サンクタム 感想 | Holiday Life

Holiday Life

日々のささやかな出来事旅記録、映画感想など

この作品を観て、他の人から見たら
「なんでそんなもの?」
ということに夢と執念を抱いて命をかけている人間って、人より自分にも他人にも厳しくないといけないんだろうなと痛感しました。
危険と隣り合わせでも貫きたい信念があることは、誇らしいし、その先の成功はとてつもなく大きいんだと思うけど、普段私たちが「命」をかけるまでの場面に遭遇することなんてまぁないだろうし、そういう意味でもこの作品の存在意義って強いんじゃないかと思いました。体感っていうよりは第三者目線に近いけど、気を緩めたら生き抜けないっていう危機感ははんぱなく伝わってきて終始緊張がとけませんでした。

厳しい現実に向き合うには諦めない気持ちと覚悟が頼り。そして正義は思いやりの基に成り立つんだってこと。

観終わった後、指の力が抜けたような錯覚が世界観に入り込んでいたことを証明していました。

どんどん、困難に負け仲間が死んでいくのだけど、なぜか死んでしまった者を悲しく振り返る気は起こりませんでした。私には珍しいことです。
悪役ならまだしも、そうじゃない人が死を迎えてしまって涙が出ないなんてことはなかなかなかったからびっくりしました。
それは、死んだ者を気にかける暇があれば生きる術を考える方が大切だって、本能的に訴える力がある作品だったからかもしれません。

親子の絆も良かったです。厳格だけど自分の信念を全うし、常に固い覚悟を持ち続けていたフランクと、それまで反発していた息子が互いにかけがえのない存在だと認めていく過程は男らしく格好良かったです。
自然の持つ美しさと恐さを前に、人間はどこまでもドラマ的で、弱さと強さを併せ持つんだな、と思うと同時に、洞窟に魅せられた父親の気持ちに憧れと尊敬を抱きました。

作品としては派手さはないけれど、聖洞の神秘さを含め、ダイナミックで説得力があって良かったです。映像美だけでも観る価値のある素晴らしい作品でした。