山スキーヤー強化道場としての”槍ヶ岳” | がんちゃんの雪山讃歌

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石川の山スキーヤーがんちゃんが登山、山スキーを中心とした日常生活や山への想いをつづります。
ヤマレコもやってます。(HN:Sanchan33)

山スキーは登山の総合力が試されるわけだが、槍ヶ岳はそれらが顕著に試される典型的な山だと思っている。

まずは体力面。

約28kmの移動距離に加え、単純標高差2000mというのはただ歩くだけでもかなりハードだ。

標高差だけではなく、ピークは3,180mという国内5位の標高を誇る高峰なので冬の高山帯特有の強風や寒さへの慣れと耐性も必要になる。

穂先は言わずと知れた岩峰でハシゴや鎖はあるものの、ちょっとしたクライミング要素もあるしピッケル&アイゼンワークも要求される。

 

そして何より様々な山スキーの技術力が試される。

特に初冬の槍ヶ岳はそれほど積雪量が多いわけではないため登山道をなぞって歩かなければならないわけだが、登山道はアップダウンが多く岩やブッシュなどの障害物も多い。どんな所でも臨機応変にシールで歩ける技術が求められるのだ。

飛騨沢近辺では岩が露出しはじめるため岩稜帯のシール歩行も必要になる。あるいは早々にツボ足アイゼンに履き替えるといった選択を迫られるかもしれない。

飛騨乗越近辺では風で雪が飛ばされていることが多い。

 

滑走に際しても試練が多い。

 

まずは槍ヶ岳山荘~飛騨乗越までの区間は崖っぷちを確実にトラバースする必要がある。

飛騨乗越上部では滑落厳禁の際どいトラバースが待ち受ける

 

飛騨沢はパウダーが詰まった素晴らしいオープンバーンだが上部と下部では雪質が異なり、その日のコンディションによってはモナカだったりするため、様々な雪質に対応した滑りが求められる。

飛騨沢上部はパックされていることが多い。

 

中間部、特に日陰部分はは素晴らしきパウダーが詰まっている。

 

下部はは気温が上がり日も当たるので雪も腐りやすい。

 

問題はここから。

初冬の槍平小屋から滝谷出合までは基本的に藪が濃いので登山道沿いを滑るしかなく、狭い登山道をコントロールしながら滑る技術が必要になる。しかも登山道には岩や木が隠れていたりするので変な瞬発力も要求される。

滝谷出合から白出沢出合までも登山道をトレースすることになるが、下り基調とはいえアップダウンが多いのでシールでいくか、滑走モードでいくか、片足シールで行くか、ツボ足で行くか・・・非常に判断に迷う。

自分なりに色々試した結果、一番安全で楽なのは両足シールでヒールフリー、ブーツだけ滑走モードという組み合わせが向いているのではないかと考えている。

登り返しを考えるとシールがあった方が楽だしヒールフリーがいい。滑走を考えるとある程度ブーツは固定されていた方がいい、ということで絶妙なバランスを追求した結果だ。

ただ、この辺の選択は地獄メンバーでもそれぞれ異なる。色々試してみて自分なりの組み合わせを考えてみるのもよいのではないだろうか。

 

白出沢から先の林道滑走も林道を素直に滑るのか、途中でショートカットして藪を滑るのか、いくつか選択ができる。

 

ということで、山スキーで槍ヶ岳に登ることで結果的に山スキーの総合力を強化することができる。

逆に言うと、そこそこ総合力を高めてからでないとハードルが高い山だともいえる。

行き先に迷ったらとりあえず「槍ヶ岳」みたいな感じで修業するのもありかもしれない。

 

白出沢~槍平小屋までの区間は基本アップダウンの多い登山道をトレースすることになる。

 

シールでいくか、滑走モードでいくか、自分のスタイルを確立してみるのも面白い。