子宮内膜症 Part6 | 産婦人科専門医・周産期専門医からのメッセージ

産婦人科専門医・周産期専門医からのメッセージ

 第一線で働く産婦人科専門医・周産期専門医(母体・胎児)からのメッセージというモチーフのもと、専門家の視点で、妊娠・出産・不妊症に関する話題や情報を提供しています。女性の健康管理・病気に関する話題も併せて提供していきます。

12、子宮内膜症の治療法は?
 子宮内膜症治療の目的は、疼痛に代表される症状の軽減・消失を目標に、病巣を除去・根絶することにあります。しかし、患者さんの年齢・挙児希望の有無・病変の重症度ならびに既往治療内容などを考慮して、治療の個別化を計ることが必要となってきます。そのため、患者さんの背景を理解した上で、保存的治療か根治手術かを選択することになります。

 一方で、子宮内膜症性の不妊症に対しては、妊孕性向上を目的とする治療法が優先されます。この場合には腹腔鏡検査による確定診断と妊孕能の検索が必須となります。


1)内科的治療
 本症の治療は、卵巣のエストロゲン産生を抑制して内膜の成長・増殖の刺激を減少させることにより行われます。これにより異所性内膜組織の成長は遅れ、ホルモン活性の減少により萎縮あるいは脱落膜化が起こります。

①ゴナドトロピン放出ホルモンアゴニスト(gonadotoropin releasing hormone agonist: GnRHa)
 血中のエストロゲンレベルを著しく減少させ、活動性病変の抑制と疼痛改善に極めて有効な治療法です。ただし、長期投与による骨量減少が問題となります。投与期間は6ヶ月以内に限られます。もし6ヶ月以上投与する場合にはエストロゲン・プロゲステロンによるadd-back療法が必要となります。

②プロゲスチン
 メドロキシプロゲステロンなどは内膜の萎縮を起こし、ゴナドトロピン阻害因子と働くため、子宮内膜症の治療に用いられます。Gn-RHaに比較して効果は緩徐ですが副作用も緩徐です。年単位の長期間にわたる投与も可能です。

③ダナゾール
 合成17α-エチニルテストステロン誘導体です。細胞質基質性ホルモン受容体とともに多くのステロイド産生酵素を抑制します。これによって高アンドロゲン・低エストロゲン環境となり、すべての内膜組織と内膜症の活性が減少します。有効性は高いのですが、肝機能障害などの副作用が他剤に比べて強いため、近年では使用頻度は低くなっています。

④経口避妊薬
 エストロゲン・プロゲステロンを含む経口避妊薬で排卵と月経周期をコントロールしてやることは症状軽減につながります。

⑤消炎鎮痛剤
 非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAID)は対症療法として使用されます。

⑥抗不安薬
 症例によってはアミトリプチリンなどの抗不安薬が症状軽減に有効です。


2)外科的治療

①根治手術
 根治手術としては子宮全摘・両側卵管卵巣切除・すべての腹膜表面の病巣や内膜症腫瘍の切除・癒着剥離が行われます。症例に応じて開腹手術ないし腹腔鏡手術が選択されます。

②保存的手術
 内膜症性病巣の切除・レーザーや電気凝固による病巣破壊・癒着剥離などが行われます。同様に症例に応じて開腹手術ないし腹腔鏡手術が選択されます。疼痛軽減を目的として仙骨前交感神経切断術や仙骨子宮神経切除などが行われることもあります。


13、子宮腺筋症の治療法は?
 子宮内膜症と同様の内科的治療が行われます。これにより症状は軽減されます。内科的治療が無効な場合や根治手術を希望される場合には子宮全摘が行われます。子宮腺筋症単独で子宮内膜症の合併がない場合には両側卵管卵巣切除は不要です。

 近年では、挙児希望があって子宮温存は希望されるが、内科的治療が無効である場合に、子宮腺筋症減量術が行われることもあります。

 同様に症例に応じて開腹手術ないし腹腔鏡手術が選択されます。


 今回の記事は産婦人科シークレットの内容を参考にして記載しておりますが、内容はオリジナルです。
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