奥山篤信 WiLL-2010年8月号 ● 94 丹羽宇一郎大使で媚中から屈中へ | 護国夢想日記

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 日々夢みたいな日記を書きます。残念なのは大日本帝国が滅亡した後、後裔である日本国が未だに2等国に甘んじていることでそれを恥じない面々がメデアを賑わしていることです。日本人のDNAがない人達によって権力が握られていることが悔しいことです。

奥山篤信 WiLL-2010年8月号 ● 94 丹羽宇一郎大使で媚中から屈中へ
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中国も戸惑う大使就任
 

丹羽宇一郎氏という元伊藤忠商事
社長(現在相談役)が中国大使とし
て推挙され、中国側のアグレマン(承
認)も経て、六月十七日発令された。
 


この人事は丹羽氏による猟官人事
なのか、いわゆる政治主導として外
務省のプロフェッショナルな外交官
ではなく、民間人の起用という民主
党らしい抜擢なのか、表面上からは
よくわからない。
 

しかし、政治的にさほど重要でな
い国家の大使ならともかく、対中国
には重大な問題が錯綜している。


高度の外交的専門性を要する点から、
財界・官界からも大きな疑問符が投
げかけられている。中国側ですら一
時、戸惑っていたとの報道記事もあ
った。


『文藝春秋』七月号に丹羽氏は、「2
015年中国バブルに日本の勝機あ
り」なる論文を寄せているが、その内
容たるや商社マンらしい?イケイケド
ンドン?であり、経済関係こそが政
治を超越するものだとの持論を展開
している。
 

その中には中国の儒教精神、中国
人の大切にする孔子の五常「仁・義・
礼・智・信」を日本側が尊重すれば信
用が得られるなどという、驚くべき
記述さえある。
 

現代中国人に欠けているものがこ
の五常であることは、彼らの行動パ
ターンを見ていれば明らかではない
か。海賊版の野放し、著作権無視な
ど商道徳に欠ける現実を見ようとも
しないのである。
 

そして、中国の共産主義独裁政権
がかかる中国の飛躍を可能にしたこ
とを、見識や批判精神のかけらもな
く絶賛している。まさに、ここに丹
羽氏の中国大使起用の危うさが覗
うかがえるのである。
 

所詮、商売人に節操がないのは仕
方ないにしても、日本国全権大使と
して国家を代表する人間がこれでは
絶対に不適格である。
 

つけ加えると、「2015年中国バ
ブルに日本の勝機あり」の中に、なん
と一九九九年から北京市の経済顧問
を務めているという記
述がある。


まさに、コンフリクト・オブ・イ
ンタレスト(利害の衝突)といえる。
 

もうひとつついでに言うと、丹羽氏はその
著書で「七十歳を過ぎたら全員一線を退くと
いった法律を作ったほうがよいくらいだ」「老
人よ退け、飛び出せ若者」とまで言っ
ており、その本人が現在七十一歳で
今回の人事に色気をだしているのだ
から、まずは同氏の節操のなさを疑
う次第である。

銭に頭を下げる 関西商人は明治維新の混乱の中、
政治に振り回された。その苦い経験から、老舗には政治にかかわるなとの家訓がある。旧家に限って、政治
家を蛇蝎のように嫌う傾向が強い。
 

これは、カネ儲けのために政権が
右になろうが左になろうが関係なく
商売ができるため、つまり、ある特
定の政治勢力に密接に結びつくと、
政権交代、政権内の派閥交代などに
よりしっぺ返しを食らうことを恐れ
るためである。

!)人(商売相手)に頭を下げるので
はなく、銭に頭を下げると思え?と
いうのは、まさに関西の老舗商人
ビジネス道の真髄であるといえる。
 

数少ない例外が、伊藤忠商事の二
代目忠兵衛である。彼は岸信介と

昵じつこん懇の関係であり、岸の御殿場の別
邸と忠兵衛の熱海の別邸との間で頻
繁に交流があった。


伊藤忠商事がグラマンの代理店として、いわば政商
として活躍していたのはこの関係からと想像される。
 

さらに、忠兵衛の孫娘が当時自民
党の実力者河野一郎の長男洋平に嫁
いだこと、岸の満州人脈である瀬島
龍三が伊藤忠入りし、その後中曽根
康弘のブレーンとなったことなど、
忠兵衛の?政商ぶり?は、関西商人と
しては極めて異例だった。
 

政商といえば怪物久原房之助がい
るが、彼は山口県出身であり、関東
大震災もあって、いわゆる阪神間に
大豪邸を構えただけであり関西人で
はない。
 

関西人として立志伝中の商売の神
様、松下幸之助はその企業経営では
不朽の経営哲学を残した。


しかし、彼が政治を変えようとして創った松
下政経塾は、僕の見解では失敗であ
ったと考える。


松下幸之助にはビジネスの哲学はあっても、国家・国民
のあるべき姿の哲学はない。所詮カネ勘定の世界である。
 

要するに、基本的に関西経済人に
政治や外交を語らせることは大間違
いとなるということである。

民間チャイナスクール
 

中国大陸と日本の商社の関係は、
十九世紀末、三井物産の前身となる
三井洋行から始まっている。その拠
点は三井洋行上海支店であった。


当時の中国は「買弁」と呼ばれる企業(通
訳業兼中国側貿易商社)が支配して
いた。欧米や日本の企業が進出して
も、この買弁が中抜きをしてぼろ儲
けしており、海外企業は儲けが少な
かった
 

そこで、三井の山本条太郎(後の
満鉄総裁)や森恪(後の政友会幹事長)
は、買弁を飛ばして直接現地客先と
商売を行った。中国語の堪能な社員
を育て、時には辮髪でシナ服を着せ
て奥地まで出向き、直接交渉したの
である。バルチック艦隊の動勢を上
海支店で?み、いち早く日本に伝え
たのも彼らである。

 まさに、中央のビジネスは関西と
異なり、政治と密着に連携しながら
進んでいくという特色がある。国益
にも合致しているのである。三井・
三菱の哲学には国家があるが、関西
財閥にはそれがない。

 戦後、中国大陸への商売は一変し
てしまう。一九七二年の日中共同声
明後、「友好商社」なるものが現れ
た。


日本共産党の徳田球一の妹とか、
中国共産党の八路軍にいた日本人
が、中国共産党に顔が利くという触
れ込みで中国貿易をリードしたので
ある。その結果、中国側窓口のご機
嫌伺いとなってしまい、また「買弁」
の時代に戻ったのである。

 中国語ができるだけでこれらの「友
好商社」に諂う、いわば民間チャイナ
スクールの誕生である。中国側バイ
ヤーなどをその地位以上に持ち上
げ、粗相があってはならないとまさ
中国万歳の態度で接してきたので
ある(日中友好乾カンペイ杯)。

 まず日本側「友好商社」が持ち出す
のは……。
・目下、お国が進めておられる偉大
な四つの現代化に、我々企業は是
非貢献させていただきたい。
・中国は日本の先生であり、日本の
多くの文明は中国からもたらされ
た。そもそも日本文化の底流にあ
る仏教文化や漢字は中国から来た
もので、これがなければ今日の日
本はない。

・日本で教養の表れとされる漢詩
は、もちろん中国伝来である。自
分は浅学非才の身であり、月落烏
啼霜満天……。
 をほんの少し暗記している程度で
ある。
 

日本人なら誰でも少しは知ってい
張継の詩を、中国共産党の幹部は
ほとんど知らない。そこで、かかる
漢詩を手元の紙に書いて共産党幹部
に見てもらおうとする。
 

その内に無理強いされたマオタイ
酒で頭が混乱し、文脈の不明な発言
が続出となる始末である。

中華世界の一員を目指す
 

以上で分かるように、中国側との
挨拶や会話はほとんど内容のないお
世辞や自虐的なへりくだりばかりで
ある。中国文化に造詣があり、少し
突っ込んだ文明論や文化論などを展
開するレベルの高い幹部など一人も
いないし、いても共産党には通じな
かったであろう。

 現在の中国共産党の日本に対する
舐なめきった無礼な態度は、この当時
の日本代表企業の幹部たち(政治家
も)がとっかえひっかえ訪中しては
自ら共産党に吹き込んだ諂いやごま
すりの結果であると言っても言いす
ぎではなかろう。
 

先方も繰り返し繰り返し皆から同
じことを言われれば、その気になる
のも無理はない。
 

そこにあるのは、全て卑しい商売
乞食根性である。

 伊藤忠商事は、戦後の中国貿易で
日本の商社のなかでダントツの歴史
がある。

 藤野文悟(現在藤野中国研究所所
長・元伊藤忠商事中国総代表・元常
務取締役)という伊藤忠商事の中国
市場への躍進の立役者がいる。


この藤野氏、首相の靖国参拝は中止すべ
きとの意見に加えて、「日本人が中国
と本格的に付き合おうと思ったら、
日本は中華世界の一員になることが
必要です」(『文藝春秋』平成十六年十
二月号)とまで言い切っている。
 

まさに、ビジネス界は上記のよう
恥知らずの売国奴根性と土下座
性で商売を伸ばしてきたのである
もちろん他の商社・製造業も同様で
あって、伊藤忠商事だけではない。
 

丹羽氏の『2015年中国バブルに
日本の勝機あり』を読めば、丹羽氏が
同様の態度で中国側に接してきたこ
とは容易に想像がつく。

丹羽氏と民主党の思惑
 

今日の丹羽氏の大使就任に関し
て、さらに気にかかることがある。
 

伊藤忠商事公表の二〇〇五年CS
R(企業の社会的責任)レポートに
よると、地域発展型の海外ビジネス
展開として、中国では江蘇省、山東
省、南京市、そして米国ではニュー
メキシコ州にて、地域の産業育成に
対して、ビジネスを通じた多角的支
援を行っているとの記載がある。
 

ニューメキシコ州で伊藤忠が何を
展開しているのかとサイトを調べる
と、二〇〇四年に伊藤忠と州政府の
間に包括提携契約を交わしている。

同州は、原爆開発で有名なロスアラ
モスやサンディア国立研究所などが
あり、伊藤忠としてはアメリカの先
端技術にアクセスできるメリットが
ある。

 最も注目を惹くのは、同州の知事
はアメリカの北朝鮮外交で有名なビ
ル・リチャードソンであり、同知事
は特使として北朝鮮を何度も訪問し
ている。


まさに北朝鮮宥和派の代表
であり、北朝鮮制裁に反対する立場
である。ヒラリー・クリントン大統
領リチャードソン国務次官、リチャ
ードソン大統領ヒラリー・クリント
ン国務次官などと、かつて下馬評に
上がった毀誉褒貶のある野心家でも
ある。

 そのリチャードソンを手繰ると、
同知事の外交顧問としてトニー・ナ
ムクンという朝鮮半島出身でバーク
レーで政治学博士号を取得した人物
にたどり着く。アジア関係の専門家・
コンサルタントとして、アメリカの
政財界で活躍し影響力を与えている
といわれている。

 彼の恩師が、アメリカにおける東
アジア研究の権威、バークレーで政
治学を教えてきたロバート・スカラ
ピーノであった。歴代大統領のブレ
ーンとして、アメリカのアジア政策
に大きな影響力を及ぼしてきた。
 

このような人脈を見ると、今回の
丹羽氏の人事は、民主党の主張する
東アジア共同体構想のための中国や
北朝鮮への宥和政策と合致し、伊藤
忠としては鉱山投資ならびに莫大な
貿易取引量が期待され、とりわけ資
源としてのレアメタルへの飽くなき
商権獲得構想が見え隠れする。


米中関係なしには、かかる商圏への期待
はできない。大きな権限を得た丹羽
氏が、民主党と組んで大勝負に出る
と推測してもあながち下種の勘ぐり
ではないだろう。

国家を金で売り渡す

 とにかく、商社マンという無原則
な男(というか損得金銭勘定だけが
原則)が、外交官の心得もなく北京
に赴任したら、まさに北京側のいい
なりで国益無視、経済本位で安易な
妥協をすることは間違いないだろう。
 

歴史認識問題を含め、東シナ海ガ
ス田問題、領土問題、中国の民族抑
圧人権問題など問題は山積してい
る。


それよりなにより、日本に対し
て核弾頭を照準している国家であ
る。かかる難問累積の国家の大使と
しては、外交官としてのプロフェッ
ショナルな知識と経験が必須である
ことは言うまでもない。

 これまでの日本の対中外交が宥和
政策以上の謝罪外交であり、小泉政
権以後、やや主張すべきは主張し本
来の外交姿勢を取り戻したかのよう
に見えたが、小鳩政権により完全に
朝貢外交へと舵は転換された。
 

東シナ海ガス田どころか、やがて
尖閣列島・沖縄に食指を動かすで
あろう中国政府相手に、丹羽氏のよ
うな全てカネで問題を解決する、す
なわち国家の名誉や矜持をカネで売
り渡しかねない大使が、合理主義な
どと称して勝手気ままに行動されて
はかなわない。
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「蘇れ美しい日本」  第1202号


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