何故、仮面ライダーは毎回ショッカーを倒すのに悲しい背中を見せて去っていくのか?


…皆さんは、そう疑問に思われたんじゃないかな。


これはね、「二度と人間に戻れない悲しみを背負って戦うヒーロー」というのがストーリーの根底にあったからなんだ。


誰にも語ることができない。助けを求めることもできない。


悲しきヒーロー。まさに孤独なヒーローだった。


痛み、苦しみを背負って孤独に耐え、全てを消化しながら戦わなければならなかった。


これが原点であり、私が仮面ライダーを演じる時のポイントだった。


私はいつもそれを念頭に置いて戦い、演じていた。だから暗く見えたのかもしれない。


子供達には衝撃だったかもしれないけど、だからこそ感動したのかな。


本郷猛が可哀想だったのは、恩人である科学者のお嬢さんからも誤解されていくところだね。


そういうわけで、今の若い人達は知らないと思うけど、仮面ライダーは暗いヒーローだった。


二度と俺のように悲しみを背負った改造人間は作らせないぞ、という気持ちをエネルギーにしていたんだ。


昔、「逃亡者」っていうアメリカの連続ドラマがあった。


ストーリーは、犯罪者に仕立て上げられて警察に追われ、様々な出会いの中で孤独な逃走を続けていくというものだったんだけど、仮面ライダーはそれとオーバーラップするね。


「逃亡者」の主人公は皆から同情されて、非常に人間愛のある素晴らしい人なのに殺人者扱いされて誤解される。誰も無実を立証してくれない。


ちょっと視点は違うかもしれないけど…同情されるというのかな、1号ライダーとの共通点がある。可哀想になってくる。


かっこよさ、強さに憧れるのに対して、同情しながらも「なんであんなに辛くて孤独なのに戦えるんだろう?」「凄いな」って思うのは、また違った感動があると思うんだ。


追いつめられて孤独にならざるを得ない孤高のヒーロー。


これが初期の仮面ライダーだった。


合掌、
藤岡弘、




ライダーヒーローメモリアル「仮面ライダー・本郷猛」(旧1号)藤岡弘、オフィシャルブログ「藤岡弘、の侍道」Powered by Ameba-raider