ちまたで話題のごんぎつねを改めて読んでみたら、どうしてもブログに書きたくなってしまった。
確か、小学校の読書感想文の課題が、ごんぎつねではなかったかと思う。話の内容は、すっかり忘れていたが、ごんぎつねは、何故か心の奥底に引っかかっていた。数十年経った今、ようやく宿題を片付けることができそうだ。
まずは、気づいた点をただ羅列していく
〈ひとりぼっちの小ぎつねと、いたずら〉
・孤立によって、ごんは、いたずらをするようになったと思われる
・ごんのいたずらは、生まれついての悪癖のようだ
・人間は、罪と一緒の存在であることの暗示
・作者自身がモデルと思われる
〈「ごん」という名前〉
・権という漢字には、仮の姿という意味もある。人間のあるいは、神の化身を匂わせる。
・キツネ一般ではなく、名前をつけることで読者が感情移入しやすい
〈六地蔵〉
・輪廻転生の思想
・ごんは、人間になりたいのではないか
〈きつね〉
・お稲荷さま 稲の神様 生命の源
・擬人化した狐により、人間も動物の仲間であることを表している
〈秋の出来事〉
・収穫の時期から、悟りを連想させる
・麦、稲(狐)、イワシ、くりといった食物がキーワードになることから、自然の円環(食べる、食べられるという関係)を想起させる
〈山、城、村、絵画のような自然描写の豊かさ〉
・人間も自然の一部であるとうことを、俯瞰して見せることで、大いなる自然を連想させる
・赤、白、黒、黄色などの色彩の表現
〈ごんのいたずら〉
良い行いをする人への嫉妬 兵十には母がいるという嫉妬 人間への憧れ 孤独からくるさびしさ 長雨で閉じこもっていたためのストレス
〈自然と感情との対比〉
・雨上がり→盗み ・水があふれる→ストレスがたまっている状態
・いい天気→改心
・月のいいばん→お念仏に出会う ごんは神様になる 闇夜ではない 暗い世の中を照らす月明かりが、光明を表している 良い行いをして精神状態が安定しているごん 自分が神になりつつあることに気がついていない
〈ひきあわない〉
いい事をしてやっているという、おごった気持ち
〈ごんが撃たれる日の天気は描かれていない〉
死は何の前触れもなく突然訪れるという暗示
〈作品のよさ〉
幾通りもの解釈が成り立つのがよい作品ではないか
〈児童文学〉
・教養の有無、知的レベルの上下、年齢に関係なく広い層に読まれる
・平易な言葉を使うことで、より普遍性をもつ
・短い文章なので、何度も読むことができる
・無駄な表現を省くことで、読者に考えさせる間を与える
〈いたずらの内容〉
・兵十にとっては困ることだが、魚の側から見ると助けられている
・殺されるほどの罪ではないが、兵十にとっては、かなり必死だったので、ごんを殺したいほど 恨んでいる。
〈なぜ殺したか〉
上記の恨みがあったので、復讐心から、カーっとなっている。迷わず鉄砲に弾をこめている。ひと呼吸おいていれば、殺さずに済んだ。
〈鍋で煮ていたものをあえて描かない〉
葬式を表すだけのものなので、中身は話に重要ではない。むしろ、「煮える」という表現が、胸騒ぎがするという状態を表している。負の感情がごんの心の中に、ふつふつとわきあがっている。
〈兵十の母の死〉
・ごんは兵十を仲間と認識する
・人間は、仲間にだけ優しいものだという、心の狭さを表している
〈彼岸花〉
・仏教では、この花を見ると、悪業から離れるとされる
・人が通った後踏み倒されている→おのれは、罪を持った(煩悩から離れられない)存在であると認識できない人間を表している
・どんなに有り難い教えが目の前にあっても、その教えに出逢える人と出逢えない人がいる。
・ごんは、この花を見た後、改心している
・「人がよい行いをするのは、その人がよいからするのではない。そういう因縁で行っている。悪業もまた然りである。」という、浄土系の思想を思わせる。
〈なぜごんを殺したか〉
・ごんは、死によって神(仏ブツ)になった。輪廻転生の思想で言えばハッピーエンド
・罪とがのある身だからこそ、救われるという、浄土系の思想からきているのではないか
・兵十も復讐心から罪を犯してしまう。人間は罪を犯してしまう存在。良い行いだけをすることは不可能。
〈いわしを盗んだ事件〉
・人間、良いことをしているつもりで、実は当人が迷惑がっているということは多々ある
・良いことをするのにまだ慣れていないごんは、反省し、以後同じ失敗をしない
〈なぜ小学校の教科書にのったのか〉
戦争反対、死刑廃止、銃規制、自然保護等、様々な団体が利用しやすい内容
〈作者〉
18歳の若さでこの作品を書き上げたとは驚くべきこと
〈ひらがな表記のやさしさ〉
ひらがなと文体から、作者の優しさと温もりが全体に感じられる
〈唐突に訪れる死の結末〉
・ごんが撃たれるシーンは、簡素で短く描写されている
・死はいきなり訪れるという暗示
・前半の絵画的、豊かな自然の明るい表現とは対照的に、淡々と描写することによって、より一層悲しみが増す
・悲劇的な死によって、何とも知れぬ感情が読者に沸き起こる
この感情をどう受け取るは、読者次第である
〈登場人物〉
語り手の茂平は、兵十ではないか。
ごんは、作者自身ではないか。
そして、登場人物全て作者自身であり、読者ではないか。
まとめ
ごんぎつねという作品に、また出逢えたことに感謝したい。この物語を通して作者の新美南吉と会話できたような気がする。
人間は、悲しみを背負った存在である。しかし、それを知る事で、また、生きることと向き合うことができるような気がした。