かくて「教育改革」は敗れる        藤原正彦(お茶の水女子大名誉教授) | 護国夢想日記

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 日々夢みたいな日記を書きます。残念なのは大日本帝国が滅亡した後、後裔である日本国が未だに2等国に甘んじていることでそれを恥じない面々がメデアを賑わしていることです。日本人のDNAがない人達によって権力が握られていることが悔しいことです。

かくて「教育改革」は敗れる        藤原正彦(お茶の水女子大名誉教授)

東大が九月入学へ近年中に移行することを考えているそうだ。学事暦を海外の多くの国と合わせることで、海外からの留学生を増やそうというらしい。

 九月入学にしたら留学生が増えるとはどんな論拠があるのだろう。学部の場合、日本語で授業がなされる限り留学生は増えないと思った方がよい。そもそも東大がなぜ留学生を増やしたいのか分らない。


日本人ばかりを相手に日本語で講義して何の不都合があるのだろう。日本は自然科学でノーベル賞を十六人も輩出している。しかも彼等のほとんどすべては大学院までを日本で終えている。

日本の一流といわれる大学に無論欠点は多々あるが、少なくとも自然科学に関する限り大きな誤りはなかったと思ってよい。ただし大学院の方は留学生がもっと多くてよい。

  研究には多様な発想が大切だからだ。東大でも社会科学系には極めて少ないし、理工系でも欧米からはほとんど来ていないというのが現実だ。

  大学院での留学生を増やしたいのなら、研究や教育の質を高めることにつきる。一流の学者の所には黙っていても世界から人がやってくる。東大はつまらぬ制度いじりにかまけているより、もともと優秀な教官陣が本来の研究教育に専心できるよう、委員会や書類書きといった雑用の大幅軽減を、大学の命運をかけて考えた方がよい。

  東大の制度いじりに呆れていたら、今度は自民党教育再生実行本部が六・三・三制の代わりとなる五・四・三制や四・四・四制の検討をしているという。

  不都合があれば改革すべきだが、改革に要するエネルギーとそれによる混乱を考えると、新しいものが古いものよりはるかによいという確信がなくてはならないはずだ。そのように学制を変えれば子供達の学力が上がるのか。いじめが少なくなるのか。


  ケータイ、ファッション、グルメなど身の回りの些末なことに関心を奪われている若者がもっと本質的なことに関心を向けるようになるのか。疑問である。

  つまらない制度いじりに舌打ちしていたら今度は、政府の教育再生実行会議(本部やら会議やら紛らわしい)が、小学校の英語教育を早めることを提言した。二年前、五年生から週一時間の英語が必修となったが、四年生以下にしようというのだ。 

  英語のできない担任がおままごとのようなことをしてどんな成果があがるのか。五年生で始めて成果がでないから四年生から、それでも駄目だから三年生から、となるだろう。

  一時間では足りないから二時間、そして三時間と進むだろう。三年生から毎週三時間ずつやっても日本人は英語を話せるようにならないのだ。


  そして英語の発音が多少うまいだけの、漢字も九九もままならない半人前の日本人が大量生産されることになろう。

 教育を改善しようとする場合、とかく制度いじりや組織いじりに走るものだ。 本質が何かを見極めるにはかなりの洞察力が必要だし、また本質はしばしば流行りの思潮や国民的合意や関係者の利害に絡んでいて、それに挑戦するには大変な見識と勇気を必要とする。

 規則一点張りの文科省と対峙するする必要もあろう。そこで制度の方に逃げを打つのだ。真の教育改革ほど難しいものはないと心得てよい。文科省は改革にあたり、良心的であるがゆえに自信がないからしばしばヒアリング等で国民の意見を聴取しようとする。無意味だ。


  教育は国民のコンセンサスで改革するものではない。教育改革とは圧倒的な人間観や歴史観、文理にわたる教養や国際性、祖国愛など、多くのものが要求される途方もない分野だからである。これまでのどの内閣の教育改革もが失敗し、これからも失敗し続ける所以だ。

(この記事は、「週刊新潮」6月13日号、グラビア「管言妄語」として掲載されたものです。 
 筆者の藤原正彦さんのご厚意と週刊新潮・編集部殿のご尽力により掲載が実現しました。
 藤原さん、週刊新潮殿に感謝致します。 事務局/三輪 )

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