『日本語大好き キンダイチ先生言葉の達人に会いに行く』
言語学者の金田一先生が日本語を扱う様々なジャンルの達人との対談本。
自分が職業としている「漫才師、お笑い芸人」は日本語を取り扱う職業。この本を読んで各ジャンルの最高峰の人が日本語についてどのような考えを持っているか興味深かった。
元NHKアナウンサー加賀美幸子さんや脚本家内館牧子さんとの会話では
「すごい」「すごく」は元々ぞっとするほど恐ろしい、おどろおどろしいなどを表す言葉、「すごく綺麗」「すごく美味しい」となんにでも使う人が増えた話や、若者が肯定する意味での使う「ヤバい」等の言葉遣いに表現力の劣化と嘆いている事に対して
金田一先生は言葉は時代によって変わっていくと受け止めながらも柔らかく反論しているのが面白い。
落語家の桂文枝師匠との話は同じ芸人として身につまされる思いで読んだ。
この頃のバラエティ番組はひな壇に並んで誰かがおかしなことをいったらみんなで突っ込むワンパターン、いじめみたいなかんじの笑いは見ていて恰好良くないですね。僕は笑いっていうのは恰好よくないといけないなと思います。
詩人の谷川俊太郎さんの話
僕は語彙は数ではなくて質だと思っています。
質は小さい小さい日常の体験を積み重ねることで獲得していくものだと思います。
この話から後に金田一先生がふりかえって反省している
言葉をたくさん知っていることは、デジカメの画素数が増えるのと同じで、世界を正確に豊かに表現できます、などと利いた風なことを言ってましたが、谷川さんのこの言葉はとてもとても強烈でした。谷川さんだから言えるんだよなぁと思いつつ、もう二度と語彙を増やしましょうなどと軽々しく言わないことにしました。
日本を代表する言語学者が日本を代表する詩人の言葉をきいて反省しているのが、どんだけ知識がある人でも日々勉強して素晴らしい言葉はドンドン吸収していくんだなと感心させられた。
糸井重里さんの話
僕はターゲット論みたいなものがあまり好きじゃないんです。伝わる言葉はまとに関係なく伝わるって信じているんですよ。言葉に限らず企画でもそうなんですが「室町時代でもウケるかな」というところからなるべく僕は始めたい。
この言葉はこれからネタを作る上で参考にしたいと思った。
自分の日本語にはあまり自信がなかったのだが、
この本を読んで更に自信が無くなった。
この様な感想文を書くのも普段自分が話す言葉も漫才の中の会話も頭の良い人からは引っかかる部分が沢山あるんだろうなと思った。
だけどそれが今の自分から産むことができる言葉。
まだまだ沢山本を読んで言葉に触れ色んな体験をして自分の語彙の質を上げて行こうと思う。
そして「日本語大好き」とストレートな日本語愛をタイトルにしてしまうほど金田一秀穂先生は素晴らしい方だなと思った。
漫才の達人と対談する
「漫才大好き」をいつか出版したいな。