https://www.amazon.co.jp/アステリズムに花束を-百合SFアンソロジー-ハヤカワ文庫JA-S‐Fマガジン編集部/dp/4150313830

 

2018年の『SFマガジン』での百合特集から抜粋し、他数編を加えた文庫本です(ざっくり説明)。2019年発行マジ~??読んでる途中で友人にあげちゃったので再購入、通読した感想です。

ゴリゴリにネタバレをします。

 

モンハンブログ??知らねぇ!!!!!!!!!

 

 

◆キミノスケープ 宮澤伊織

 

突然無人となった世界を旅する「あなた」は、人の痕跡を見つけてからその主の生活を想像して歩みを進める。

 

女が女を想う感情が百合なので、別に登場人物が一人でも構わないんですよね。

 

状況が一変する度にかなり「あなた」ちゃんが動揺していて、近しさが感じられました。

やはり絵画と出会うシーンが良くて、街路を駆ける少女が描かれているのも、一番無防備な睡眠を取るのも、絵具という実体を持ったメッセージなのも好きです。

 

引きも良いですね。旅の爽やかさがある。

 

◆四十九日恋文 森田季節

 

死者との49日に渡る文通。遅れる文字は49字から始まり、日々1文字減っていく。

 

死者と交流できるようになって死がただの行事になったと絵梨は言ったけれど、別れの準備を絵梨はかなり大切に使っているように見えました。私の逆説の文章が下手~。軽い軽いと言ってたけどアンタちゃんと重く捉えられてるじゃん!みたいな。

 

文字数の減少に伴う変化はもう本文を読んで頂きたいんですけど、軽口を叩ける関係の二人ならどこまで行ってもこうなるだろうな、という想像ができて、気分良くしんみりできました。良かった。

 

◆ピロウトーク 今井哲也

 

先輩の寝顔が欠落で、埋まった瞬間に消えやがってバカヤロー!!ってことですか???

 

先輩は島と合致したけど、主人公ちゃんが合致するのは先輩の寝顔、となると難儀ですなぁ。その欠落を埋める人生を歩み続けている主人公ちゃんは強い。

 

あとやっぱ絵がかわいいっす先生。

 

◆幽世知能 草野原々

 

これあらすじ説明するの難しいですね。女二人が神体に取り込まれて無限の理解を得る話です。読んでくれ。

 

断絶の無い状態は頻出する題材だけど、全く想像はできないですよね。全ての時間が同時に存在する、全ての空間が同空に存在する、的なやつです。

 

まあ「そうなりました」で読み手の私は満足しているのですが、一度でいいから何か経験してみたいですよね。多次元チェスとか時間を俯瞰している?ワープホール早く見つかりませんかね。アキナちゃんは拒んだけれど。

 

幽世の全理解を提示することで現し世の隔絶の虚しさが際立つのが良いですよね。反論を説明することで主張は強固になる。

 

ちゃんと現実の理論を噛んでるのもSFの良さがあって好きです。専門用語を調べて理解したかしてないか曖昧になる状態が好き。SF好きは全員これでしょ(暴論)。

 

再帰関数上でスナップショット取って求めてた出力を得る、ループを抜ける条件設定が難しそう。

 

◆彼岸花 伴名練

 

お、おもれぇ~~~~~~~~!!!!

 

異種族の日記越しの交流譚です。己が文才が終わってますね、あっさい紹介!

 

日記を読み進めて設定が徐々に明かされていくのが面白くて本当に引き込まれました。青子が素直な性格で何でもかんでも書いちゃうのが話を進める動力になっていて微笑ましい。は~~~~美しいな。

 

スール物だ!と尻尾を振って読み始めましたが、お互い欠けた姉妹を心に残しながら現行の姉妹関係を築くのは「姉妹」に意味を持たせようとする意志を感じて、反射で飛びついた自分を恥じるばかりです。

 

世界観も良いですよね。代血を動力とするブラッドパンク、SFすぎる。唸っちゃう。姫様が青子の顔色をかなり注意深く観察していたりね。てか青子ちゃんですからね、赤から酸素を欠いた、真朱様と対照の色。

 

姫様は年齢いくつくらいなんすかね。死妖と死妖の子って表現はありましたが別に人目を忍んで繁栄はできそうだし、でも全世界を征服するにはかなり時間がかかりそう。

 

◆月と怪物 南木義隆

 

戦後ソ連の超能力実験の被検体となった姉妹の話。

 

静かで良い。

これは齧った程度の話なんすけど、あの頃の「忠誠」ってのはまた本音と建前の両立というか、ダブルシンキングって程じゃないっすけど、二面性があるって話があって。

伍長はちゃんと使い分けられていたというか、セーラヤに絆されではいますが、そのタイプの当時人だったのは救いと言いますか、嬉しいなと感じる次第でございます。

 

私の反射の部分は「ケンカップルキターーーー!!」と興奮しとりましたが。

 

架空ソ連の戦後観を一市民の視点で描いているのは、経過時間による重厚な読後感が得られて満足度が高いです。

ソ連期の地下鉄はマジで綺麗だからみんなも見てみてね!

 

◆海の双翼 櫻木みわ、麦原遼

 

翼に反射する光でコミュニケーションを取る鳥人と邂逅する話。

 

折り合いのついた羨望って良いですよね。人間の言語体系も大きく進化している世界観で、主人公である主人の半身の従者が言語以上の共感覚を主人と共有しているが、主人はぽっと出の鳥人に惹かれて、みたいな。いや従者が主人公かもしれん。

 

時間シグナルの空間方向への変換、かなり欲しい機能ですよね。

文章(というか視覚情報)は文字同士の位置関係で時間(大きく言えばあくまで位置情報?)を取れるけど、それも約束事があってのだし、聴覚に至っては2時方向と4時方向の情報を聞き分けられる自信は私には無いです。

 

とはいえ、光情報となると視覚一辺倒になる上に、照射先の情報を読むならまだしも翼そのものを見る必要があるのは不便そう。まあ翼腕の感覚がどれほどか分からんので何ともですが。抱き合いコミュニケーション、幻想的で良い。

 

抱き合い交流前後は本当に痛ましいですが……。その前から痛い痛い言うてました。めちゃくちゃ不可逆に見えますけどね、せめて鱗晶を可塑的にしようとするのがね、ハッピーエンド要素の一つみたいなとこがありますからね。

 

ビジュアライズしてほしいけど想像に委ねるのも美しそうで、良かったです。

 

◆色のない緑 陸秋槎/稲村文吾訳

 

科学のブラックボックスを憂う百合……?私の要約が下手!

 

小説を脚色する職の話の小説というメタ構造だ~と読み始めたら飽くまで導入で、自然言語処理SFでした。

人工言語の生態系モデルはロマンがすごい。

SYNEの溶液を飲んで、苦し~~と思いながら最後で食らわせられた。

インフルエンザ、SFの未来予測の話だと思いながら読んでました。

 

箇条書きで羅列しましたが。

チョムスキー出てきた辺りで古傷が痛みだし、以降の話がちょっとね、私が逃げた範囲の話だったのでね、苦しさが出ましたね。言語学方面に触れるのはやめよう!参考文献は多分読みます。

 

百合方面で話しますと。

自殺した人間と残された共通の友人の百合。百合SF特有の退廃性が人間関係にも拡張しているというか。存在証明が軸にあって、それを確立できず自殺した人間と、諦念と共に生きている主人公の対比ですよね。

その装置としてのSYNEの緑。良いですねぇ。上手ですねぇ。

 

良かったです。うううう。

 

◆ツイスター・サイクロン・ランナウェイ 小川一水

 

ガス星雲で昏魚を獲るバディの話。

 

バディ百合って最高なんですよね。会話主体でかなり読み易かったです。

狭い社会の慣習をこれからぶっ壊していくぞ!という気概が感じられて良かったです。というもの今回収録されているのが連載の1話目?ということで、シリーズの文庫本は3冊くらい出ていたはず。

更には今年7月に漫画化されていて、あちらは読んでいたので想像しやすかったと言いますか、逆に固定されてしまったかもとも思いつつ……。

 

 

とサイトを見に行ったら更新されてるじゃないですかー!先に文を読んで漫画で答え合わせをする流れは人の脳内を見ているようで楽しいですね。

 

天才肌の網作りお姉さんと、叩き上げ幼操縦士(18にしちゃ更に幼いんで背景がありそうですが)の今後が楽しみです。何なら1巻は買っちゃった。

 

 

◆総括

初版は2019年でしたので、もう4年前の本となります。

果たして百合SFが現在のメインストリームになっているかと言うとそうでもなく、でも確かな存在感はあり、着実に支持者が増えているような感覚があります。

 

最近だと百合姫読み切りのこちらが良かったです。

これも1.5年以上前ですが……。

 

とりあえず買ってあるTCR1巻を読んでSF筋と長編筋を取り戻し、Kindleセールで買った三体を崩したいですね。

裏ピも途中までしか読んでない。読む本がたくさんあって幸せ!!!

 

それと、都度メモしながら読み進めるのは読書筋が衰えている身と相性が良かったのでまた書くと思います。

 

それでは。