殺人の追憶 なつかしくも骨太の刑事ドラマ
◆レンタルDVDにて視聴。冒頭のクレジットであまりの画質の悪さに,がっかりするも,物語が始まると,もうそれに飲み込まれ,画質の悪さはどこかへ飛んでいってしまった。 ◆なつかしい。田んぼ,稲穂,バッタ,田舎の子供たち,刑事部屋,黒電話。 昭和30年代の日本の姿と似ている。何か若かりし時の黒沢映画のようなエネルギーに満ちている。
◆3人の刑事の全速力での追跡シーン。ガンホの彼女(おそらく看護師)の優しさ。ラジオの曲の名推理を披露し,また自らおとり捜査を買って出る女警官も実にさわやかだ。部分部分がていねいに描き込まれる。
◆ソン・ガンホの名演はもちろん,相棒のケンカっ早い刑事もいい。彼は片足を切断することになり,ガンホも,刑事をやめて営業マンでネクタイを締めている。この連続暴行殺人事件が刑事たちの人生を変えていくのである。
◆もっとも変化が大きかったのが,ソウルからきた冷静な刑事。確信を持っていた容疑者が,DNA鑑定で犯人でないと分かり,精神の糸が切れたように,発砲までしてしまう。彼は,その後どうなったのであろうか?映画は何も語らない。ただ,犯人がいまだに生きて呼吸をしているということだけをエピローグで示して終わる。ずしんと重いものを心の中におとして終わる。人の人生が様々に変わろうとも,今日も稲穂は伸び,空は秋のさわやかな青空なのである。
◆この映画はそんな,なつかしくも骨太の刑事ドラマの中に人の世の空しさをずっしりと感じさせる逸品である。

タイトル: 殺人の追憶