time/タイム | Holiday Life

Holiday Life

日々のささやかな出来事旅記録、映画感想など

21世紀末、人口増加を抑制するため人類は遺伝子操作により26歳以後は時間を買わなければ生き続けられない社会が舞台。金持ちは悠然と生き、貧しき者は奴隷の如く働き続けなければ若くして絶命する。時間格差社会で起こる出来事を描いた近未来アクション・サスペンス。


テーマはすごく良かったと思う。
思っていたよりもスピード感もあったし、「命」の貴重さを考えさせられる作品でした。
ハラハラ・ドキドキしたし、荒削りな感じも割と好き。
それだけに、もっと良くなったんじゃないかと思う。主人公ウィルとシルヴィアの裏背景を丁寧に描いていけば二人に対してもっと感情移入できたし、彼らの取った行動にもっと大きな意味が生まれたんじゃないかって気がする。
だけど、シルヴィアの「無茶」には目を見張るものがあって楽しかった。あそこまでくると清々しくてお嬢様の欠片もない。
タイムキーパーのレオンもいい味を出していた。なぜかとても憎み切れないし、憂いを帯びた表情が格好良くてつい目で追ってしまった。ウィルの父親との関係や出来事も知りたかったな。

残念なのは結末。映画だからってハッピーエンドばかりなのは好きじゃないし、綺麗事を並べたような作品を観ていると萎えてしまうけれど、時間を取り戻した人々がはたして幸せになったのかと問われたら答えはイエスと言いきれない。というのも、10時間を与えた親友が油断して結果死を手にしている。1日を生きるのに精いっぱいの生活を強いられてきた貧民層が急に10時間もの「大金」を手にしたらどうなるのか?

考えさせられた。結果、どうしたらこの物語が一番良い結末だったのかイメージすると、その結果はあまりに嘘っぱちなものになってしまった。色々と賛否両論がありそうな作品だけど、本当のハッピーエンドを期待しなかった作り手側は実は正しいのかもしれない。

お金が流通するのと同じ仕組みで、金持ちが命を延ばすたび、貧しいものが一人ずつ死んでいく。
私はこんな世界に心底生きたくない。毎日腕を見て死ぬのを少しずつ先延ばしにしながら生きていくなんて、生きた心地がしないだろう。