第18話 「犬と戦う」の巻
僕たちは空き地に到着した。雨はまだ降っていない。なぜか一般庶民の誰にも目撃されなかった。でもやっぱり恥ずかしい。これが普通の感覚だ。それなのに柿本、松井、野口は堂々としている。その堂々とした態度が男らしいか、ワイルドかと考えると、決してそうではないのだ。
僕はその三人の後ろに隠れるようにしていた。ふと隣を見ると、僕と同じように隠れている男がいた。
「藤原お前、何で隠れてるんだよ」
「だから、タイツは苦手だって言っただろ。俺の腹筋の形、まだ今ひとつなんだ。これじゃあ人に見せられない。恥ずかしいだろ」
「ボディービルダーかよ」
「目指すところは通じるものがあるんだ」
僕と藤原がこそこそ喋っているうちに、三人は犬に向かって走り出していた。
その戦いは何とも見苦しいものだった。
まず柿本が黒い犬に飛びかかる。砂埃をかぶりながらそれなりに奮闘する。
野口は空き地の隅で斑点のあるデブ犬に餌をあげている。
その隙に松井がヒロコさんを安全な場所へ連れて行こうとするが、それを見た柿本がひどく妬いて文句を言う。
すかさず柿本は背後から黒い犬に体当たりされて倒れる。
そして黒い犬は再びヒロコさんに向かっていく。
斑点のデブ犬は実に可愛いやつで、簡単に野口になついてしまった。野口は面白くなって、芸を仕込み始めた。もう、。そんな野口を誰も止められない。
何という悪循環だ。どうしようもない。
しかし僕は黙って見ているしかなかった。手を貸してしまったら、それこそ僕の最期、この集団に属していることを認めることになる。僕は「こんな連中とは決別し、あの工場から逃げてやる」という夢をまだ諦めていなかった。
僕と藤原は彼らから少し離れたところにしゃがみ込んで砂をいじっていた。