消費税増税論は打破すべき戦後レジームの象徴である (言志 Vol 13) | 護国夢想日記

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 日々夢みたいな日記を書きます。残念なのは大日本帝国が滅亡した後、後裔である日本国が未だに2等国に甘んじていることでそれを恥じない面々がメデアを賑わしていることです。日本人のDNAがない人達によって権力が握られていることが悔しいことです。

消費税増税論は打破すべき戦後レジームの象徴である (言志 Vol 13)
    (産経新聞社特別記者、編集委員兼論説委員:田村秀男)

 昨年12 月の衆院総選挙に続き、安倍晋三氏率いる自民党が7 月の参院選挙でも圧勝した。
「アベノミクス」で株価が上がるという「実利」への期待だけが有権者を突き動かしたわけではない。

 日本国民は重大な路線転換を安倍氏に託している。国民の多くが「戦後レジーム」を経済再生の桎梏(注:しっこく;あしかせてかせの意)として認識し、その実現のためにはアベノミクスを支持し、成功させるべきだと真剣に考え始めたのだ。
 


 アベノミクスとは中身こそ経済政策なのだが、その核心は政治そのものである。


 なぜか。何よりも、アベノミクスがめざす「脱デフレ」と「強い日本」とは、経済規模縮小をうながしてきたデフレを容認する既成権力――すなわち財務官僚を頂点とする官僚機構、官僚によって洗脳された主流メディア、そして唱和してきた与野党の政治家多数――との対決を意味し、これらの旧勢力、すなわち戦後体制擁護者を排撃しない限り、成功しえない。


 有権者の多くは実は、その要点をすでに理解しているように思える。メディアはその世論の変化から大きく立ち後れている。
 


 早い話、アベノミクスが始まって間もない1月中旬、日銀のデフレ容認政策を支持してきた日経が御用経済学者を動員して、その経済論壇である「経済教室」で「悪性インフレ」「日本国債の暴落」などの「危険」を喧伝したし、朝日新聞は3月25日付の社説欄を一本原稿にして、「国の借金 新たな安全神話に陥るな」と
アベノミクスをこきおろした。


  明治時代を例に引き、「今の政治家に、借金を恐れ、
まじめに償還を考えた明治の為政者の覚悟はあるだろうか」と説き、日銀による国債の大量購入に伴う「制御不能のインフレ」や「財政規律」の欠如による日本売りに警鐘を鳴らし、国債の「暴落はないと高をくくるのは、原発の事故リスクを無視してきたことと同じ」と断じた。


  世界最大の債権国の現代日本を、外国からの借金に依存していた明治時代と比較したり、福島原発事故と同列視するのは、経済学上の知見ゼロ、政治的デマゴーグの手法そのものである。
 


 5月23日に株価が急落すると、翌日の日経朝刊は「失望したマネーは株式市場から逃げ出し、株安と円高の同時進行に拍車がかかる」と読者を脅した。


 朝日朝刊は1面で「東証暴落」と決めつけ、「アベノミクス危うさ露呈」と騒ぎ立て、日銀の異次元緩和の打ち切りを求めた。日経、朝日ともマーケットの調整局面の精緻な分析をせずに、「アベノミクスの危険」を騒ぎ立てるのは、以前のデフレ容認の思考から抜けられないからだ。

 増税しなくても税収は伸びる
 

 参院選後も脱戦後体制=リフレ派対戦後体制=デフレ容認勢力との対立構造は何ひとつ変わったわけではない。その最大の攻防が「消費増税」問題である。


 財務官僚が民主党前政権を傀儡化し、メディア主流派と自公両党を巻き込んで昨年に成立させた消費増税法案には「景気条項」が盛り込まれ、安倍首相は今秋に景気動向をみながら2014年4月8%、15年10%への税率引き上げを決断すると表明
しているが、財務官僚はもし実施を延期したり、税率を大幅に下げるようなことをすれば、日本国債が暴落し、長期金利が高騰して、景気が悪化すると脅し、メディアにもそう書かせている。


  財務官僚が仕切る内閣府が7月23に発表した経済財政白書
では、何のデータの裏付けもなく「消費増税は成長を阻害しない」と結論づけている。財務官僚はさらに、「消費増税は国際公約も同然」と麻生太郎財務相に言わせ、日経などが「国際公約を守れ」と合唱する具合である。
 


 現実にはアベノミクス効果で税収が急速に増えている。名目GDP伸び率1%に対して、中長期的どのくらいのパーセントで税収が増えるかを税収の弾性値と呼ぶ。


 その税収弾性値は3というのが民間シンクタンクの共通見解である。今年度の名目GDP成長率を3%とすると一般会計税収増加はその3倍、9%。今年度は約3兆9,500億円増え、2014年度も名目成長率が同じだとすると、2013年度に比べて税収は4兆3,100億円増える。


  この結果、税収は14年度に52兆1,900 億円となる。政府が昨年8月にまとめた、消費増税を前提に財政再建に向けた「経済財政の中長期試算」によれば、14年度の一般会計税収必要額は51兆5,000億円である。


  つまり、消費税増税に踏み切らなくても、名目成長率3%を続けるだけで、財政再建の道筋が明確になってくる。しかも、日銀
による長期国債買い入れも加わるので国債相場の安定は果たせるというのに、増税により再びデフレに戻しても構わないというのが財務官僚の論理であり、メディア主流派の論調なのである。


  脱デフレを最優先し、名目成長率を高めることが経済と財政の再建の近道であることに目を向けようとしない。消費増税こそは戦後レジーム擁護勢力の策謀そのものである。
 


 考えても見よ。「15年デフレ」は1997年度の橋本龍太郎政権の消費増税から始まった。
橋本氏はあとでその失敗を悔やんだが、彼をそう決断させたのが戦後体制、すなわち官僚主導・盲目的官僚追随メディアだった。


  そしてこの戦後体制は連合・日教組母体の民主党政権になるともっと強化され、デフレ下の消費増税翼賛会が成立した。

 消費税増税凍結は時代の要請
 

 日本がデフレを継続することは、米国金融資本主導のグローバリズムへの日本の服従を意味する。異形の大国・中国がいかに米国債を保有しようと、それは米国にとって不安材料であり、安定装置はやはり世界一の債権大国日本からの資金供給ルートしかない。


 日本がデフレである限り、日本国民の巨大な余剰資金が国内生産に使われずに、海外に出て行かざるをえず、米国債投資に回る。ウォール街にとってドルに対して価値が上がるデフレ下の円建て金融資産はラスト・リゾート(最後のより所)となる。


 消費増税ともなれば、日本の消費者の負担増を担保にする日本国債は高い価値が保証される。これがワシントン主導の国際通貨基金(IMF)が日本の財務官僚と組んで盛んに消費増税を日本
に催促してきた背景である。


 先進7カ国グループのG7、それに新興国を加えたG20なる首脳会議で、日本は野田佳彦前首相がわざわざ増税を国際公約した。他方では、「財政再建よりも経済成長を優先すべし」とIMF、G7,G20ともうたっているのに、世界最大の債権国、つまり最大の貸し手である日本だけは緊縮財政を優先するという倒錯ぶりであ
る。


 「国際公約も同然」との麻生発言に代表されるように、国際戦後レジームへの従属を何とも思わない有力政治家は圧倒的多数を占め、消費増税にまい進するのが政治家としての使命とみる。


 国際戦後秩序のいわば、ただ乗り組が中国と韓国である。中国共産党は本来の戦勝国メンバーである蒋介石国民党政府を台湾に追いやり、国連安保理常任理事国の座を占め、
「連合国」メンバーになりすます。


 韓国は日本の植民地だったことを、「日本への敵対国」グループの一員にすり替えた。
 

 アベノミクスに抱く中韓の限りない憎悪は、単にアベノミクスによる経済面で自国が受けるマイナス効果によるとは限らない。日本の円高修正と連動するように中国経済は事実上マイナス成長に陥り、過剰生産は深刻化し、不動産バブルは崩壊前夜である。


  韓国株式市場は日本の株式市場復活とは逆に沈み、依存する外資が逃げ出している。


 それ以上に、打撃となるのは日本の政治的復権であろう。アベノミクスで日本が長き空白と低迷から脱し、東アジアの強力なリーダーとしてよみがえることに強烈な警戒心と敵愾心を抱くのだ。
 


 以上、まとめると、消費増税実施を凍結し、脱デフレと3%以上の名目成長の維持を最優先することこそは、安倍首相に付託された「時代の要請」なのであり、覚醒した日本国民の指し示す針路なのである。


 アベノミクスを真の意味で成功に導くために
は、増税翼賛会に打ち勝たなければならない。