愛用の産婦人科手術書 〜前編〜 | 産婦人科専門医・周産期専門医からのメッセージ

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 第一線で働く産婦人科専門医・周産期専門医(母体・胎児)からのメッセージというモチーフのもと、専門家の視点で、妊娠・出産・不妊症に関する話題や情報を提供しています。女性の健康管理・病気に関する話題も併せて提供していきます。

 手術の手技を学びその手技をマスターするためには、多くの手術を見学し多くの手術に助手として参加し、そして自ら数多くの手術を執刀することが必要になってきます。もちろんこれだけでもある程度は手術が上達することでしょう。しかし、見学・参加あるいは執刀した手術を振り返って勉強したり、手術の手技そのものの理論的裏付けを学ぶためには、やはり手術書があったほうがよいでしょう。ただし、手術書を読むだけでは決して手術が上達しないことも確かです。手術前や手術後には必ず手術書を紐解き、予習・復習を心がけることで、少ない症例数でも必ずや手術が上達できることでしょう。

 私が若かりし頃はなかなか優れた手術書に出会えなかったものですが、未だに愛用しているすばらしい手術書が2冊あります。

 1冊目は産婦人科医としてのスタートを切った時に上司から勧められた手術書が遠藤幸三先生の「実地婦人科手術 第3版」です。
実地婦人科手術/遠藤 幸三

¥26,505
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 この本は本当にすばらしいです。帝王切開や子宮全摘の手術を学ぶために繰り返し読んだものです。そしてある程度の経験を積んだあとは子宮癌・卵巣癌・外陰癌の手術手技を学ぶために改めて紐解いたものです。今でも事あるごとに振り返って目を通すことがある手術書です。ただし、私が研修医の頃から愛用している手術書であり、今風の腹腔鏡手術や機能温存した悪性腫瘍の手術などについては記載がありません。

 残念ながら著者が死亡しており第3版以降は改訂されないまま絶版になってしまいました。もし古本屋などで見かけることがあれば購入しておく価値があると思っています。

 そして2冊目が真柄正直先生の「産科手術」です。この本は私が研修医の時にすでに絶版になっていたため先輩から譲っていただきました。
産科手術〈手術編〉―最新産科学 (1973年)/真柄 正直

¥7,350
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 この本も本当にすばらしいです。分娩時の会陰切開・縫合から始まり、吸引分娩・鉗子分娩・骨盤位分娩など各種産科手術の手技が詳しく図入りで記載されています。特に鉗子分娩・骨盤位分娩については未だにこの本に勝る手術書はないと言っても過言ではないでしょう。私が身につけた鉗子分娩・骨盤位分娩の手術手技はこの本からすべてを学び取ったとも言えます。さらに今では古典的で目にすることもほとんどなくなった穿頭術・切胎術など本当にいざという場面でしか使用しない手術手技についても詳しく解説されています。

 同様に、残念ながら著者が死亡しており改訂されないまま絶版になってしまいました。もし古本屋などで見かけることがあれば購入しておく価値があると思っています。


 優れた先輩方に手ほどきを受けて手術手技を学び、マスターしてきたわけですが、この2冊のおかげで今の私があるといっても過言ではないほどこの2冊の手術書にはお世話になりました。


 しかし、最近になって上記の2冊に匹敵する優れた手術書が登場しました。少なくとも婦人科手術に関しては遠藤幸三先生の「実地婦人科手術 第3版」よりも上かもしれません。ただし、産科手術に関しては今では廃れ行くだけの手術手技もあるため真柄正直先生の「産科手術」を越える本には出会えていないのが実情です。

 次回に最近登場した優れた手術書を紹介してみます。


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