名称が「宅地建物取引士」になってからの数年で、約3〜4万人も受験生が増加していますが、名称変更されたからといって「不動産業界」の受験生が一気に増加するわけではありません。
なぜなら、不動産市場全体における宅建資格需要・受験者数というのは(学生や不動産会社の新入社員が取得されるケース等)、対バブル期比で減少しながらも一定率で安定しているからです。
ここ数年、受験生増加の一因と考えられているのは、税理士、司法書士、行政書士、中には現役の弁護士の方々が宅建を受験されるケースです。
士業の方々が宅建を受験される理由の一つに、業務において「不動産売買の依頼を受ける事例」が関係しているといわれています。
士業のクライアントには裕福な方もおられますから、中には桁違いに高額な不動産売買の依頼を受けることもあり、そういった場合に「案件を不動産会社に紹介するのではなく、自分で扱う※」ために、宅建を取得されるわけです。
売買などで宅建業者が受け取ることができる「報酬額」は取引価格に比例するため、士業の「1年間分に匹敵する報酬」を、宅建業者がたった「数件」の取引だけで得るケースは珍しくはありません。
※行政書士などの士業は不動産会社の専任宅建士として登録することは出来ません(士業と専任宅地建物取引士の兼業についての要件判断は各都道府県ごとに異なります)。
宅建試験の難易度は、10年以上前と比べて徐々に上がっているように感じます。
2018年度宅建試験の合格率から考えてみます。
全体の合格率と「5問免除」の受験者の合格率の差は、
全体の合格率:15.6%
5問免除の受験者:20.6%
一般受験生のみの合格率は「14.06%」になります。
この「14%」という合格率の中には「真面目に勉強されていない方」もおられますが、それ以外にも、例えば行政書士試験合格後に受験する方や、司法書士、税理士の方や、それら資格試験受験生、また現役の弁護士の方も含まれているわけです。
そう考えると、全くのゼロから宅建受験される一般受験生の合格率は上記の「14%」より当然低くなります。
よく宅建は「簡単な資格」と言われることがありますが、正確には、
「他の士業国家試験と比較した場合、相対的に簡単な試験」
であり、民法などが初学者の方や資格試験の経験が無い方にはハードルが高い試験だと思います。
受かりそうで受からないライン、
「合格点までの僅か2〜3問」
、を積み上げることが厳しい試験です。
宅建試験でも、
「たった1問」
、の正解数を積み上げるために、
「基礎基本」からもう一度全て積み直さなければならない、という点は、
『他の国家試験』と同様です。