第16話 「ヒーローらしい立ち姿」の巻
衣裳部屋の奥に小さな扉があって、そこが指令本部へつながる廊下への入り口になる。
全身タイツに着替えた僕たちがその細い廊下をさらに進むと、ついに鉄でできた重い扉が現れた。
「さあ、ここは力が要るぞ。」
藤原と野口が重い扉を二人掛かりで引く。いよいよという時になって、僕は柿本を思い出した。
「おい!柿本がいないじゃないか!」
皆の動きが一瞬止まった、と思ったが、藤原と野口は何も変わった様子無く再び扉を動かし始めた。
「沢田も松井も手伝ってくれ。前より重くなってるよ」
松井が慌てて扉にしがみついた。
「馬鹿!それじゃだめなんだよ!この扉はデリケートなんだからな。ほんの少し持ち上げるつもりで横にスライドするんだ!そうしなきゃいつまでも開かないんだよ!」
「すいません!」
ほほう。扉ひとつ開けるのにもテクニックがあるんだなあ・・・って、僕はそんなことを知りたかったわけじゃない。
「待てよ!だから柿本は・・・」
「よし!せええのっ!」
ごごごごうっと低い音がして、重い扉がゆっくりと開く。そりゃもうまるで映画のように、隙間から眩しい光が溢れてきた。
そしてその光の中に、明日の方角を見据える一人の男の影があった。浮き上がる細いシルエット。男は腰に手を当てて、足はちょうど肩幅くらいに開いていた。そのなんとも美しい立ち姿!
まさに・・・ヒーローだった。これが、これこそがヒーロー・・・。
男はゆっくりと僕たちのほうを振り返る。釘付けになっていた僕たちはごくりと唾を飲み込んだ。かすかになびく髪。さわやかさ抜群じゃないか・・・!そしてこちらにやさしく微笑みかける男らしい顔・・・。
・・・・?
「お前っ!柿本かっ!」