第11話 「バイトをする」の巻 | 僕とアインシュタインのヒーローズファクトリー

第11話 「バイトをする」の巻

 八時十五分、僕は新しい仕事先に連れていかれた。送り迎えは山田の車、魚屋の親父はアインシュタインの古い友人で、監視の目はとても厳しく、逃げ出すのはかなり難しそうだった。
「逃げようなんて思うなよ、にいちゃん。自慢じゃないけどな、おいらは空手五段だ。にいちゃんの、そのがっちりした腕の一本や二本、軽くポキポキっとやるからな。お前さんはここでしっかり稼いで、立派なヒーローになるんだ。」
親父がそう言ってにやっと笑った。悔しかった。


 一週間ほど、僕はおとなしく働いた。いつの日か必ずこの地獄から逃げ出してみせると心に誓い、まずは細かい調査で情報を集め、それから脱出計画を練ろうと思ってのことだ。しかし脱出に役立つような新情報は全く得られず、魚の名前には無駄に詳しくなった。
 藤原は工事現場で、野口と柿本は進学塾の講師として、そして松井はベトナム料理店で働いた。


 その日は土曜日だった。午前中に仕事が終わったのだが、春の陽射しがあまりに優しくて、僕は夢心地になった。そして「蝶…そうよ私はアゲハ蝶…」などと錯覚を起こし、ふらっと川原のほうへ一歩踏み出したところ、僕はすかさず魚屋の親父に投げ飛ばされ、迎えに来た山田の車にそのまま放り込まれて、気付いたときには会議室の椅子に座っていた。


第二回作戦会議」と書かれた横断幕が目の前に掲げられていた。