妊娠中期~末期の妊婦健診での診察と検査〜前編〜 | 産婦人科専門医・周産期専門医からのメッセージ

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 第一線で働く産婦人科専門医・周産期専門医(母体・胎児)からのメッセージというモチーフのもと、専門家の視点で、妊娠・出産・不妊症に関する話題や情報を提供しています。女性の健康管理・病気に関する話題も併せて提供していきます。

 今回は、妊娠中期~末期(16週~35週)の妊婦健診における診察・検査について解説してみることにします。

 この時期の妊婦健診は、流・早産の予防、妊娠高血圧症候群発症の予防・早期発見、内科合併症などの発症予防・早期発見、胎児異常の早期発見・管理などが目的となります。

早産の予知・予防
 早産のリスクファクターの中では、絨毛膜羊膜炎と子宮頸管無力症(頸管短縮)が最も重要となります。

A.絨毛膜羊膜炎のスクリーニング
 早産の発症機序として、まず腟内常在細菌叢の変化による細菌性腟症が存在し、腟炎・子宮頸管炎の上行性波及によって絨毛膜羊膜炎に進展していき早産に至る、という過程が重要と考えられています。

1)腟分泌物細菌学的検査
 細菌性腟症の診断には、帯下の性状・pH・アミン臭・clue cellなどの有無を観察する方法グラム染色による方法があります。後者の方が再現性が高いといわれています。前述の初期スクリーニングで施行しない場合でも早産のハイリスクグループに対しては20週頃までに行っておく必要があります。

2)早産マーカー
 顆粒球エラスターゼ・胎児性フィブロネクチンの測定は、侵襲なく容易に行えます。また、健康保険も適用されていますが、スクリーニング検査として行うにはcost-benefitの点から問題があります。臨床所見から絨毛膜羊膜炎が疑われる場合や次に述べる超音波スクリーニングの結果から必要に応じて実施する方が実際的です。

B.経腟超音波検査
 子宮頸管の状態を把握するための頻回の内診はむしろ感染の機会を作ることになるため、健診時に毎回内診を行うことには否定的な意見が多くなっています。そこで最近では、子宮頸管の状態は経腟超音波検査で頸管長を測定することにより評価します。明確なcut off値は設定されていませんが、頸管長25mm以下で介入を開始することが多いです。さらに、頸管の楔状開大(funnelingといいます)を認めた場合も早産の危険性が高くなります。

妊娠高血圧症候群の予知・予防
 現在までのところ妊娠高血圧症候群の発症を予知することは不可能といわざるを得ません。さまざまな予知法が提唱されていますが、その陽性診断的中率は最も高いものでも20%程度といわれています。しかし、近年の周産期管理の進歩、特に妊婦健診の普及と妊婦さんの意識向上により妊娠高血圧症候群の発症率は減少しています。

 こうした事実を考慮すると、充実した妊婦健診と妊婦さんに対する適切な指導が、妊娠高血圧症候群の予防・早期発見につながっている可能性があります。

 以下のポイントに注意しながら妊婦健診を行っていきます。
1)妊娠高血圧症候群のリスク因子の抽出
 妊娠高血圧症候群のハイリスク群を妊娠初期のうちに抽出し、ハイリスク群には適切な指導を行っていきます。
 妊娠高血圧症候群のリスク因子についてはhttp://ameblo.jp/sanfujin/entry-10745533168.htmlに詳しく解説いたしました。

2)外来での指導
 体重管理:過度の体重増加に注意
 栄養指導:塩分の過剰摂取を避けカロリー過多にならないよう指導
 規則正しい生活精神衛生に心がける

 これらの指導は母親学級や助産師外来などを通して助産師・栄養士と協力して行うことが望まれます。

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