奥山篤信 映画評ドイツ映画『東ベルリンから来た女 Barbara』2012 | 護国夢想日記

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 日々夢みたいな日記を書きます。残念なのは大日本帝国が滅亡した後、後裔である日本国が未だに2等国に甘んじていることでそれを恥じない面々がメデアを賑わしていることです。日本人のDNAがない人達によって権力が握られていることが悔しいことです。

奥山篤信 映画評ドイツ映画『東ベルリンから来た女 Barbara』2012
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やっと本年駄作の後素晴らしい映画に辿りついた。すばらしいどころか確実に年末のベスト10に残る映画であること間違いない。この作品はベルリン映画祭で銀熊賞(監督賞)を受賞した。ドイツ新鋭のクリスティアン・ペツォールト監督による。

この映画は「善き人のためのソナタ」2007と重ね合わせて感慨深い。下記に当時の僕の映画評を添付したが、戦後東西に分裂を余儀なくされた東ドイツの悲劇を描いている。


東ドイツでは戦後ナチスのゲシュタポの残党などが秘密警察の組織をそのまま継承し、反体制を徹底的に弾圧した。ナチスのような物理的な暴力的側面よりも、さらに陰湿な方法で自由を束縛し、精神的に絶望と諦めの閉塞感で、同じ民族の西ドイツの繁栄をまじかに見ながらいわば精神的拷問といえる方法である。


共産主義がいかに理念や唱え文句が素晴らしくとも、一旦組織化された場合権力は牙を剥き、暴力により地位を固め、その新陳代謝がない特権階級の労働貴族が民衆を弾圧する世界に必然的に変わる。


それは20世紀の歴史が証明した。まさにスターリン主義である。トロツキーがこの権力の腐敗を予想して反スターリンの理想で戦ったが結果は反動として抹殺されたのである。民主主義が衆愚政治・弱肉強食とは言え、まだ新陳代謝が作用する点で、理想的な絵に書いた餅である共産主義よりはましなのである。

さてこの映画全編緊張感を冷たいバルト海よりの暴風を象徴として用いながら、愛する西ドイツに住む男性と暮らすために、海外移住届を出した途端シュタージに拘束され挙句はバルト海の田舎町の小児科医院に飛ばされる女医を描く。


彼女バーバラは東ベルリンのエリート医師の努めるフンボルト大学と東ベルリン自由大学医学部系の大病院Charit!) - Universit!)tsmedizin Berlinに努める美貌のエリート医師だった。


彼女に扮するのがニーナ・ホス、身長がありまさにモデルのスリムな体格である。顔はジャンヌ・モローから灰汁の強さを取り切り、あの『あの日、欲望の大地』で僕を陥落させたシャーリーズ・セロンの魅力を湛えたドイツ女優である。


誰も信じられない、四六時中周りの気配を気にしながら、誰とも付き合わず仕事だけする彼女にある同僚の医師がしつこく接近してきた。シュタージの見張り役とみなす彼女はそっけない。一方西側にいる恋人はたまに東に現れ彼女と欲望の火を燃やすのだった。次第に同僚の善意も感じつつも、いよいよ西側の恋人のアレンジする東ドイツ脱出の日が決まった。


そんな筋に伏線として、ある少年院で強制労働キャンプで酷使する妊娠している14歳の少女の治療で彼女に優しい心を開くバーバラ、再度脱走して、よりにもよって彼女の脱出のその夜にやってきた少女・・・ネタばれはやめよう、これ以上!


しかし最後の感動の場面、まさに善きサマリア人に変貌させた神の啓示こそ、彼女の人生の回心の瞬間かもしれない。物語りとはいえ、実際9年後に東ベルリンの壁は崩れ、彼女の行為はきっと報われたはずである。


まさに人間の生き方、それもヨブ記のような不条理な共産主義社会の閉塞のなかで、神の恵みを感じ取った人間が、まさに逆境であればあるほど、人間の品位や善意を限りなく放つことがある。人間は醜悪であっても、捨てたものではないのだ。人間讃歌の映画として見てもらいたい。
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