前回の続き

 

「初心者は楽して勝ちたい、って本音を隠すな」

なーんて意見、格ゲーに不満をぶつけてるところでは必ずと言っていいほど見かける

 

でも、ぼくの中ではこれはずっと疑問で、少なくともぼくは「楽して勝ちたい」と思ったことはないし、それが楽しいとは到底思えないんだよな

 

たとえば将棋でさ、駒落ちで勝ってもあんまり嬉しくない。ハンデもらって勝っても喜べない

 

ゲームで簡単クリアの裏技コマンドがあっても、それを使いたいとは思えない。だから「勝てればなんでもいい」って思考はほんとにしたことがなくて、その感覚からすると格ゲーマーの「とにかく勝ちたいんだろ?」って指摘はずっと引っかかるものがあった

 

なんでそんなズレた言われようなのか、と考えてたんだけど、前回の記事でそれが少し言語化できそうだったので、今回はそれについて書こうかなと

 

今回は便宜上、格ゲージャンルに不満を持つ人をアンチと書くけど、貶す意味や強い意味はないから誤解しないでね

 

 

①アンチや初心者は「勝ちたい」という欲でプレイしてないんじゃない?

 

まず最初の疑問は「そもそもアンチは勝ちたいと思っているのか?」についてだけど、少なくない意見として「勝ちたいんじゃない、楽しみたいんだ」って主張があるでしょ?

 

あれはぼくにとってはすんなり納得できるもので、異論はないんだけど、どうも格ゲーマーには理解しづらいらしいんだよね

 

そりゃ勝ちか負けかなら勝ちたいけど、楽しめる負けなら、楽しめない勝ちよりずっと歓迎できる

 

たとえばぼくはどっちが勝つかわからない接戦での負けは楽しめるけど、レベル差のある相手をボコボコに完封して得られる勝ちにはなんの嬉しさもない。後者は「楽しめない」のがぼくの感性

 

そりゃ格ゲーマーでもおんなじだ!って言われると思うんだけど、たぶんそれでも「勝利の価値、勝利で得られる快感」が根本的に違うんだよ

 

それに起き攻めしてなんぼの2D格ゲーを楽しんでたら、あんまり否定できないでしょう?理想値が起き攻めサンドバックで完封勝利なんだし。でもオセロや将棋で相手の駒全部取って勝つような試合、楽しさある?

 

 

で、たとえばFPSの「バトルフィールド」で説明を試みてみるよ

 

あのゲームは味方が弱いほうが負けるってよく言われる。これは事実で、どっちのチームも上位層の成績ってのはあんまり変わらないんだけど、下位層の成績が悪いほうが負ける。これは間違いない

 

ということは味方運で勝ち負けが決まるってこと。32vs32で個人がどんなに頑張っても戦局はひっくり返らないからね

 

なのでBFスレには必ず「味方がゴミすぎて勝てない」という不満が投稿される。毎作かならず

 

でもぼくにはこの怒りがあまり理解できない、別に大差で負けても怒りも悔しさもほぼないから。中盤くらいには結果見えてるしね

 

同様に大差で勝っても何も思わない。つまんねーとは思うけど、少なくともさして嬉しくはないんだよ

 

味方にキレてる人は、それだけ真剣にプレイしてるのかもしれない。別に悪いことでも何でもないんだけど、たぶんぼくから見れば「勝利の価値がずっと高い」んだろうと思う

 

きっと、少なくないプレイヤーがそういう価値観を持っていて、格ゲーに文句を言っている

 

 

②アンチはどこに価値を感じてるの?

 

価値ってのは要するに快感をどう得られるか?なんだけど、そもそもなんらかのゲームを継続するか否か?は「快感がまさるか不快感がまさるか」が基本的な基準になる。つまらないから途中でやめる、というのは不快感がまさったか、ほかのことより優先するほどの快感を得られなかったか、だと判断していい

 

で、ぼくみたいなタイプのアンチの快感基準は「勝ち負け」の優先度がかなり低くて、代わりに「思い通りの結果を出せる」とか「接戦の興奮」とか、そういうものがまさってくるんだよね

 

結果より過程、と言ってもいいかもしれない

 

格ゲーというのは、多くのプレイヤーにとっては「過程」の段階での快感が少なく、不快感は多いというゲーム構造をしているから(それは悪いことじゃない)基本的に勝ちの快感でひっくり返せないと「どうやっても不快感がまさる」みたいな話になる

 

 

③過程の快感、不快感ってなに?

 

たとえばパターンを読んで対策して上回ったとか、自分の思った通りにキャラが動いたとか、接戦で手に汗握る展開になったとか、そういうときは快感が大きい

 

一方でワンパターンにハメられたとか、思った通りに動けないとか、そういうのは不快感になる。そりゃ誰でもそうなんだけど格ゲーって相手の嫌なことしてなんぼ、されてなんぼだから、ほとんど場合狙った通りにはいかないし、思ったように動けないし、過程では快感がまさることは難しい

 

これは考え方というより、その人の気質に依存するものだから「完璧に勝とうと考えなくていい」とか「初心者は負けて当然」とかいう意見は、正論だけど毒にも薬にもならないな、と思う。単純に言うとそれもズレてる。考えじゃなくて感性の合うあわないなんだよな

 

④でもアンチは勝ちたいと言うやん?

 

いや、それはそうなんだよ。勝ちたいよ、負けるよりは。でもそれが絶対指標でもないし、最優先でもないんだよ。クソハメで勝ちたくもないし、金で勝利を買いたいでもないし「」。でもそれは格ゲーマーが指摘するような甘えじゃなくて、単純に「勝ちたいだろ?と聞かれたらうん、と答えるだけで、別にアンチは勝ちたいと思ってない」が正解だと思うよ

 

矛盾しないのよ、別に。勝ちたいわけじゃないから、過程が楽しけりゃそれでいいから、極端な話勝ち負けはおまけみたいなもんだから。だから勝つために好きでもないキャラ使うとか、勝つためにクソ戦法使うとか、勝つために必死に練習するとか、そういうのを拒否するのよ。その過程が楽しくないから

 

それじゃ勝てるわけないよ、というのは間違いなくド正論。でもそれでいいのよ、勝ちたいなんてほんとは思ってないからさ。下手くそ同士ワイワイやってられればそれでいい

 

ただ格ゲーの構造として「下手くそがワイワイやるのも大して楽しくない」からアンチがいつかないだけでね。友達とスマブラやるのが楽しいのは「友達と遊ぶから」であって、これが見ず知らずの相手だったら途端につまらなくなるのよ、たとえ同じような腕前でもさ

 

 

⑤達成感とか上達が楽しいって、ほんとに?

 

たとえばぼくはダクソとかブラボとか好きになれなくて、それはクリアできないからじゃなくて(クリアはできるんだよ)「クリアの達成感の快感度合が全然強くないから」なのよ。道中イライラしっぱなしで、クリアしても全然嬉しくなかったら、やればやるだけストレスたまるんだよ

 

ヌルゲーやりすぎてるだけなのかもしれんけど、ぼくみたいな器用貧乏な奴は「なんでもできるけど、何一つ極められない」みたいなもんだから、そこそこの壁をそこそこの労力で約束されたクリアをそこそこ楽しむくらいが関の山なんだよ

 

FPSだって人並み程度にはできるけど、それ以上には決してならない。それを向上心がないというかどうかは微妙だと思うけどね(のめりこめるかどうかの差であって、向上心のあるなしみたいな大きな話でもない。格ゲーマーがみんな上昇志向で社会でも成功していくかつったら違うでしょう?)

 

ハードコアなゲームであるほど、達成感より徒労感がまさる。だから過程のしんどさだけ際立っちゃう

 

たとえばモンハンで全然回避できなくて、回復薬がぶ飲みの末にモンスを倒したとするじゃない?ぼくなら「その結果が嫌になってそのクエストをリセットする」んだよ。まぁこれは極端な話だけどさ、理解できないでしょ?w

 

でもぼくの中ではあんまり矛盾しない。うまくいかないイライラ、自信とプライドが傷つくイライラ、いろんなストレス要素がたまりにたまった果てに相手が倒れてもね、そこで快感がないから「不快感がまさる」ことになる。そのまま次に行くと不快感抱えたままのゲームになるからね、せめて目の前の褒美を投げ捨ててなかったことにしたくなるんだよ

 

これと同じ心理が「10敗してつかみとる1勝になんか価値があるのか?」という感覚でさ、負け越してるやん!ってw 要するに負けてるやん、ってなるんだよな。だからアンチが「勝てないから挑んでいかない」って表現はあんまり正しくなくて(一面事実だけどさ)実際のところ「粘って粘って得た1勝にほとんど価値を見いだせないから」みたいなところはあると思うよ

 

じゃあ超がつくヌルゲーだけやりたいのか?それも違って「適度な難易度で適度な刺激」が欲しい。わがままかもしれないけど、アンチが格ゲーに求めてるのはそういうものなんだよな

 

そして格ゲーにそんなものを求める時点で大間違いというのが現実だよね

 

⑥全部逆もしかりでしょ?

 

ここまで読んだ格ゲーマーがいたら「言い訳ばかりで進歩がないやつ」と思うだろうけど、ぼくがしてるのはそういう話じゃなくてさ、快感プロセス、どこに喜びを感じるか?の違いについて分析してるだけなんだよね。価値観じゃないよ?快感

 

なので当然、格ゲーマーの快感プロセスにも公平でなくちゃいけない。そもそもぼくは格ゲーマーの考え方や、喜びの得かたを否定したりしてないけれど、格ゲーというものがすべからく内包している構造からすれば、格ゲーマーの喜びは「勝利すること」「成長を感じること、できなかったことができるようになること」なんかになるでしょう?

 

で、これらは当然正しいんだよ。それを理解したり受け入れたりしないのはアンチが悪い。格ゲーマーもアンチがなにを欲しているか理解してないし、アンチも格ゲーマーのそれまったく理解していない

 

そして自分の感性や価値観を勝手に相手に当てはめて断罪する。そしてそれが致命的にズレてる

 

だから格ゲーマーとアンチはまったく話がかみ合わない

お互い無限に独り相撲やってるようなもんだからな

 

格ゲー不満スレみたいなとこいけば「そんなこと言ってねぇよ」の応酬になってるのもうなずけるというか……

 

アンチの心情や感性を説明したけど、逆もしかりで格ゲーマーにも格ゲーマーの独特の心情や感性があって、それはそれで正しいし、決して否定できるようなもんじゃない

 

ただ、どちらがマジョリティか?マイノリティか?的な話をすれば、アンチ的な、いわゆるライトユーザー的な人が大半を占める

 

これはプレイヤー人口のピラミッドでも説明できて、要するにストイックに、ガチになれる人は「少数派」で、必然的にそうでない人が「多数派」を占める。格ゲーはその他のゲームに比べると過程の快感が少ないし、ストイック(もしくはマゾ、変態)でもなければ着いていけない構造をしているから、必然的にニッチジャンルになるのは避けられないんだよね(プレイする分には、だよ。見る分には別)

 

もし世の中の多くが勝利に強い快感が得られて、自分の成長になによりの価値を見出せるなら、世の中のほとんどの人がスポーツ選手目指して毎日特訓してるだろうよ。でもそうならないでしょ?そこに快感を得られるのは少数派なんだよね

 

だから格ゲーが現状の「真剣勝負以外に価値が設定されていない」ゲーム構造である限り、小手先の対策でユーザーがいつくわけがないんだよね。ほとんどの人はそのストイックさについていけないから。間口広げるかニッチジャンルとして先鋭化させるかはゲーム会社とユーザーの考え方次第だけどね

 

⑦結局どうしろと?

 

なにもないよ。格ゲーの間口を広げる(典型例はスマブラ)か、先鋭化させるかは単なるビジネスモデルの話でしかないからね。弾幕STGみたいな超絶初心者お断りの世界だって、先鋭化させるビジネスモデルでやっていけてるんだし、逆にスマブラみたいにライトユーザーを受け入れることに腐心して生きているゲームもあるし、どっちがいいとは一概には言えない

 

ただ方向性定めないままに熱帯整備とかトレモ拡充とか小手先の対策してもあんまり意味はないと思う。アンチやライトユーザーはトレモなんか一切楽しめないし(ぼくもあれをひたすら繰り返すモチベがどこから出てくるのか理解に苦しむ)見ず知らずの人間と同格バトルとかしてもそんなに楽しくはないんだよ

 

熱帯あるから環境いいだろ!ってのは間違いじゃないけどさ、ゲーセンでサンドバックになるよりマシくらいの意味しかなくって、別に楽しいと思ってやってないよライトユーザーは

 

実際どうなのか検証もかねて、スマブラのオン対戦(終点アイテムなし)に50戦くらい潜ったのよ。腕前は強すぎず弱すぎず同じくらいだし、レート上がったし勝ち越してもいるんだけどさ

 

これが思った以上に楽しくない……

 

瞬間的な楽しさはそこそこあるんだけどさ、不快感のほうがまさっちゃうんだよどーーーしても。そんで「勝ち越してるkらいいじゃん」って思いたくても全然納得できないんだよ

 

なんでって

 

ぼくが格ゲーに向いてないから

 

以上でも以下でもないわこんなもん。スマブラはなんにも悪くないんだから

 

だから同じことで、現状の格ゲー環境じゃアンチが楽しむなんて無理な話で、そもそも格ゲーに参加すんのが悪いんだよ

 

自分に合わないから界隈を住みやすく変えよう、なんてのは住人(格ゲーマー)にとっちゃいい迷惑で、その点に関しては格ゲーマーの主張が正しい

 

だから格ゲー環境に文句があるアンチがいたら、優しく「君は気質がそもそも向いてないからやめときな」ってさとしてあげてほしいんだよね。勘違いして合わない世界に入り込むのは苦痛で仕方ないもん。格ゲーマーだって迷惑でしょ?

 

今後ライトユーザーを獲得して格ゲーを広げていきたい、と考えるならそれは愚策だけどね。現状で満足してるなら(少なくとも刹那的なユーザー目線でなら)向いてない新規を追い出していくのはある意味優しさかもしれないと思うよ

 

 

結論

 

アンチは自分の気質が格ゲーにあってないことを認めてさっさと引け。格ゲーマーにライトユーザーの感性を求めるな

 

格ゲーマーは自分が少数派でニッチだと理解しろ。ライトユーザーに自分と同じ感性を求めるな

 

おわり