「ロックTシャツ論争」再燃 | ʎʞɹǝ pɐǝɥuǝʞɹᴉq

 

 


 

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「ロックTシャツ論争」に荻野目洋子参戦で再燃 40代女性は「着たいけどママ友の前では…」と悩み

6月中旬、アラフォー女性が「ロックTシャツ」を着ることに関して、「上品さや清潔感とは対極の位置にある」「10代~せいぜい20代前半までしか許されないアイテム」などと書かれた記事が掘り起こされ、ネット上で議論がわき起こった。さらに「ダンシング・ヒーロー」でおなじみの歌手・荻野目洋子(55)が、「ロックTシャツ」をおばあちゃんになっても着ていたいというコメントをしたことで議論が過熱した。実際のところ、オーバー40の女性たちは「ロックTシャツ」を着ることをどう感じているのか。緊急取材した。

 コトの発端は、6年前にネットサイトで発信された「40代が似合わないTシャツはコレ! 失敗しがちな真夏の痛カジュアル5選」という記事。

 その中でロックTシャツについて「アラフォーのファッションで、1番大切なのが清潔感と品。ロックを聴いたり、バンドのファンでいることが悪いと言っているわけではありませんが、上品さや清潔感とは対極の位置にあるロックTシャツは、10代~せいぜい20代前半までしか許されないアイテムです。精神的に大人になり切れていないのかな、常識がなくて変わった人なのかな、と思われたくなければ、部屋着やパジャマにするのもやめて、こっそり思い出とともにしまうか、断捨離リストへ入れてください」(「OTONA SALONE」、2018年8月)と書かれている。

 6年も前の記事で、これまでも何度か”炎上”している話題だが、今回もネット上ではさまざまな意見が飛び交った。そんな中、6月15日に歌手の荻野目洋子はXでこうつぶやいた。

<何ならおばあちゃんになっても着ていたい。(中略)他人の事を批判する前にまず自分を幸せに出来る人間でいようと思うし楽しめる大人でありたい。服にはそういう力がある。「パワァーーー!!」>

 荻野目のこの投稿にはロックTシャツ愛好家から称賛の声が寄せられた。

■「東武」には行けても「伊勢丹」は無理?

 では、実際に「ロックT」を着ている40代以上の女性たちは、どんな“本音”を抱いているのか。自らもロックT愛好家の記者が取材をすると「好きなものを着てどこが悪い?」という気持ちと「迷える乙女心」の両方が見え隠れする答えが返ってきた。

「荻野目ちゃんみたいに、小顔でショートカットの女性は着こなせそう。私は新宿の伊勢丹には着て行けないけど、池袋の東武百貨店になら行けるかな? いや、おしゃれに着こなせていたら伊勢丹にも行けるかも」(40代)

「歩いて2分の『まいばすけっと』(イオン系の小規模スーパー)には着て行けるけど、歩いて15分の最寄り駅の近くの『セブンイレブン』には行くことができない…」(40代)

 徒歩2分と徒歩15分の境界線とはなんとも微妙だが、わからなくもない。自宅からの“距離”で判断している人はまだいる。

「好きなアーティストの名前やロゴやキャラクター、バックプリントにツアーの日程などの入ったTシャツはライブに行くと必ず買ってしまいますね。Tシャツ代は5000円くらいですから。ライブ会場で買って、すぐに着ます。そして、帰りもライブ会場の最寄り駅までは着ていますけど、自宅の最寄り駅に着いたら脱ぐ、もしくは、上着をはおる」(40代)

 ライブ会場以外では「着ない」もしくは「着られない」という声も……。

「この年代になると、そんなにTシャツは着ないのに、思い出の品というか、記念品ということでロックTシャツを購入することは多いですね。ライブ中はもちろん着ますが、家に帰ったらハンガーを通して飾っておくかな。ポスターみたいなものかも。最近は、テイラー・スウィフトのツアーTシャツを買ってしまった。そして、袖は通していない」(40代)

「スチャダラパー×小沢健二のライブがTシャツ代込みのチケット代金1万6000円だったので、一瞬悩んで購入。ライブ会場の席に配布されていて、隣の席のものとは異なる仕掛けがあり“面白い!”と思って、その日は着て帰りました。しかし、かなりオーバーサイズのもので、いろいろなところに肉がつく50歳には、大きいのも(もちろん小さいのも)ダメダメ、どこにも着ていけない」(50代)

■70歳以上の女性が「セックス・ピストルズ」

 さらに「絶対に着られない」という理由に挙がったのは、ママ友の目があるからという意見だった。

「ママ友に会うときは着ない。Tシャツを指さされて“それ、誰?”って言われても、イチから説明するのが面倒くさい。明らかに視線はTシャツを見たのに、何も聞いてこないのも“え、引いてる!?”と心配になるので、どちらにせよ面倒」(40代)

「お寺が経営母体の幼稚園に子どもが通っているので、保護者の送り迎えファッションは清楚系というか、どこかにリボンやフリルがある装い。そのため、ロックTシャツは着て行きません。着ている方も見かけたことはありません。よくよく考えると、私はどこにTシャツを着ていくつもりなのか……」(40代)

 もちろん、「どこでも着て行ける!」というアクティブ派もいる。

「義理実家でもロックTシャツで過ごせます! どうせ、義理の父も母もなんのTシャツだかわからないだろうし。でも、さすがに、マリリン・マンソンみたいな見るからに怖いTシャツは帰省には持っていきません。そのあたりは考える」(50代)

「売れないミュージシャンや駆け出しのバンドマンなどが比較的多く住んでいる街のため、住人の装いはTシャツにデニムみたいなカジュアルな人も多く、全然、問題なくJRの最寄り駅まで着て行ける。その先までロックTシャツが大丈夫かは、行く場所、会う人などによる」(40代)

 服として自分が「着る」「着ない」という基準だけではなく、ロック的な生き方に共感している場合もあるようだ。

「家の近所に、70歳以上とお見受けするカッコいい女性がいて、その方はニルヴァーナのTシャツにグランジ風ニットを合わせたり、セックス・ピストルズ『アナーキー・イン・ザ・U.K』のジャケット写真のTシャツにヴィヴィアンウエストウッド風ジャケットなどを着こなしていらっしゃる。近所のお買い物もその格好で、エコバッグにネギがささっている感じ。すてきだな、そんな風に堂々と着たい!」(40代)

■着こなしで「上品」にすればいい

「UKロックバンドのザ・ストーン・ローゼズの有名な“レモン”をモチーフにしたTシャツを着ていたら、中野のドン・キホーテで見知らぬ20代と思われる男性から『ストーン・ローゼスですよね。あ、急に声をかけてすみませんでした』と言われてビックリ! 一見ただのレモンなんだけど、フランスの5月革命の時、若者たちが催涙ガスの痛みをやわらげるためにレモンを絞って飲んでいたという話からきているモチーフ。見ている人は見ているのだと驚いた。だから、私はこれからもロックTシャツで生きていく!」(50代)

 スタイリストの角侑子さんは、40代以上の女性がロックTシャツを着ることについて「個性があって良いことだと思います」としたうえでこう話す。

「ファッションにはTPOに合わせる着こなしと、アイデンティティーを表現する着こなしの2種類があり、ロックTシャツは後者に該当する着こなしです。ロックTシャツがダメと言われる理由は、Tシャツのデザインが“品がない”とみられやすいこと、また、Tシャツが色あせたり、ヨレたりした状態で着ていると“だらしない”とみられやすい点にあると思います。逆に、たとえデザインが騒々しくても、着こなしで上品さを表現すればいいですし、Tシャツそのものに清潔感があれば全く問題ありません。つまり、好きな服をご自身らしく上手に着こなせば良いわけです」

 荻野目洋子が「服には力がある」とつぶやいていたが、ロックTシャツは、それを好きな人たちの元気の源であることは間違いないようだ。

(AERA dot.編集部・太田裕子)