昨晩は勉強会に参加しました。

以前しょっちゅう開催されてたARNI製剤に関するものです。今回はひさびさの参加となりました。

 

今回は、その主題の前に、この6月からの診療報酬改定について、なかでも生活習慣病に対する国の考え方の解説がありました。

結局は、高血圧、脂質異常症、糖尿病、といった生活習慣病は、最終的に心筋梗塞や脳血管障害、そして腎不全からの透析というコースをたどることが一番社会経済的に問題となる、と。

なかでも国家として一番、医療費の削減に注力したいことは、莫大な医療費の原因となっている透析医療費をいかに減らすか、ということです。透析患者さんは週3回も透析をしないといけなくて、毎回半日もの時間をロスしますので、よほど社会生活、生産活動は難しくなります。そして医療費。

透析導入となる患者は毎年4万人だと。それを2030年には何とか3万5千人程度に減らしたい。そのためには糖尿病と高血圧をいかにコントロールして、透析への移行人数を減らすか、です。脂質異常症も血液ドロドロになり動脈硬化となるので当然腎臓にはよろしくない。高血圧は血管への圧外傷をもたらすので当然ダメ。糖尿病は高血糖が細小血管の損傷をもたらしますので、生活習慣病すべてが腎臓に悪影響なのです。

 

で、主題の講演である、ARNI製剤を高血圧や心不全にどのように使用するかという話につながるのですが、要するに腎臓を守るための生活習慣病コントロールなんだと。もちろん心脳血管障害の予防治療の意味もあるんですけれど、これらの重大な合併症は著しく患者さんの社会生活を障害します。

 

血圧コントロールや心不全の治療で、米国では利尿薬が一番安価なため第一選択となって久しいですが、日本ではそうではありません。それは利尿剤を第一選択にすることは腎虚血脱水により腎機能に悪影響となる可能性もあるからです。(安いから一番いいとは限らないということです。日本と米国では保健医療制度が全く違いますから。)

とはいえ高血圧は腎臓、脳、心臓に悪いことは分かり切っています。溢水状態による高血圧であれば利尿剤の使用は適正です。要はさじ加減です。

 

ARNI製剤にふくまれている利尿剤は、心臓由来の利尿ペプチドであるハンプ製剤に似た作用があり、これは腎機能への悪影響が無い、たぐいまれな薬です。そしてこのARNI製剤、ARB系の降圧剤の成分も配合されていますので、血管拡張作用もあるわけです。

 

降圧剤にはカルシウム拮抗剤、ARB製剤、利尿剤いろいろ、アルファブロッカー、ベータブロッカー、そしてもっと言えば糖尿病治療薬でもあるSGLT2阻害剤、といったものがありますが、それぞれに利点・弱点がありますので、それらをどう組み合わせて患者さんに合わせた処方をするか、というのが内科医の大事な役割となります。

 

国家戦略として透析患者さんを減らす、ということと、この高血圧や心不全の治療薬であるARNI製剤などを上手に組み入れた生活習慣病治療をすることとが、現実問題として直接的にリンクしているのだというのが、今回の勉強会で感じたことでした。

 

腎保護を意識した高血圧治療、心不全治療、これは大変本質的な考え方です。今回講演をされた先生は名古屋市南区の平光ハートクリニックの平光先生でしたが、毎回非常にわかりやすく本質的な内容を話してくれるので、素晴らしいと思います。

今後の診療に反映させたいと思います。