中学や高校卒業の学歴で事業を起こして成功された社長さんの話で 「世の中で成功するのに学校での勉強は関係ない。俺は中学しか出ていないが一人で成功した」 「金稼ぎに学歴は要らない。大学卒業のやつでも使えないやつが多い」 という声をよく聞きます。 果たして本当にそうでしょうか? 仏教用語で 「ワンネス」 という言葉があります。 これは自分という存在は自分の認識できる世界の中の一部、 つまり世界の中にある存在はまとめてひとつ、という考え方です。 この世界はワンネスという観点に立つと 確かに その中にある人やモノ、縁に自分から好意的に働きかけて
「多くの人、モノに対して友好的になる人」
は人やモノから感謝されますからお金や他人との心のつながりは得られます。 イチロー選手のような才能のある人でも 彼とつながっている人の縁、運がなければ 彼は成功しなかったでしょう。 特にすでに亡くなっている元オリックス監督の仰木彬さんに目をかけてもらったのが大きいでしょう。 ですから前述の社長さんたちはご自身の努力以外に 「目に見えないもの」の力に助けてもらったことを忘れてはいけません。
 
ただし、そういった人とのコミュニケーションをとることに不得手でも
より多くの人のために役に立つような製品やアイデアを開発し世の中に提供して成功を収める方もいますから
これも人に親切という形をとっていると捉えられます。 つまり「人との縁作り」も大事ですが 「学力をつけて高度な教育を受けること」も大事だということです。 しかしながら前述の社長さんたちのように 「学歴は要らない」 と子供たちに話す大人がいて 子どもたちが 「ふーん、嫌いな勉強をしなくていいんだ」 と勘違いしていると思われるケースがあります。 (将来のことを自分でしっかり考えている子供はそういう言葉には惑わされません) 現に教育現場では 大学入試における一般入試の受験を避けて ランクを落としてでも「推薦」で入ることを希望する高校生が急増しています。 推薦の基準を満たすには学校の成績がモノをいいますから 一概に「楽をしている」とは言えませんが リスクを冒すことを避けていることを選択しているといえます。 昨年度、私の子どもが通う中高一貫の私立高校で進路説明会があり 東京理科大学の先生がお越しになり、 入試の現状をお話しくださいました。 一般入試で合格して入学してきた学生と推薦で入ってきた学生とは 能力的に偏差値で言うと 15くらいの差があるそうです。
 
学校教育における成績が世の中で役に立っていないように思われるのは
「何のために学ぶのか?」
という意義を大人が子供にきちんと語ってこなかったからというのも原因と考えられます。
 
やはり世の中の仕事の中でも資格試験が必要な医者や弁護士、その他調理師など専門的な仕事は
お客様、患者、クライアントにとっては
知識が乏しい人より知識が豊富な人の方が役に立ちます。 医学部の入試で9割以上の得点が必要とされるのは 医者が「絶対に間違いがあってはならない職業」 だと認識されていることは想像に難くないですね。
 
そういう意味では
「学校の成績なんて」 という考え方は片手落ちで 視野が狭い人の考え方と言わざるを得ません。 私は就職活動をする学生には 「興味を持った会社の社長がどういう人間か見極めろ」 と言います。 それにもかかわらず「休日が多いか」とか「給料が多いか」とか「残業がないか」 など「与えてもらうことばかりの自分目線」なんですね。 「大学出のやつは使えん」 という考えの社長の会社に大学出の若者が入社したら悲劇ですよね。 会社を成長させたいならば いろんな人のいろいろな能力をいかにうまく利用できるかを人の上に立つ人は考えなければなりません。 自分のエゴは一旦脇において 「利益を上げるための最適化」 を考えなければなりません。 バランスが必要なのです。
「自社のリソース(人、モノ。金)をを世の中のために役に立てるように使いこなせたかどうか」
がポイントです。 話を戻しますが 人は何かチャレンジすべき時にそこから逃げてやり過ごすと その後の人生で形を変えて試練がやってきます。 人間関係がイヤで転職を繰り返す人は 職場を変えてもその人にとってはイヤな人が必ず現れますし 受験勉強から逃げた人は 「自分は頑張れなかった人間だ」 というセルフイメージが付きまといます。 前述の社長さんたちは 「学歴なんかなくても・・・」 と口で言う心の奥には 「学歴がある人にバカにされたくない。 そういう人間に対して優越感を味わいたい」 という深層心理があることが見え隠れします。 私は自分の子どもが中学受験をすることに対し 誘導は全くせずできうる限りの支援をしてきました。 それは子どものうちに 「自分の力で何かを勝ち取った経験」 をさせてやりたかったからです。 勉強が嫌いな子は嫌いで構わないのですが それならばスポーツなり音楽活動なりボランティア活動なりで 「自分が輝ける場所」を探すのを 大人が手伝ってあげてほしいのです。 大人になってもやりたいことが見つからずただダラダラと流されるままに生きている人が多いと聞きます。 「自分の人生これくらいでいいや」 というのは「満足ではありません」 それは「諦めです」 行動するのが怖くて恐れを抱いたまま思考の段階でぐるぐるしている人や逃げる人は 人として生きるための筋肉が筋疲労しています。 自分が人生でやりたいことが100個言えますか? 50個も言えなかったらポジティブに物事をとらえられるように思考をチェンジした方が良いと思います。