7、子宮内膜症の病因は?
子宮内膜症は異所性に子宮内膜が発生し、その後に増殖・伸展する奇異な疾患であり、本症の発生原因については今もって結論が得られていません。しかし、子宮内膜移植説と体腔上皮化生説が有力と考えられています。
①子宮内膜移植説:
月経血の腹腔内逆流・リンパ行性転移・血行性転移あるいは手術操作に伴う医原性の散布などによる子宮内膜組織の他組織への移植が原因であるとする説です。
体内の独立した部位に存在すること、内膜細胞の移植能力、子宮あるいは腟の閉鎖により子宮内膜症が増加すること、腹腔から離れた場所にも存在しうることなどは、この理論を支持しています。
しかしながら、一部の女性においてのみ移植された内膜細胞が生着し、なぜすべての女性において子宮内膜症が発症しないのかという疑問は残ります。これについては細胞の免疫能の変化が示唆されています。
②体腔上皮化生説:
子宮外で子宮内膜組織が新生されるという説です。
卵巣胚上皮・Mueller管上皮・腹膜上皮などの発生起源は同一胚細胞であり、いずれも子宮内膜組織に分化する能力、すなわち化生能をもっていることが知られています。そして、こうした化生能は、個々のホルモン環境によって誘導されることも知られています。
初経後1ヶ月以内の子宮内膜症発生例やエストロゲン投与をうけた前立腺癌患者での子宮内膜症発生例など、この説を支持する臨床例もあります。
③癌抑制遺伝子の不活化:
子宮内膜症の増殖と進展は、エストロゲンやサイトカインによって促されることが知られていますが、近年の研究では癌抑制遺伝子の不活化が本症の増殖・進展に関与する可能性が示唆されています。
いずれにしても子宮内膜症の発生原因をいずれかの説によって一元的に説明することは症例によっては困難です。現時点では、月経血の逆流、ホルモンやサイトカイン、免疫応答能あるいは遺伝的素因が誘因となって、子宮内膜の移植ないし体腔上皮化生を介して子宮内膜症が発生すると解釈しておくのが妥当でしょう。
今回の記事は産婦人科シークレットの内容を参考にして記載しておりますが、内容はオリジナルです。
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