第19話 「犬が苦手」の巻 | 僕とアインシュタインのヒーローズファクトリー

第19話 「犬が苦手」の巻

僕と藤原は彼らから少し離れたところにしゃがみ込んで砂いじりをしていた。
「藤原、お前行って助けてやれよ。」
「やだよ。腹筋がまだダメなんだ。」
「男の癖に、そんなこと気にするなよ。」
「だったら沢田が行ってこいよ。」
「俺はお前らとは無関係だよ。」
「ここまで一緒に来といて、何言ってるんだよ。」
 形勢はどんどん不利になっていた。柿本は倒れたままで、松井が必死でヒロコさんを守っているがもう限界のようだ。黒い犬の勢いは激しくて、とても一人で太刀打ちできそうにない。野良犬の力は思ったよりすごい。
 野口は周囲などお構いなしでボールを犬に拾わせている。いつのまにか犬を「ジョー冶(ジョージ)」と呼んでいる。

 見るに見かねた藤原がついに立ち上がった。
「俺は行くぞ。お前も、いろいろあるだろうけど、少しでも人の心があるなら助けてやれ。多分俺一人が行ったところでどうにもならないだろうから。」
「お前が行けば大丈夫だよ。」
「なあ、沢田。お前のすごいところは、どんな状況にあっても絶対にプライドを捨てないところだ。でもな、いざという時にそのプライドを捨てることができる男こそ、本当に強い奴だと、俺は思うんだよ。」
「何が言いたいんだ?」
「お前から見れば、確かに俺たちは馬鹿かも知れない。だが、よく見てみろ。俺たちだって、プライドの一つも持ってるさ。」
「だから、何が言いたいんだよ。」

「俺な、犬が大の苦手なんだ。」

そう言い残して藤原は戦地へと向かっていった。