子宮筋腫 Part5 | 産婦人科専門医・周産期専門医からのメッセージ

産婦人科専門医・周産期専門医からのメッセージ

 第一線で働く産婦人科専門医・周産期専門医(母体・胎児)からのメッセージというモチーフのもと、専門家の視点で、妊娠・出産・不妊症に関する話題や情報を提供しています。女性の健康管理・病気に関する話題も併せて提供していきます。

8、子宮筋腫の治療法にはどのようなものがありますか?
 子宮筋腫は、子宮を摘出して初めて診断できるような小さなものから腹腔内全体に広がる大きなものまで、また無症状で経過するものからサイズとは関係なく症状を訴えるものまで様々です。したがって、治療をするのか経過観察でよいのかの判断も大切になります。

①経過観察:
 サイズがそれほど大きくなく無症状あるいは症状が軽い場合には経過観察が考慮されます。特に若年者や閉経前後の患者さんで考慮されます。ただし、若年者の場合には不妊症や習慣性流産の原因となる場合にはサイズや症状に関係なく治療が考慮されます。

②手術療法:
 挙児希望がある場合や子宮温存希望が強い場合には子宮筋腫核出術が選択されます。当然ですが子宮筋腫の再発・再燃の可能性があります。これに対して挙児希望あるいは子宮温存希望がない場合には子宮全摘術が選択されます。子宮全摘術は子宮筋腫に対する根治手術です。

 子宮筋腫核出術も子宮全摘術も開腹手術の他、腹腔鏡下に行われることもあります。粘膜下筋腫の核出術は子宮鏡下に行われることもあります。

③子宮動脈塞栓術:
 子宮動脈にカテーテルを挿入して動脈塞栓を行う血管内治療です。血液供給が遮断された筋腫は縮小・変性し、筋腫に伴う症状が改善するというものです。この治療法の短期的効果は明らかですが、長期的な有効性については現在もなお検証中であります。また、妊娠を目指す女性には勧められません。

④薬物療法:
 ゴナドトロピン放出ホルモンアゴニスト(gonadotropin-releasing hormone agonist; GnRHa)が用いられます。これはエストロゲンレベルを低下させて閉経状態を作ることにより筋腫を縮小させる治療法です。3~6ヶ月で最大の縮小効果が得られます。薬物療法は子宮筋腫核出術や子宮全摘術の前処置として行われることもあります。しかしGnRHaの効果は一時的であり、投与を中止すると閉経前であれば6ヶ月前後でまた元のサイズに戻ってしまいます。

 GnRHaによる低エストロゲン状態は若い女性の健康維持のためには望ましくないため、副作用軽減のため並行してエストロゲンとプロゲステロンの配合薬を投与するadd-back療法が行われることもあります。



 今回の記事は産婦人科シークレットの内容を参考にして記載しておりますが、内容はオリジナルです。
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