相談員の話は、まだ続くのである。

 

これは、ごく初期の頃の話。

 

20代女性が、紹介状を求めて、窓口にやってきたのである。

 

手には、数枚の求人票。

内容を見ると、数枚とも、その女性には、ちょっと合わないと感じる業務のように思われた。

スキルが足りないように感じたのである。

また、応募された会社の側もちょっと困るのではないかと思えたのである。

 

「これは、ちょっと応募しても、難しいのではないでしょうか。」

まだ、慣れていなかった筆者は、暗に向かないのではないかということをほのめかしたのである。

 

しばらく考えた彼女、「では、これだけでも、出してみます。」と言って、一枚を選んだのである。

「そうですか。」と、筆者は、その求人票を預かり、紹介状を出したのである。

 

そして、しばらくしたら、結果が来た。

 

採用である。

 

この結果を見て、筆者は、著しく反省した。

自らの至らなさを恥じたのである。

筆者の思い込みで、危うく一人の採用を失敗させてしまうところだったのである。

 

求職活動とは不思議なもので、縁と運である。

うまくいくときはスルスルとうまくいくし、あまりよろしくないときにはあまりよろしくなくなる。

 

どんな縁と運が待ち受けているかは、本当に誰もわからないのである。

その機会は、多ければ多いほどいいし、わざわざ、その機会を減らすことは、絶対にいけない。

 

筆者の勝手な推量で、この女性にこの会社を紹介しなかったら、この女性の採用はなかったのである。

ともすれば、この女性の人生を、大きく変えてしまうところだったのである。

 

以来、このことを肝に銘じ、紹介状を求める人には必ず紹介状を出すことにしたのである。

どんなに難しそうであろうと、無理な内容と思おうと、積極的に出していったのである。


相談員の話は、まだ続くのである。