妊娠中期~末期の妊婦健診での診察と検査〜後編〜 | 産婦人科専門医・周産期専門医からのメッセージ

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 第一線で働く産婦人科専門医・周産期専門医(母体・胎児)からのメッセージというモチーフのもと、専門家の視点で、妊娠・出産・不妊症に関する話題や情報を提供しています。女性の健康管理・病気に関する話題も併せて提供していきます。

妊娠中期以降の血液検査
血算(WBC・RBC・Hb・Ht・血小板)
血糖(随時血糖法)
生化学検査(GOT・GPT・LDH・γ GTP・T-CHO・TG・TP・BUN・クレアチニン・電解質)
凝固系(PT・APTT(LA)・ATⅢなど)

 妊娠28週頃に血小板を含む血算を行い、貧血の有無をチェックします。リスクのある妊婦さんの場合には生化学検査・凝固系の検査も行います。

超音波検査
A.妊娠中期スクリーニング
 妊娠20週前後の時期に胎児奇形・解剖学的異常の検出を目的とした胎児の全身スクリーニングを行うことが推奨されます。

B.妊娠末期(28週以降)スクリーニング
1)胎児発育
 BPD・FTA(APTDとTTD)・FLを測定し児の推定体重を算出して、胎児発育の評価を行います。阪大式・東大式などの計算式がよく用いられます。

2)胎児異常,奇形のチェック
 妊娠30週前後の時期にも胎児奇形・解剖学的異常の検出を目的とした胎児の全身スクリーニングを再度行うことが推奨されます。

3)羊水量
 AFI(amniotic fluid index)・羊水ポケットなどを測定して羊水量の推定・評価を行います。

 羊水過多は児の消化管閉塞・中枢神経系の異常を反映している可能性があります。

 羊水過少は児の腎臓・尿路系の異常を反映している可能性があります。また胎児のwell-beingに支障をきたしている可能性があります。

 羊水量はBPS(biophysical profile score)の1指標にもなっているように、児の状態を評価するのに極めて重要な因子となります。

4)胎盤・臍帯
 胎盤の付着部位・成熟度などを観察します。前置胎盤の診断には経腟法を用いる方が有効です。http://ameblo.jp/sanfujin/entry-10730833347.htmlを参考にしてください。

 臍帯の付着部位・巻絡の有無・血管数(臍帯動脈が2本・臍帯静脈が1本だと正常です)・臍帯下垂の有無をチェックしておきます。

 妊娠中期以降に超音波検査でチェックすべき胎児異常について列挙してみます。
頭頸部:水頭症・脳ヘルニア・口唇裂・口蓋裂・頸部ハイグローマ
胸部:心奇形・不整脈・心不全・肺低形成・横隔膜ヘルニア
腹部:消化管閉塞・腹壁破裂・腹部腫瘤・卵巣嚢腫
腎尿路系:無形成(Potter症候群)・尿路閉塞
四肢・その他:致死性骨形成異常・二分脊椎

 超音波で出生前診断が可能な形態異常についてはhttp://ameblo.jp/sanfujin/entry-10717180477.htmlに詳しくまとめてみました。興味ある方は参考にしてみてください。

NST(non-stress test)
 胎児のwell-beingはBPSで評価するのが理想です。しかし、多忙な妊婦健診外来で胎動・呼吸様運動などすべての項目を観察するのは不可能です。そこで、NSTと羊水量でスクリーニングを行い、これで異常があればBPSを行って精査するというのが一般的かつ現実的です。

 NSTは侵襲がほとんどない検査です。妊娠22週以降で子宮収縮を訴える場合・胎児発育不全がみられる場合・羊水量の異常がみられる場合には積極的にNSTをとっていくことが望ましいと思われます。

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