この作品の肝は，何と言っても，太地喜和子さんの金剛摩尼宝頂楼閣級の，とてつもない強度を感じさせる笑いに尽きると言っても過言ではありますまい。
久々にこの作品を通してみましたが，渥美清はんや太宰久雄はん，三崎千恵子はん，笠智衆様，桜井センリはん，岡田嘉子はん，さらには太地喜和子さんまで，出演者の多くが常に既に故人となっている中で，久米明さん（この作品では，兵庫県龍野市の市長役）は何と，現在も現役で活躍しているということに，たいへんに驚愕しました。
いずれにしても，この作品で最高に笑えるのは，寅次郎が旅先の龍野市で池ノ内青観にばったりと出くわす場面です。
青観が市役所の職員と同乗している自動車の行く手に，寅次郎が立ちはだかるのですが，市役所の職員の一人である桜井センリが自動車から降りて，寅次郎を車中に迎えると同時に，自動車のドアは閉められ，寅次郎の鞄をかかえたままの桜井センリを後方に残したまま，自動車は発車してしまうのです。