私は脳出血で入院した時の血圧が「収縮期160/拡張期100」ありましたので、担当医が降圧剤の処方をして、強制的に血圧を「収縮期120/拡張期80」まで下げて、脳出血の予防をしておりました。
皆さんも
「血圧が高めの方に」というトクホ(特定保健用食品)のサントリーの「胡麻麦茶」。テレビCMで、「収縮期血圧が130mmHgを超えたら「『胡麻麦茶』を」と強調しており、それは半ば強制しているようにも受け取れます。
というCMを目にした方もあるでしょう。
でもそれって本当なのでしょうか?
今年4月から、特定健診における高血圧での受診勧奨と判定する基準(mmHg)が、現在の「収縮期140/拡張期90」から「収縮期160/拡張期100」へと変更されることになりました。
数字の上では違いが分かりにくいですが、「受診勧奨される人が10分の1になる」のです。
この変更には多くの伏線があります。
一つ目は国際的な潮流です。少し前には医療の世界で論文や薬の治験の不正が横行し、治療指針(ガイドライン)も製薬企業により歪められていた時期がありました。
私も最初の降圧剤はディオバンを処方されていましが、ディオバンの治験結果・論文改ざんを受けて今はアムロバ配合剤に変わっています。ディオバン事件 - Wikipedia
この影響による無駄で危険な医療が問題になりました。
2004年に医師と製薬企業の経済的な癒着(利益相反)を解消しようという動きが起こり、コレステロールや血圧の治療ガイドラインが科学的に作られるようになりました。
2019年の英国政府のガイドライン(NICE)で、高血圧に対する医療介入は収縮期160/拡張期100mmHg以上となったのです。
日本は、この世界の潮流から取り残されていました。
二つ目は日本人を対象とする研究です。同じ2004年に、私たちが総合健診医学会で70万人の健診結果から統計的な方法で「男女別年齢別基準範囲」を作りました。
加齢に伴って血圧が上昇するのは正常な変化で自立度を高めるなどの効果があるのです。
55歳以上では男女とも収縮期160/拡張期100mmHgまでは正常なのです。
これを裏付けた住民追跡研究の結果を2008年に発表しました。
60歳以上の男女とも、死亡率の上昇が見られたのは収縮期160/拡張期100mmHg以上でした。
三つ目は国民医療費の限界です。厚労省は2008年に医療費削減として特定健診・保健指導(メタボ健診)を開始し、職場健診や人間ドックでも同じ基準を使うように指導してきました。
しかし、その後は過剰診断や薬物副作用により医療費の伸びが加速してしまいました。
特に開業医の所得平均が2160万円と、他の職種での所得が増えない中で目立っています。
しかし日本医師会は従業員の賃上げのために診療報酬点数を上げることを求めています。
このせめぎ合いの中で、2024年6月から再診料を2点(1点10円)、高血圧/高脂血症/糖尿病の生活習慣管理料を40点、それぞれ上げる代わりに、月2回から1回の算定とします。
2022年に3回まで繰り返し使えるリフィル処方箋が制度化されており、すでに再診回数が減少しています。
2024年4月からの特定健診の新しい血圧判定では140/90mmHg以上を受診勧奨判定値として残していますが、括弧付きで(判定値を超えるレベルの場合、再検査や生活習慣改善指導等を含め医療機関での管理が必要な場合がある)としています。
高血圧と診断された場合、薬を使って治療することもありますが、まず大事なのは生活習慣の改善です。
高血圧につながる塩分のとり過ぎ、肥満、運動不足などを改めます。
こうした生活習慣の改善は、高血圧の予防にもなります。
とりわけ塩分のとり過ぎは、日本人の高血圧で最大の問題です。
さらに最近は、肥満がそれに並ぶほどの問題になっています。
肥満によっておなかにたまる脂肪はさまざまな物質を分泌しますが、その影響で血圧が上がってしまうのです。
さらに新基準では「すぐに医療機関の受診」としているのは160/100mmHg以上と明記されました。
140~159/90~99mmHgは「生活習慣を改善する努力をした上で、数値が改善しないなら医療機関の受診を」と受診抑制をしています。
忙しい日本の外来診療で高血圧で受診すると、原因を調べずに「本態性高血圧」として薬が出されるでしょう。
薬には効果と副作用がありますが、降圧剤では脳卒中、心筋梗塞、腎疾患など疾病への効果は認められていませんが、副作用として脳梗塞、腎機能低下、肝機能障害などが医薬品添付文書に記載されています。
薬の効果と副作用のバランスを報告している利益相反のないサイト(theNNT.com)では「既往歴無し、収縮期血圧 140-159mmHg 、拡張期血圧 90-99 mmHg」の人では効果ゼロ、副作用が12人に1人としています。
なのでこれからは高血圧と言われた人は、医師に「原因は?」と聞きましょう。
毎朝と就寝前に血圧を2回ずつ測りましょう。
そして自分の身体は医師の診断を過信せず、自らも情報収集をして、無駄な医療費を請求されないように気お付けたいですね。