ブィーン……
ガタガタっ……
スズー………
『…(涼しい…)……』
最近の朝は暑い。
東京は蒸し暑い。梅雨は余計に……
朝6時。
エアコンをつける。
『…(二度寝しよう
)……。』爆睡中のおっかぁ。
布団をかけてやる。冷えるから。
温度調節が出来ないエアコン。
暖房か冷房……しか出来ない。
昔はできたんす。
ただ、リモコンが壊れちゃって(笑)
『…(古いエアコンだからな…)……』
市販されてるマルチリモコンじゃ、合わない型番(笑)
手動で動かしているエアコン。
『……(かれこれ、10数年前だからな…)……』
パチンコ屋で働いていた時代。
お店の二軒となりくらいに電気屋さんがあった。
夫婦で切り盛りしている、小さな……町の電気屋さん。
それでも……
『どーも。あの、店の入り口の水銀灯が切れちゃって……』
『はいよ
。確か……これだったよね
』『そうそう
これっす
ありがとうございます
付けでお願いしますね(笑)』『(笑)はいはい

。お茶でも飲んで行ったら?』『いや、勤務中なんで

いただきますヽ(´▽`)/(笑)』楽しい〈おっちゃん〉と、いつも笑顔の〈奥さん〉。
パチンコ屋の特殊な電球や、でかい蛍光灯まで揃えてくれていた。
とても仲のいい……と言うより、〈あ、うんの呼吸〉を実在させた感じの夫婦。
小さな町でも、大きな家電量販店ができた。
『影響?…まぁ、あるよね(笑)。でも、うちは常連さんが多いからね。なんとかね(笑)』
我がパチンコ屋も、いつもお世話になりっぱなし。
時計の電池やら、蛍光灯、あの頃は、ビデオテープなんかも。
『実は、エアコンが欲しいんすよ……』
『おう

付けてあげるよ
いつがいい?』配達も、工事も、おっちゃんが1人でやってくれる。
奥さんは、店を見ながら。
『何時くらいがいいの?』
『何時でもいいよ(笑)。時間、不規則なんだろ?(笑)』
『あざぁーすヽ(´▽`)/』
そんなある日……
『あのさ、電気屋の奥さん、亡くなったらしいよ……』
おっかぁ。
『マジで?(◎-◎;)』
『うん。聞いた話だけど……』
『確かに、シャッターが閉まってるね……』
身体が弱い……とは聞いていたが、まだまだ若く、いつも元気で笑顔の奥さん。
『おっちゃん、へこんでるんじゃ……』
案の定だった。
数日後、見かけた姿は……
下を向き、笑顔をなくし……
それでも、汗をかきながら仕事を進める〈おっちゃん〉がいた。
声をかけれなかった……
『あのぉ……』
『おう

どうしたの?』笑顔を見せてくれた〈おっちゃん〉。
『蛍光灯が切れちゃって……』
『あぁ……倉庫だ……。ちと取ってくるから、店、みてて
』『(◎-◎;)はいっ

』(いつもなら、奥さんが……お茶飲む?って……)
寂しくなった。
そんな頃、俺はパチンコ屋を辞めて、今の仕事を始めた。
おっかぁも、ヘルパーの仕事の傍ら、商店街でバイトを始めた。
そんな頃……
『あのさ、電気屋のおっちゃん、亡くなったって……( -_-)』
『(◎-◎;)は?マジで?。まだ、そんな年じゃ……』
『パチ屋の頃のお客さんの話だけど……さ……。』
理不尽だ。
神様って、いい人ばかり早く連れていく。
〈つがいの鳥は、どちらか片方が亡くなると、もう片方も、後を追うように……〉
本当に、そうなってしまった。
『もったいない人をなくしたよね……』
『うん……』
数日後、久しぶりに見たあの町の景色に、電気屋さんのシャッターは閉まったまま……
そして、なくなった。
ピッ……
ブィーン……
ガタガタ……
スズー………
『…(涼しい……)……』
今日も、手動でエアコンをつける。
あの日と変わらない、涼しい風。
あの日からずっと、故障すらない。
10数年。
おっちゃん、いい仕事だよ。
『そろそろ、買い替えかな……』
『そうだな……』
『……』
『……』
不便だとか、電気代がかかる……とか、わかってる。
だけど、買い替える気のない俺たち。
なんか……
外せない。
あの丁寧で、しっかりした仕事をした〈おっちゃん〉の作品。
天国でも、仲良く笑ってるかな……
おっちゃんなら、天国までオール電化にしそうだな。
よく、『仲がいいね

』とか言われる俺達。でも……
電気屋さん夫婦には、到底、かなわない……
そんな、エアコンの物語。
『明日も、暑くなるみたいだね

』エアコンがあるから、心配してないっす。
ありがとう。
おっちゃん。