2023.06.11更新

ステロイド外用剤の副作用のエビデンス

アトピー皮膚炎や慢性湿疹など、当院ではステロイド外用剤を主役として用いることが普通にあります。それはアトピー皮膚炎標準ガイドラインというものがあり、それに則った治療をしているからです。

ステロイド外用剤については、いまだになお、その副作用を忌避するあまりに、患者さん自身や、アトピー皮膚炎で苦しんでいるお子さんに対しても、適正な治療をおこなわないで我慢を強いて、結果的に、本来ならばほとんどの症例が20歳までには治る疾患なのにも関わらず、ひどい状態で放置し、難治性の成人アトピー皮膚炎に移行させているケースがあるかと思います。

あるかと思います、という表現を用いたのは、最近では当院にはそういう事例が来ないからです。仮にそういう患者さんが来ても、しっかり標準治療の重要性を説明しても次来なくなるというのがほとんどです。

ステロイド外用剤の副作用は、長期投与であっても適切な使用法であれば全身的な副作用は少なく、安全性は高いことが分かっています。また、眼への副作用はどうかという問題についても、いくつものエビデンスや論文がすでにでており、それらをまとめると、「ランクの高いステロイドを頻回に外用した場合白内障のリスクとなる可能性もあるが、必ずしも関連せず、むしろアトピー性皮膚炎自体が白内障のリスクであり、さらに顔面の皮疹と関連があり、眼をこすったり掻把したりすることとの影響が考えられている。またステロイド外用剤による緑内障の症例報告は多く、ランクが高いステロイドを用いたり、塗布回数が多かったり、塗布期間が長くなったりすると、リスクが高くなる。特に眼周囲に使用した場合、眼圧上昇や緑内障のリスクを高める。ただし、ランクの低いステロイドではリスクは低い。特に眼周囲については、無意味に強いランクのステロイドを用いない、漫然と長期使用しない、ステロイド外用剤で改善後はタクロリムス軟膏で維持することなどが勧められる」となります(マルホ株式会社の資料から引用しました)。

眼の周囲はたとえ皮膚炎を起こしても、適正な外用剤をちゃんと使用すれば、すぐに改善します。いったん良くなったならば、漫然と強い外用剤を使用しないことで、副作用などは発生しないです。マブタは吸収性が高いですから。

しばしばマブタ皮膚炎に対してステロイド眼軟膏を処方することがあります。それで効けば「めでたし」なのですが、効かない場合もあります。なぜかというと、眼軟膏はそもそもマブタというよりは、眼球に塗布する、つまり、眼の中に注入する薬剤なので、非常に濃度が薄いのです。そこで無効の場合には、弱めの皮膚用ステロイド外用剤を用いたり、一時的に強めの外用剤を使う場合でも、薄く塗布して短期間の治療で治れば終わり、とするように対応すればなんら問題ないです。

このあたり、ステロイド剤についての誤解と反ステロイド運動とはいつもリンクしており、そしてそれの論争の仕掛け人は常にアトピービジネス(健康食品や化粧品)会社です。さらにいえば、このアトピービジネスと関連した反ステロイド運動というのは日本だけでの問題で、長々と無くならずに続いているようです。そうです、海外ではこんな運動はほとんどありません。