真面目に、カメラマンの仕事というものを考えてみる。

『結婚式を撮ると言う仕事』

世の中に数ある仕事の中で、これほど大変な仕事はあまり無いのではないかと思えてくる。

 

 

結婚式を撮るのはかなり楽しい。

しかし、継続的に仕事としてするのは、かなり骨が折れる。 

 

これは僕の経験での話だが、結婚式スナップの平均的な所要時間は、メイクから撮影をスタートしてだいたい8時間くらい。

その間のトイレ休憩は無い。

 もちろん食事をする時間も無い。

ペットボトルとウィダーインゼリーが頼みの綱だ。

(冗談のようなホントの話...)

 

僕の場合はカメラマン完全指名なので、風邪をひいたり、体調を崩して休む事も許されない。 

飲み過ぎや食べ過ぎや緊張でお腹を壊す事も出来ない。

そもそもトイレに行く時間は無いのだ。

それがとめどなく毎週末ずっと続いて行く。 

子供の運動会や、土日の家族旅行も一緒に行くのは難しい。

 

撮影に限らず、結婚式を仕事にしている人に土日休みはない。 

朝の5時に起き、家族がまだ寝ているうちに家を出て、何時間も駆け回り、週末の子供とのデートも、たまにある同窓会も

土日休みの友達とのキャンプも無い。

結婚式を仕事にするとはそう言うことなのだ。

 

更にカメラマンだと、重いカメラを2台持ち、休憩も無く、トイレにも行けず、ただひたすらに良い写真を追い求める事になる。

1/30秒の表情を 1/500秒の瞬間を 窓からの逆光の中、ロウソクの灯りの中、常に探している。

緊張が8時間ずっと続く。

 

しかも、失敗は決して許されない。

 撮れませんでした、は通用しないのだ。

 

時間は巻き戻せない。 

600万円かけた結婚式が素晴らしいものになるか、忘れたいものになるかは、全て写真にかかっている。 

責任は重大だ。

 

重いカメラを何台も持ち、後ろに目を持ち、常にアンテナを張り、360度気を配り、瞬間を逃さず、

0.5秒で最適なシャッタースピードと露出を弾き出し、小粋なトークで新郎新婦を和ませる。 

それが8時間ずっと続く。

結婚式のスナップカメラマンとはそう言う仕事だ。

胃が痛くなる仕事だ。

ポッと出のアルバイトに勤まる仕事のはずがない。

 

おそらく、世界で最もハードで最も難しい仕事の一つに分類されるだろうと、個人的には思っている。

 

どの仕事でもそうだと思う。

己を高め仕事の質を上げようとすればするほど、道はより狭く、より急に、より険しくなっていく。

 

その難しさがたまらなく面白いのだ。

 

ある意味、結婚式のスナップカメラマンとは、そんな自虐を楽しむ人種にしか務まらない仕事なのかも知れない。

それでも結婚式の写真を仕事にしたい人に、僕はガンバレとは言わない。 

あまりにもイバラの道過ぎて、かける言葉が見つからない。笑

 

10年だ。

 

10年間、ただひたすらに上だけを見て精進したら、もしかしたらスタートラインに辿り着けるかもしれない。 

日々の積み重ねでしか結果は出せず、結局その成果も自己満足以外の何物でもない。 

そもそも結婚式の写真は一発勝負なので比べるものがない。 

撮ったものが全てだから、お客さんもそれで満足する以外ない。 

それに、これから結婚式を迎える二人は準備が忙しくて、カメラマンの腕の良し悪しの区別などそれほど気にするものではない。

結婚式の写真はいつだって後の祭りなのだ。

 

最終的には、カメラマンがどれだけストイックに上を目指せるか、 それしかないのだ。

思っているよりも、ずっと地味で、ずっとハードで、ずっと孤独な仕事だ。 

 

 

それでも

 

それでも

自分が撮った写真に自分が納得した瞬間

それを見た花嫁さんの目が輝いた瞬間

ありがとうの言葉をもらった瞬間

この仕事をしていて本当に良かったと思う。

 

そう、僕にとって、

結婚式を撮るのはやはり楽しいことなのだ。