池東旭  太平洋をめぐるグレート・ゲーム | 護国夢想日記

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 日々夢みたいな日記を書きます。残念なのは大日本帝国が滅亡した後、後裔である日本国が未だに2等国に甘んじていることでそれを恥じない面々がメデアを賑わしていることです。日本人のDNAがない人達によって権力が握られていることが悔しいことです。

池東旭  太平洋をめぐるグレート・ゲーム
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──海洋勢力対大陸勢力
 


太平洋で海洋と大陸の勢力が一触即発、睨み合っている。日本は海洋、中国は大陸国家だ。米国は海洋国家であり大陸国家でもある。


100年前、海洋勢力(英国)と大陸国家(ロシア)が地球規模でグレート・ゲームを闘った。日露戦争はその延長戦だ。英国の覇権はパクス・アメリカーナ(米国の世界支配)に移った。


大陸勢力をリードしたロシアは後退して、2番手の中国が先頭に躍り出た。米国は日本、韓国と同盟を結び中国を封じ込めた。だが、核とドルによる米国の支配は疲弊した。
 


中華崛起(くっき)でアジアでの力の均衡は揺らいでいる。華夷(かい)秩序の復活を夢見る中国は、大陸制覇に次いで海洋進出の野望に燃える。太平洋を両分して、米中両国の縄張りにすると公言する。


力の限界を悟る米国がモンロー主義に回帰して防衛ラインをグアム島まで引き下げる可能性もある。日本は米国の核の傘による集団安全保障体制の中、中国と友好を保つ戦略だった。



だが、米国と組んで中国の海洋進出を阻む日本に、中国は敵意を?き出した。尖閣諸島をめぐる日中の衝突はその一端だ。

──半島国家の選択
 


半島国家・韓国は選択に迷っている。朝鮮半島は有史以来、大陸と海洋勢力の通路にされた。韓国人の意志とは関係なく、大陸・海洋勢力は半島を踏み台にして争った。


白村江の戦い、元寇、豊臣秀吉の朝鮮侵略、日清・日露戦争韓国動乱などだ。日清戦争後、現在まで韓国は海洋勢力の一員となり、大陸勢力と対峙する最前線になった。
 


1992年、韓国は中国と国交を樹立した。中国は南北双方に大使館を置き、その影響力は米国を凌ぐ。韓国は経済面で急速に中国にのめり込んだ。対中交易は米・日との交易合計を上回る。


北朝鮮は体制競争で南に負けた。だが核と弾道ミサイルを保有して軍事力で優る。米国は中国が庇護する北に有効な制裁ができない。韓国は北をコントロールする中国の鼻息を窺う。
 


駐韓米軍2万7000人は韓国の安保の要(かなめ)で、これが北の南侵を抑止している。北の核開発を放置した中国は方針を転換して、北に核放棄の圧力をかける素振りを見せる。


狙いは北の核放棄の見返りに米朝平和協定締結を促す。平和協定の次は駐韓米軍の撤退だ。駐韓米軍が撤退すれば、韓国は否応なく中国の引力圏に吸い込まれる。海洋チームから離脱する。

──等距離外交の罠
 


韓国は米中と等距離外交で安全が保障されると、ナイーブな幻想を抱く。等距離外交は危ない綱渡りだ。両方から不信される。バランスを崩したとたん、転落だ。力の裏付けがない中立は虚構にすぎない。
 


今、日韓関係は第2次世界大戦後、最悪だ。両国の反日、嫌韓ムードは極度にある。理由はさまざまだが、国交正常化後、半世紀も埋もれていた火ダネが噴火した裏に、海洋と大陸勢力の対決がある。海洋陣営は仲間割れしている。売り言葉に買い言葉の反日、嫌韓の口喧嘩は海洋と大陸の代理戦だ。
 


大陸陣営に合流しようとする韓国の動きが加速している。内外でそれを危惧、懸念する声が高い。政治・経済・軍事分野で米韓の連帯感は強固だ。中国への歴史的強迫観念、恐中症もある。


韓・中経済も補完から競合関係に転化している。しかし地政学上、ユーラシア大陸の突端、韓国は海洋勢力がテコ入れしても黄砂に呑み込まれる確率が高い。その場合、日本は海洋勢力の最前線に立ち、真っ向から黄砂の竜巻に曝される。
 


日本でも対中宥和と脱米・アジア回帰論が盛んだ。だが中華崛起が果たして持続可能かは疑問だ。同盟の選択は一国の興亡を左右する。


戦前日本は日英同盟解消後、独伊と3国同盟を、ソ連と中立条約を結び、敗亡した。朝鮮王朝は大明、大清、帝政ロシアなど、パトロンを転々と変えたが見捨てられた。永久の覇権、永遠の敵味方はない。恃(たの)めるのは自主、自力、自立しかない。
(国際ジャーナリスト=ソウル在住)


「ビジネス情報月刊誌「エルネオス」2014年1月号http://www.elneos.co.jp巻頭言 「池 東旭の賢者に備えあり」 より
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