◆書評: 櫻井よしこ『日本人の魂と新島八重』 | 護国夢想日記

護国夢想日記

 日々夢みたいな日記を書きます。残念なのは大日本帝国が滅亡した後、後裔である日本国が未だに2等国に甘んじていることでそれを恥じない面々がメデアを賑わしていることです。日本人のDNAがない人達によって権力が握られていることが悔しいことです。

BOOKREVIEW ◆書評 ◇しょひょう ▼ブックレビュー ☆
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 朝敵の汚名を着せられても愛と正義の会津魂は消えなかった
  日本人の精神が脈々と会津人士に生きた 
 その象徴が山本八重である

櫻井よしこ『日本人の魂と新島八重』(小学館101新書)
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 本書を最初に手にしたときの意外感。
(えっ。櫻井さんが山本八重に挑む?)
 動機は何なのか、つかみ所がなく、訝しんだ。
 そして読む前の感想とは「櫻井さんの出身が長岡だから会津とは兄弟分。
 そのための近親感だろう」
 という短絡的な先入観だった。


 実際に幕末長岡藩の家老・河井継之助は、
 ガットリング銃を自ら操作しながらも官軍の猛攻に晒され負傷し、
 友軍の会津へ運ばれる途中、只見で息絶えた。
 
 その只見の死亡現場には小さな家屋があって、
 「河井継之助記念館」の看板が掛かっていた。
 三十年ほど前に、中村彰彦と見学に行ったことを急に思い出した。
 
 最近、長岡市内にも河井継之助記念館、山本五十六記念館ができたが、
 これらは蛇足。
 さて本書を読んで、評者(宮崎正弘)の先入観は見事に吹き飛ばされた。

 合点がいった。
 櫻井よしこ女史は、本書を通じて、日本人の魂を、
 その貴重な伝統的価値観の回復を呼びかけている。
 これがテーマの一つである。
 会津人の「愛と正義」は個人を越えて大義を重視した
 会津藩の武士道精神に見られるが、「朝敵の汚名を着せられても大義を貫き、
 敗れても恨むことなく、幾多の艱難辛苦に耐えて」、
 維新後の国家のために貢献した。
 
 その精神の源泉は奈辺にあったのか?
 八重が名誉回復なった戊辰六十年の周期に詠んだ歌が残る


――いくとせか峰にかかれるむら雲の 晴れてうれしき光をぞ見る

 さて鶴ケ城籠城戦を鉄砲をかついで勇敢にたたかった女傑・山本八重は
、敗北後、離婚し、京へ向かった。

 そこでアメリカ留学から帰って同志社大学設立に燃える新島襄と出会い、
 再婚し、しかも基督教へ入信する。
 この精神の軌跡を櫻井さんは、自らの体験と重ねるのだ。
 
 「アメリカに暮らしていた頃の私自身の経験」を語り始める櫻井さんは、
 「ご縁のあったクエェーカーの教会の日曜日のミサにはよく行きました」
 と率直に言う。

 「人間は生まれながらにして平等で、神の愛と受けて祝福されている。
 キリストの教えに従い、善行を重ねることによって人生は全うされるという
 ことを哲学的にではなく、具体的に説きひたすら善き行動を誉めたたえる」。
 したがって「説教を受けるうちにキリスト教徒になろうと思う人の気持ちは
 よくわかる」。


 けれども「日本人の場合、そこから二手に分かれる」と櫻井さんは続ける。
 すなわち基督教徒になりきり「実家の仏教や神道から離れる」組がある。
  もう一方は「どちらも受け入れる」派だ。
 櫻井さんは「後者」であるという。

 「家には多くの日本の家同様、神棚と仏壇を設けています。
 しかし、基督教の考え方も排除しません」。
 しかも山本八重は晩年になると仏教、とくに臨済宗の禅に引かれ、
 茶道に晩年の道を求めた。

 このため「仏教に帰依した」と大騒ぎになった。
 八重は会津の大龍寺に山本家の墓を建てた。
 
 この精神の軌跡を櫻井さんは正確になぞらえ、
 会津の精神の源流を遡及していくのである。
 さてまもなく始まる大河ドラマ、この精神の軌跡を描けるか?
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日本人の魂と新島八重(小学館101新書)
小学館 (2012-12-28)
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