『浴場の妻』と「よし田薬局店」店主の縁起 其の弐 | Sancantion【喰(SHOKU)レーベル】アルバムリリース情報!

1967年竣工ですから,常に既に60年近くが過ぎ去っております。往時旅の御方が住居として使用しておった建物がおました。5階建ての集合住宅やったのですが,エレヴェータ無しで,階段ごとに左右にのれそれの住居がある構造の建物でした。

 

その建物の構造は,所謂「雁行型」の住棟になっておりました。「雁行型」というのは, 直列の並びではなく,複数の住宅ごとに建物が斜めにずれて建てられているような構造の住棟のことを言うらしいです。

 

往時の住居は,最上階のちょうど「雁行型」の境目に位置しておりました。自分の住居から見て,左側は直列の関係,右側は「雁行型」の関係で住居がずれておったんです。

 

この場合,直列になっている左側の住居の生活音はそれなりに聞こえるのですが,逆に右側の住居の生活音は全く何も一切聞こえない,という顕著な特徴がおました。

 

 

また,階段を共有している関係で,左側の住居の方とはある程度の面識ができますが,右側の方とは一度たりとも顔を合わせることも会話を交わすことも一切全くありませんでした。言うまでもなく,どんな御方が住んではったのかも(もしくは誰も人間は住んでいなかったのかも)何もわかりませぬ。

 

そげな折です。住居の給湯器が故障した際に,近隣にあった通称『白湯浴場』を利用したことがあったのです。冬場でしたので,入浴後に提供された仄かに温かか白湯が「器官なき身体」に染み渡ったったことを,昨日のことのように覚えております。その白湯は,『浴場の妻』自らが製作したものであった,という話を後日聞いたことがありますが,真偽のほどはわかり兼ねます。

 

また,夏場に『白湯浴場』を利用した際には,斜向いにあった「よし田薬局店」エリエールのボックス・ティシューを購入して帰宅するのが慣例となっておりました。

 

 

おそらく,「よし田薬局店」店主の明石さんも,給湯器が故障した際など『白湯浴場』を利用し,そこで提供された仄かに温かく甘い白湯に魅了された御方の一人であったのかもしれませぬ。

 

転居直後のことなのですが,イカ  のような「声と現象」に見舞われた可能性がおます。その現象は,1週間に1・2度程度の頻度で起きておったような気がします。

 

1. 午前2時くらいに【夜半の寝覚め】が発生した際に,右側の住居の方向から,数匹の動物(猫か鼠かは判然とせず)が走り回っている(互いに競争している)ような音(猫や鼠の鳴き声は一切無し)が聞こえる。音は長くても30分間ほどで聞こえなくなる。

 

2. 午前2時くらいに【夜半の寝覚め】が発生した際に,右側の住居の方向から,あたかも幕の内弁当製作工場(もしくは,綿棒製作工場)で,複数名の作業員の方が流れ作業を行っているような音(人間の話し声は一切無し)が聞こえる。音は長くても60分間ほどで聞こえなくなる。

 

上述の2種類の音は,おそらく同じような割合で,のれそれ発現しておったような気がします。

 

これらの2種類の「声と現象」には,転居直後は(とりわけ「ヒト夏の経験」として)かなり戸惑いました。というのも,この音が聞こえている間は,少なくとも再入眠ができなくなるためです。ところが,いつの間にか慣れてしまったのか,約2か月後には気にならなくなり,約半年が経過して以降は,このような音が聞こえて来ることは一切なくなってしまったのです。

 

 

未だに,あれらの音群は一体全体何であったのかととてたまに気になることがおます。当時は内心忸怩たるものがあったのかもしれませぬが,今となってはとっても懐かしいヒト夏の想い出と言っても過言ではありませぬ。

 

 

今回こげなことを想い出したのも,『浴場の妻』「よし田薬局店」店主明石さんの縁起について思いを馳せたことに端緒があるように思います。この2種類の音に,このお二方が関係していたことは先ず間違いなくないとは思われますが,時期が時期だけにと思い立ち,此所に記させていただいた次第でごわす。

 

因みに,前述した「雁行型」の住棟は,常に既に取り壊されてしまい,今は影も形も現も夢もありませぬ。

 

It is refreshing to take a walk early in the morning.

(朝早く散歩すると,さわやかな気分になります。)