南丘喜八郎 月刊日本1月号巻頭感 : 今こそ「日本を取り戻す」好機だ | 護国夢想日記

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 日々夢みたいな日記を書きます。残念なのは大日本帝国が滅亡した後、後裔である日本国が未だに2等国に甘んじていることでそれを恥じない面々がメデアを賑わしていることです。日本人のDNAがない人達によって権力が握られていることが悔しいことです。

南丘喜八郎 月刊日本1月号巻頭感
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今こそ「日本を取り戻す」好機だ

 

今年十二月九日は夏目漱石の百回目の命日だ。今年は漱石没後百年目に当たる。
 

日露戦争勝利後の明治四十一年、漱石は朝日新聞紙上で小説『三四郎』の連載を始めた。四十一歳の時だ。
 

主人公三四郎は熊本の高等学校を卒業し、進学のために上京する。車中で隣り合わせになった鬚の男が三四郎にこう話しかける。
 

〈「いくら日露戦争に勝つて、一等国になつても駄目ですね。あなたは東京が初めてならば、まだ富士山を見た事がないでせう。あれが日本一の名物だ。

 

所が其富士山は天然自然に昔からあつたものなんだから仕方がない。我々が拵へたものぢやない」と云つてにやにや笑ている。
 

三四郎は日露戦争以後こんな人間に出逢ふとは思ひも寄らなかつた。どうも日本人ぢやない様な気がする。
 

「然し是からは日本も段々発展するでせう」と弁護した。
すると、かの男は、すましたもので、「亡びるね」と言つた。〉 (『三四郎』)

 

漱石は鬚の男の口を借りて、日露戦争勝利に驕る日本はいずれ「亡びるね」と警告を発したのだ。

米国の支援を得て日露戦争で辛うじて勝利を手にした日本だが、米国の鉄道王ハリマンからの南満州鉄道共同経営案を拒絶したのを端緒に、日本の勢力圏となった南満洲において日本製の綿製品が米国製品を駆逐するなど、市場の閉鎖性が日米間の重大な問題となり、急速に米国との関係が悪化していく。

 

『三四郎』の連載が始まった明治四十一年頃から、米国で排日運動が起り、日本移民の制限政策が始まる。
 

こうした状況下の大正三年、日本はドイツに宣戦布告し、第一次大戦に参戦する。日本の参戦はドイツの恨みを買うだけでなく、米国の反日感情をさらに悪化させた。
 

象徴的なのは、日露戦争の戦費調達を支援した米国最大の投資銀行の一つであるクーン・レーブ商会代表ジェイコブ・シフが日米協会副会長を辞任し、日本興業銀行債権などの斡旋をすべて断り、回収を求めてきたことだ。
 

当時、桂太郎や寺内正毅らが政権を握っていたが、日米関係の微妙な変化に気づくはずもなかった。裏面で彼らを操縦したのは薩長閥の頂点にある山縣有朋である。

 

彼ら薩長閥は明治維新以来の富国強兵策一本槍で、軍事的圧力の下で満蒙権益の確保と中国本土への影響力行使を強め、朝鮮半島の植民地化を着々と進めつつあった。
 

こうした政権の在り方に重大な危機感を抱いたのが、政友会総裁の原敬である。原はこう認識していた。
 

「日露同盟又は露仏日英同盟などの説あるも、是れは一時の平和は出来得べきも将来は日英同盟恃むに足らず。一朝米国と事あるに際し欧州は毫も恃むに足らざれば、米国の感情は多少の犠牲を払ふも之を緩和するの方針を取らざるべからず」(『原敬日記』大正三年九月)
 

寺内正毅首相の辞任後、原は大正七年に首相に就く。中国・満洲には主権を尊重して友好を深めるべく努力を重ねたが、「弱腰外交」と厳しい批判に晒された。

 

三年後、原は東京駅頭で暴漢に刺殺され、六十五歳の生涯を閉じる。稀有な政治能力を持つ原敬が暗殺された後、昭和二十年八月の大東亜戦争敗北までは一瀉千里だった。
 

漱石が『三四郎』で「亡びるね」と書いた通り、先人の作り上げてきた近代日本の果実は一挙に潰えた。
 

敗北から七十一年間、我が国はヤルタ・ポツダム体制下で、米国支配に甘んじてきた。その戦後秩序が眼前で崩壊を始めつつある。英国のEU離脱、中露の台頭、中東大波乱、加えて米国には異形の大統領が誕生する。
 

トランプ大統領の誕生は戦後秩序だけでなく、日米関係を劇的に変える蓋然性が高い。米国支配に呻吟してきた我が国にとって、千載一遇の好機と捉えるべきだ。
 

だが、この混迷期に臨んで、独立自尊の日本国を確立せんとする気概のある政治家が果たしているのか。

 

七十年余の精神的奴隷状態に馴らされてしまい、自立の精神を忘却してしまったのではないか、と危ぶむ。
 

この原稿執筆中に沖縄でオスプレイ墜落事故があったとの報道に接した。新聞・TVは墜落を米軍の説明通り、「不時着」と偽って報道した。

 

図らずも、戦後の精神的奴隷の実態が露呈したのだ。
安倍総理は就任時に「戦後レジームからの脱却」を掲げて、「日本を取り戻す」と獅子吼した。

 

いまこそ、安倍総理には、天から与えられた自立の好機を掴み、真の独立国家日本を取り戻して貰いたい。
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