藤岡弘、探検隊で皆さんがご覧になった、アフリカのスルマ族による儀式(スティックファイト)はね、まさしく戦いですよ。


部族同士の威信を賭け、お互いが勇者を出して代表として棒で叩き合い、戦う。


選ばれた若者は名誉であるし、勝利したら部族中の女性達の羨望の的になり、夫の候補として選ばれる。勝利しなかったら大変な汚名を着る。大変な責任だ。


ハンパな戦いじゃないんだ。勝つ負けるの次元を超えて、生きるか死ぬか。そこには見栄も何もない。


あれは、今までに相当な数の若者が命を落としている可能性がある。


それでも毎年止めないで、儀式として若者が挑戦する。


考えさせられたのは、このスティックファイトという儀式によって部族の若者が目的を持って生きているということ。


ただ食べて出すだけの日々ではなくて、勇者として真の男になる為、男としての誇りを持って賭けをするということだね。


それを周囲が注目して男であるかどうかを見る。


選ばれた男になる為に自分を磨く。


真の男になれるのか、なれないのか。


全ての女性から監視されるというのかな。


また、たとえ勇者に選ばれなくても、それまでの間にも選ぶための戦いがあってまさに命賭けなんだ。


これは、男達が通過しなければいけない儀式というか道なんだよ。


日本では、成人式というとセレモニーが終わったらもう君は成人だ、OK、となるけど、この部族の若者達は儀式である戦いを通過しないと男として、成人として認めてもらえない。


だから部族に生まれた以上は、この儀式を通過し戦わなければならない。


戦いの儀式を見てみると、エネルギー、体力を消耗しながら本能のままに叩き合っていた。


まさに、動物だね。つまり体力のあるやつ、打たれ強いやつが残る。忍耐力、持久力、集中力が試される。


だから、彼等は戦う前に凄いことをする。


なんと、牛の首から血をぬいて、血と牛乳を混ぜて飲むんだ。


あれは驚いた。いくらなんでも飲めたもんじゃない!!


しかも、それを旨そうに全部飲み干す。そして飲んだ後、形相が変わってくる。


…ところで、彼等のスティックを使って私が演武をして見せたら部族の若者がびっくりしてね。


というのは、部族の戦い方には「技」がないから、私の「技」を見て、彼等は驚いたんだ。日本の武道は相手を暴れさせてポイントを突く、という技を持っている。まさに急所だけを狙い無駄なエネルギーは使わず無駄な動きをしない。


これが日本の武道とスティックファイトの違いだ。彼等は急所を知らないわけだから。


だから、私が今この部族に入ったらもしかしたら儀式を通過できるかな、とは思った。彼等に襲われたとしても命懸けで守れるかと考えさせられた。


つまり、それが日本の武道の凄さなんだ。冷静沈着であり、長い歴史に培われた術(技)があり、そこに勇気と度胸があり、理にかなっている。


とにかく、アフリカの部族の戦いは凄まじいし、激しかった。


だから、「あぁ、もし私がこの部族に生まれたら大変だったな」と思うよ!!


旅に出る度に、世界には、まだまだ私達の知らない事がたくさんあり、色々考えさせられる・・・


合掌、
藤岡弘、


藤岡弘、オフィシャルサイト