第一話 「沢田ゲンジというひと」の巻
僕は何をしても完璧な人間だ。
上には上がいるとは言え、学力においても、スポーツにおいても、僕の能力は世界に十分通用する。
高校卒業までの十八年間、ほとんどの試験で偏差値八十以上をとった。国際的イベントである数学計算大会にも参加し、優勝はできなかったものの、かなり良い成績を残した。百人一首大会で全国二位を取ったことだってある。高校生の時には学校の代表としてクイズ選手権に出場し、もちろん優勝した。それに僕は、バスケット、野球、サッカー、ラグビーなど、数多くの無名のチームを先導し、育て上げて日本一にした。特にラグビーは、この僕のダイナミックかつ繊細な身のこなしでどんなタックルも軽くかわし、一試合で四十五回もトライを決めたことだってある。
僕の魅力は頭の良さ、運動神経の良さだけにとどまらない。実は、ルックスも最高なのだ。
ラガーマンとして培ったたくましい肉体。ナチュラルに程良くついた筋肉が文句なしに素敵だ。腹筋は六つに割れているが、いやな印象は与えない。マッスルボディが嫌いという人にも、しつこさのない僕の肉体は非常に人気が高い。
さらに、極めつけは男らしさにあふれ、目、鼻、口、全ての形や配置が見事に整った顔である。僕の流し目で一度に三十人くらいの女性が失神するだろう。僕ににらまれたら、どんな男も小便をもらすだろう。
僕を形容するなら、当てはまる言葉は腐るほどあるが、一番しっくりくるのは「ワイルド」だ。「ワイルド」という響きはまったく素晴らしい。いや、そうじゃない。「ワイルド」という言葉が僕を形容したとき、初めてそれは素晴らしい響きとなりうるのだ。
そしてワイルドと言えば一匹狼だ。もちろん僕は皆に好かれたが、誰ともあまり関わらず無口でいることにしていた。実際、一匹狼でいる無口の僕は素敵だったし、人に気を使わなくても良かったのでなかなか楽だった。一匹狼は癖になる。
こんな僕の素敵さが、不幸の始まりだった・・・。