~おじさん達キャンプする~
「じゃ、行きますか」
ここは、数年前の郷土料理を食べさせてくれる店である。
私と万田さんは、酒を飲みながら若い頃の話となった。
万田さんは、若い頃バイクのレースを趣味としていたそうだ。
私もツーリングを趣味としていた時期があったが、その中で同僚に誘われて北海道に行ったことを思いだした。
「バイクで北海道を回ってみませんか」と誘われて、「うーん」と曖昧な返事をしたことで行くことになった。
仕方なく量販店でテントと寝袋を買い、あとは何とかなるだろと、いい加減な気持ちで参加した。実際食べ物はコンビニで買えばいいし、北海道と言えど夏だから何の心配も無いと思っていた。
行ってみるとなるほど真っ直ぐに伸びる道は想像以上に直線が伸びる道で、ウインカーいつ出すんだくらい真っ直ぐな道であった。
無料で使えるキャンプ場を巡り、そのツーリングキャンプは経験として終わった。
万田さんも若い頃にキャンプへ行ったことがあるとの話から、久しぶりに行ってみようとなった。
私は既に興味だけはあったので、基本的な装備は私がそろえることにした。
一度そろえてしまえば、その後行く度に食料とかを買うだけで済むと思ったからだ。
そしてその年の夏のある日、いよいよ私たちおじさんは2人だけのキャンプに出発した。
場所は、富士五湖の一つである本栖湖のとあるキャンプ場であった。
キャンプ当日私の家で待ち合わせをしてから、私の車に荷物を積み込んで少年のような気持ちで出発した。
高速道路から一般道に出て、途中河口湖近くのスーパーで食料を買った。
久しぶりのバーベキューに、あれこれ肉を買い込みビールと焼酎も少し、気分は湖畔で肉を食べながらビールを飲む自分の姿。
車に食材を積み込み出発。
本栖湖のキャンプ場に無事到着。
受付を済ませ、テント設営場所を決めるため少し歩き回り、私たちは湖に近い所にテントを張ることにした。
しかし、ここでちょっとした問題が、テントの張りかたが分からない。
家で説明書を出して見た後、その辺に置きっぱなしで忘れてきた。
さして大きくもない4.5人用のテント、苦もなく簡単に張れると想像していた。焦った。
私は余裕ある態度で何とかしようと頑張り、力任せにポールをテントの通し穴に入れたところ、何とかドーム部分ができた。後はカバーのようなものを掛けて出来た。
やばかった、本当は車の中で寝る覚悟をしていた。セーフ!
ここで既にヘトヘト。
それから気を取り直して、いよいよバーベキューの開始、まずは炭火の用意、炭を地べたに広げ考えた。
どうやって火をつけるのか、ライターでは火はつかない。
そこで木に火をつけてから炭だなと思っても、そう簡単に木にも火は付かない。
ならばと細い木の枝を集めて火をつけようとしたが、これも旨くい行かない。
そこで枯れ草を集めて小枝に火を移してみた。するとどうにか燃え始めた。
バーベキュータイム本番だ。
車から野菜や肉等食材を下ろして考えた。こんなに沢山食べれない。
調子良く食べたい肉を買い物カゴに入れた結果、かなりの量になってしまった。
おじさん2人には無理な量だ。ま、いっか。
そしてまずは、ビールで乾杯。
たまらない。満足感に浸るおじさん2人。今回のキャンプは成功だ。
今までの自分のミスを全て許してしまおう。
この最初の一杯はその後のキャンプでも思う一瞬である。
実は火を起こそうとして苦戦しているときに、近くでキャンプをしていた外国人の家族の奥さんが「何してるんですか」と話しかけてきた。
恥ずかしさを隠しながら「いえ、別に」等と言ってその場をやり過ごした。
きっと、火を起こせない我々を見て心配で声を掛けてくれたのだろう。素人丸出しである。
我々はなんとか肉や野菜を焼いて食べることが出来た。旨い。
穏やかな湖を眺めながら飲むビール、ここは別世界だな。
日常とかけ離れたこの時間、空間がなんとも心地よい。
しばらく飲んでいたら万田さんが「少し、休んでいいですか」とテントの中に入ってしまった。
そこで、仕方なく1人で湖を眺めながら飲んでいると先ほど声を掛けてくれた外国人の奥さんが「一緒に飲みませんか」と誘ってくれた。
驚いたがせっかくの誘いなのでお邪魔することにした。
外国人の国籍はトルコであった。
トルコの方は夫婦と子供の3人で来ていた。
夫婦は私にトルコの酒と肉料理をご馳走してくれた。以前都内でトルコ料理を食べたことがあったが、正直美味しいとは思わなかった。
しかし、この時の料理は驚くほど美味しかったことを覚えている。
奥さんは私にたばこと酒を勧めてくれいつの間にか日付が変わろうとしていた。
私はお礼を言って自分のテントに引き上げた。
気づくと寒い。夏なのにかなり寒い。
やはり標高が高いとこんなにも違うのかと震えた。
万田さんを見ると熟睡状態であった。
朝方目が覚めテントの外に出ると、万田さんが小枝を集めていた。
朝食の仕度をしなければ、この朝は比較的早く火を起こせたと思う、ただ何を食べたか忘れた。
今思うと無謀なキャンプだった。
ろくな装備品も無く気持ちだけでやってしまったようなもの。
帰りは日帰り温泉で体を温めて反省した。
今回初めてのキャンプで、おじさん達は学びました。
1 食材は食べ切れる量にすること
2 料理に使う火は、ガス等で準備すること
3 夏でも標高が高い所は寒い
4 キャンプに必要な物を揃えること
そこで後日私は、スポーツ店へ行きコンロ、鍋、食器類を買い込んだ。
最近、キャンプに使う道具をギアと呼ぶ人が増えている。
道具だろ
キャンプ場等で若い人が甲高い声で、このギアいいでしょうとか、ギア、ギア言っているのを聞くと少し、イラッとする。 まっ、いいけど
道具だろ
くどいですが、おじさんには道具です。
始めてのキャンプは課題多いものでしたが、私達おじさんは懲りる事なく、また行こうと励ましあいました。
つづく