私がなぜ海外で挑戦したいのか? | Japanese Bartender's Blog

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日本を離れ海外でバーテンダーとして生きております。
現在は香港(Hong Kong)で落ち着いております。
日本のバーテンダーやバーを愛する皆様に少しでも情報を発信できたら嬉しく思います。

先日、月刊九州王国さんの取材を受けさせていただきました。
私は日本を離れてもうすぐ5年です。今回の取材であらためて自分の志していることを思い出した瞬間でした。「なぜ日本を離れたか?」ということをもう一度自分に問ういいきっかけとなりました。
今回はあらためて自分がなぜ日本を離れたかということを日本語で書かせていただこうと思います。

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日本にいる多くの若いバーテンダーが持つであろう夢は「独立」だと思います。

なぜ自分のお店を持ちたくなるのかというと、それは100%自分自身の持つコンセプトやイメージをお店やお酒に表現したかったからというのが一番大きな理由だと思います。もちろん違った理由で独立する方もたくさんいるでしょうが、大半はこのような理由だと思います。
これは海外のバーテンダーはなかなか持たない日本の技術者ならではの素晴らしい思想と傾向だと思ってます。(海外では多くのバーテンダーの地位はウエイターと変わらない位置づけです。もちろんプロフェッショナルもいますが比率からするとかなり少ないです。)
雇われている間は簡単には自分の思い通りの100%のお店は造れません。 
ご来店するお客様に自分の理想とする形でお酒やサービスを提供できるようにしたいと思うのはサービス精神を持ったバーテンダーであれば持ってもおかしくはない普通の考えだと思います。 
しかし・・・ そんな素晴らしいサービスマンが日本には多すぎるのです。
今の時代の現実をみると、そこら中にたくさんのBARが溢れ開店するお店も多ければ閉店するお店もたくさんあります。
この飽和状態のせいでたとえ老舗のBARであっても経営難に陥ることもあり得てしまうのです。 

やろうと思えばBARなんて誰でもオープンできるのです。 
開店資金さえ調達すれば様々なやり方でお店のオープンはできます。 
お店と人とお酒があれば、そこはBARと名乗れるわけですから。 
日本の営業許可なんて取るのは非常に簡単です。開店するということだけに関して言えば障害なんてほとんどないに等しいくらい簡単です。

近年はバーテンダーとして修行をした人だけでなくいろんな人がいろんな形でバーをオープンさせています。
でも顧客数はそれに比例して増えているわけではありません。
当然経営の苦しくなるお店は出てくるでしょう。

日本には素晴らしいバーテンダーがたくさんいるのに、そんな素晴らしいバーテンダーでもお店の経営に苦戦するケースは少なくありません。
世界的に見てこんなにバーテンダーのスキル、知識、意識が全体的に高い国はありません。
これまでにもコンペティションなどの世界では日本の実力を結果として出せてはいると思います。
でもトータルとしての日本のバーテンダーの実力はまだ世界の人々には知られてはいません。日本に多くいるレベルの高いバーテンダーは世界に通用すると私は思ってます。
現場でサービスをする戦力としてのバーテンダーの実力を世界に知ってもらいたいというのが私の一番の思いです。そしてそれが日本を離れた一番の理由です。

自分が子供の頃、日本サッカーのレベルはかなり低く見られていました。当時はプロ野球も大リーグと比較すると小さな存在でした。その当時はほとんどの人が今のような欧州リーグや大リーグで日本人がトップレベルで活躍するなんていう未来を想像していなかったでしょう。でも大リーグに野茂が行って、欧州にカズや中田が行って世界のプロリーグが日本人に注目し始めました。
日本国内では野茂よりも活躍をしていた選手はたくさんいました。でも海外のスポーツチームオーナーたちはそれまで日本人選手なんて誰も見向きもしていませんでした。
実際に見ることもできない、比較もできないようなところでどんな活躍をしようが彼らには届きません。実際にそこに行ってそこの人たちを相手に結果を出せなければ評価や比較のしようがないのです
親善試合やオールスター戦やイベントのゲストとかで行くよりも、1シーズンを1選手としてその国のリーグを戦わなくては実力なんて評価してもらえないと思うのです。そこでどれだけ戦えるかで選手としての評価が変わってくると思うのです。
スポーツ選手だけでなくバーテンダーも同じです。
実際に世界のお客様にお酒を提供しサービスしていかなくてはバーテンダーとしての実力なんて証明できません。評価してくれるのは審査員でも自分でも上司や先輩でもありません。お客様です。世界のお客様に日本人バーテンダーの実力を知ってもらわなくてはなりません。

私はそんな想いを胸に日本を離れました。

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5年前に日本を離れたときには英語もろくにできず右も左もわからずに海外に出てきました。途中いろいろな問題もありました。
日本を離れてから5年間に得た経験や価値観の変化は日本で10年間に得たものより遥かに大きかったと思います。そしてまだまだこれからも海外でやっていくことで大きなものを得ていけると思います。
一人でも多くの日本人バーテンダーが世界で活躍してくれることを願ってます。
そして日本独自のバー文化が世界に認めてもらえることを願ってます。

日本を離れてからこれまでの間多くの方に助けていただきました。
お客様、先輩、友人、仲間、同僚として力となってくださった皆様。 
あらためて皆様に心から感謝を申し上げたいと思います。

今後も日本語での記事をたまには書かせていただこうと思います。