久々にオペラのお話ひらめき電球

愛車アテンザに乗りながら爆音でこのDVDを聴いていたら
感動しちゃって、思わず涙が出てきました。

紹介するのはこのDVD。
定価は高いのだけど、この演奏は本当買ってよかったなと思いました。
それほどまでに心が動かされた名演奏なんです。







フェドーラ・・・ミレッラ・フレーニ
ロリス・・・プラシド・ドミンゴ
以下省略・・・

演出・・・ベッペ・デ・トマージ(よく藤原で演出してました)
指揮・・・ロベルト・アバド(クラウディオ・アバドの甥)

1997年4月メトロポリタン歌劇場LIVE収録



『フェドーラ』とは・・・

原作『フェドーラ』は『トスカ』の戯曲を書いたヴィクトリアン・サルドゥの作品を
ジョルダーノによってオペラ化されました。

『トスカ』同様、プリマ・ドンナ作品となっているのは、作家サルドゥが女優ベルナールを慕っていたからなのですが、この『フェドーラ』を演じることというのは並大抵の役者では表現することのできない難役かと思われます。


簡単なあらすじを書くと・・・

フェドーラには婚約者がいたのですが、その婚約者が殺されてしまった。その殺したと思われるロリスに事実確認をするために近づくのですが・・・
そのロリスのことを愛してしまう。
ロリスは確かに婚約者を殺したのですが、それは彼の妻と不倫関係にあってその現場を取り押えに行ったときに、先に発砲されたため、自己防衛のために撃った弾が当たって亡くなってしまったのだと言う。

ロリスが婚約者を殺したという話だけを先に聴いたフェドーラは彼を告発してしまいます。
全てを聴いて、告発を取り下げようとしたのですが、時すでに遅く、ロリスの兄が殺され、そのショックで母親も亡くなってしまう。

告発した人物を探すと躍起になっているロリス。それがフェドーラだと知り、憤るがフェドーラは毒を飲んで、自らが死ぬことで許しを乞い、物語は幕を閉じる



プッチーニと同じ時代のジョルダーノは『アンドレア・シェニエ』という名作も出しています。
女遊びが盛んなプッチーニに対して、本当に愛する人と結婚をしたジョルダーノ。

だからこそ『アンドレア・シェニエ』の「愛の勝利だ!」という言葉に音楽をつけるように
この『フェドーラ』でもすれ違いによって命を落とす、可愛そうな女性像ではなく

最後まで愛の信念を貫き通す女性像を描いてます。

ジョルダーノもワーグナーの音楽に感化を受けた一人で
手法はライトモチーフを用いた作りとなっています。

そのモーチーフに流麗なイタリア語が歌唱されています。

このオペラでの有名なアリア

「愛さずにはいられぬこの思い(Amor ti vieta)」

わずか2分ほどのアリアなのですが、とてもキャッチーで
この作品を締めるとても美しい旋律(ライトモチーフ)です




②フレーニ十八番・フェドーラ

世界のミミとも言われているフレーニですが、このフェドーラ役も彼女なくして語ることのできない役かと思います。

フレーニは発声練習を怠ることなく、常にコンディションを整える歌手で
20代でも60代でも変わらぬ歌声を保つことができるのは日々の鍛錬が
あるからだと思います。

フェドーラに求められるのは多くの葛藤

まずは婚約者を殺した相手に報復をと考えつつも、ロリスの魅力に惹かれ葛藤する場面
これは有名な『間奏曲』で演技だけで表現されます。

正に名演技です。




この間奏曲でためらいつつも、ロリスが婚約者を殺したという告発文を警察長官に書き
後でくるロリスを引き渡すよう部下を手配する。

しかし!!

ロリスが来て、話をしていくと実は婚約者が不倫をしていたという事実を知り、ロリスもまた被害者であることを知る。

ここで再びフェドーラに葛藤が起こる。帰ろうとするロリス・・・
彼が外へ出たら投獄されてしまう。フェドーラは「本当に愛しているのなら、どこにも行かないで欲しい」と彼に懇願します

すみません。このDVDの動画はありませんでした。
ただ、カレーラス、フレーニの『フェドーラ』もかなりの名演です!!





そもそもこのライブ収録はフレーニのニューヨーク市名誉市民の表彰もされる
なんともアメリカらしい演出の公演なんです。
2幕終了後、フレーニは表彰されますが・・・

表彰されたフレーニはここで聴衆に一言・・・
「このあと三幕も歌わないとならないので」と言葉を残して
楽屋に戻ります。フレーニのプロ意識を感じます。


っていうか、メトロポリタンも何故に2幕の幕切れに表彰をしようとしたのか
歌い手にはこれからクライマックスという場面だというのに
ちょっと感覚が分かりませんね。




この『フェドーラ』が名演となっているのは

フレーニだけでなくドミンゴの存在も大きいのは言うまでもないかと思います。


ドミンゴは高音は弱いものの、中音域のテクニック、特にこういった語り調が多い作品において、色気を出すことのうまい歌い手でもあります。そして容姿がカッコイイだけでなく演技も究めてうまく彼の演奏に取り込まれてしまいます。

この二重唱は、ロリスの兄と母親が死んだことを知らされたロリスが告発したのは誰かと憤る中、その感情を見つめ葛藤するフェドーラの演奏。

二人の名演奏です。





フェドーラLASTシーン。毒を飲んだフェドーラ。
彼女が何故、毒を飲んだのか!?

それは家族を失ったロリスの辛い気持ちが分かるからこそ(裏切り者ではあったが、フェドーラは婚約者を殺された)

そして、ロリスにとって自分は殺したくなる存在であるのだが、彼を犯罪者にしたくないという
強い愛情


死をもって許しを乞うフェドーラ。その彼女の愛情にロリスは彼女を失いたくない気持ちへと変わっていきます。
生気を失っていくフェドーラの変わっていく様子、彼女の愛情によって気持ちが変わっていくロリスの表現は本当に素晴らしく

二人の演奏に心を奪われるし、何より切なすぎます。

ただ作曲家ジョルダーノは「愛と死」を持って愛の絆の深さを表現したいのだなと感じます。


ヴァイオリンによる「愛さずにはいられぬこの想い」のライトモチーフが頻繁に流され、
改めて愛の悲劇であると認識していきます。



ちょっとマイナー作品ですが、お勧めしたいオペラの一作品であります。

ラスト場面はスカラ座でのドミンゴとフレーニ。
(映像がありませんでした・・・)