に会うことは二度とないけど、ずっとこの事は覚えているだろうし、 私も彼のようにありたいと思わせてくれた。
ありがとう、お兄さん!