妊娠中毒症という言葉は耳にしたことがあるかと思います。かつては、妊娠中毒症とは「妊娠に高血圧・蛋白尿・浮腫の症状が1つもしくは2つ以上みられ、かつこれらの症状が単なる妊娠偶発合併症によるものではないこと」と定義されていました。
しかし世界的には、妊娠中毒症の病態は、あくまでも高血圧が主体であり妊娠中に起こる高血圧およびそれに伴っておこる母体の血管障害や臓器障害を含めた全身性の症候群である、という認識がありました。
そこで、遅れ馳せながら日本でも2004年に妊娠中毒症という言葉を廃し、妊娠高血圧症候群という用語で新たに定義・分類されることになりました。妊娠高血圧症候群の定義は次の通りです。「妊娠20週以降、分娩後12週までの期間に高血圧がみられる場合、または高血圧に蛋白尿を伴う場合のいずれかで、かつこれらの症状が偶発合併症によらないもの」
妊娠高血圧症候群の原因は未だに解明されておらず不明です。しかし、妊娠高血圧症候群は何らかの原因によって引き起こされる妊娠に対する母体の適応障害であることは確かです。本来なら妊娠中には非妊時と比較して血圧は低下するはずです。しかし、妊娠高血圧症候群では血圧が上昇するわけですから。
妊娠高血圧症候群は単一の疾患ではなく、あくまで症候群ですので症例によって様々な病態を呈します。ですから、母体や胎児に引き起こされる合併症も様々です。
余談ですが妊娠高血圧症候群は2足歩行する哺乳類でしか起こらないといわれています。ヒト・サル・ゴリラ・チンパンジーなどです。意外なところではパンダでも起こります。上野動物園に初めてきたパンダのランラン・カンカンは覚えているでしょうか?このランランは妊娠高血圧症候群による子癇発作・脳出血で死亡したといわれています。
この妊娠高血圧症候群については数回にわけて解説していきたいと思います。
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