低侵襲手術と機能温存手術 part1 | 産婦人科専門医・周産期専門医からのメッセージ

産婦人科専門医・周産期専門医からのメッセージ

 第一線で働く産婦人科専門医・周産期専門医(母体・胎児)からのメッセージというモチーフのもと、専門家の視点で、妊娠・出産・不妊症に関する話題や情報を提供しています。女性の健康管理・病気に関する話題も併せて提供していきます。

 近年、医学・医療においては低侵襲手術という言葉がよく用いられています。

 低侵襲手術とは、内視鏡手術や血管内手術を代表とする従来よりも侵襲の少ない手術のことを指しています。近年の手術用器械の進歩はめざましく、従来よりはるかに安全かつ容易に手術が行えるようになってきました。さらには、コンピュータやロボット技術の目覚しい進歩により、コンピュータを手術中に活用するコンピュータ支援手術やロボット手術も登場してきています。

 とはいっても産婦人科では腹腔鏡手術が低侵襲手術の中心です。血管内手術は産科出血や子宮筋腫など適応はごくわずかですし、ロボット手術は保険適応もなく研究レベルで行われているだけです。コンピュータ支援手術はありません。

 私の勤務する病院での手術内容をみていると、外科・泌尿器科・整形外科・胸部外科・脳神経外科などの他の外科系診療科においては産婦人科以上に低侵襲手術が急速に普及しているのかもしれません。

 
 その一方で機能温存手術という言葉もあります。妊孕性温存・膀胱機能温存・直腸機能温存・神経機能温存などがあてはまります。産婦人科領域でいえば悪性腫瘍や子宮筋腫・子宮内膜症の手術においての妊孕性温存や悪性腫瘍の手術においての神経機能温存などがあてはまることでしょう。


 私は日常臨床において一番の専門とする周産期領域の手術のみならず、婦人科悪性腫瘍や生殖医学・不妊の手術も行っていますが、ここ数年来ですが婦人科悪性腫瘍や生殖医学・不妊の手術においては低侵襲手術と機能温存手術が必ずしも両立しないのではないかと感じています。つまり低侵襲手術が必ずしも機能温存手術にはならないのではないかということです。特に子宮内膜症におけるチョコレートのう胞の核出手術および子宮頸癌の根治手術でそのように感じています。

 具体例を紹介しつつ、その理由を明らかにしていきます。
 

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